第88話 なりきり日和
会議室 『姫乃』
姫乃達は、会議室を借りて、勉強していた。
やっているのは数学。
ちょっと前は、理科も学んでいた。
元の世界に帰った時の為にちょくちょく雪菜から授業を受けているのだ。
こんな世界でも、いやこんな世界にいるからこそ、元の世界に戻った時の事を考えるのも大事な事なのだろう。
そういうわけで、今日も何度目かの授業を受けていたのだが……。
数式について説明していた先生が、キリの良いところで唐突に声をはりあげた。
「というわけで、今日はなりきり日和よっ!」
脈絡がない。
それに対する生徒達の反応はそれぞれだ。
姫乃は「えっと?」
啓区は「わー」
未利は「はぁ?」
なあは「ふぇ?」
という感じで、雪菜へ視線を向けている。
次の言葉を最初に口を開いたのは未利。
「またなんかこの先生がへんな事言い出した」
その言葉をひきとるのは啓区だ。阿吽の呼吸だった。
「雪菜先生だしねー。ずっと真面目なことしてると、そろそろ何かするかなーって気がしてくるしー」
状況が分からないなりにわくわくしてるのは、安定のなあ。
「よく分からないけど、なんだかとっても楽しい事になりそうな気がするの」
皆、元から順応性が高いのだろう。
未だに戸惑う事がある姫乃を置いて、雪菜先生がどこからか用意したらしい箱に視線を注いでいる。
「はいはいちゅうもーく。この箱の中にクジが入ってるから、皆一つずつ引いていってね。クジにかかれてるのはキャラの説明。引いた人はそのキャラになりきるように」
ようするに、架空のキャラクターを演じるという事だろうか。
お芝居の様なものだろう。
でも、一体なぜこのタイミングで?
そう疑問に思えば、姫乃のその思考の流れを読んでいたかのように雪菜が説明。
「自分が何に向いていて、何ができないか。知る事は大切でしょ? これから貴方達は、何を選ぶにしても大変な道を進んで行かなくちゃいけないんだから。自分の可能性ってものを把握しておかなくちゃいけないわ」
突拍子ないように見えて、意外とまともだった。
やはり教師なのだ。
ちゃんと姫乃達の事を考えてくれているらしい。
「というわけで、じゃーん! なりきり日和ー。今日一日、クジで引いたキャラで過ごしてね!」




