第118話 イブ・フランカとアイナ・ティネレットの関係
??? 『イブ』
氷裏と手を組む時は、必要以上に話をしない事にしている。
氷裏は一時的な利用相手であって、心を許しているわけではないから。
それに、イブは氷裏の事を好きではない。
誰か一人に必要以上に執着するその姿勢とか、目的のためには手段を選ばず、どれだけの犠牲ができても気にしないころなどとか。
だから、イブが話をする相手はごくごく限られていた。
「で、なんでそんな話を聞かなければならないのかしら?」
「そう言わずに、暇なら少しつきあってよ」
「別にいいけど。あんた、めんど臭い人間だわね」
話しかけるあいては金髪の少女、エイミィだ。
色々あって、瀕死の傷を負っていた彼女を助けてから、ちょくちょく話をしている。
「それでね、ソウルったらいっつもリクの言う事きかないで暴走するの。お仕事の時とか、他の誰かが怪我してても真っ先にラグナの方に行っちゃうし」
しかし機会をとってまでイブがするのは、他愛のない話ばかり。
それは重要な話でもなんでもない。
そんな話に耳を傾けるエイミィは口を挟まない。
どうでもよさげな様子のエイミィが、本当に話を聞いているのかはイブには分からない。が、それでも彼女はかまわなかった。
「そんな時、アイナが注意するんだけど、聞く耳もたないんだから」
「それは、過去のあんたでしょうに。いつも、他人事みたいに言うのね」
「あ、聞いてたんだ?」
「別の人間の話ってわけじゃないんでしょう? 主観的な話が多すぎる」
「そうだね。アイナと私は別の人間ではないよね。でも同じ人間っていわれると、それもちょっと違うっていうか……」
「あんたの話はややこしくて、めんどうだわねいつも」
「あはは、ごめんね」
うーん、と一つ間を置いたアイナは説明すべき内容をまとめてから口を開いた。
「アイナは私が作った魔法、というか人格なの。私という体の中に二つの人格が入ってる感じ、かな? 分かる?」
「心が二つある状態って事さね?」
「そうそう。それが一番近いかな」
「だから、私であるけど私じゃないっていうか。別人だけど、元になってる人格は一応私ではあるし……」
だから中途半端に他人事だけれど、自分の様に語ってしまうのだ。
リクやソウルと接した人格はアイナの方が多いだろう。
しかしその時間を、イブは同じように見て、聞いていた。
アイナではなく、イブが接した事もある。
だからあの時代の事を語るときは他人事でも自分事でもなく中途半端な感じになってしまうのだ。
「なんでそんな面倒な状態、自分から作るんだか」
「なんでって、そっちの方が便利だったから、かな」
あの時代には勘のいい人間が何人かいたから、下手に勘繰られると終止刻の事とか色々な事でやりにくくなってしまう。
それに。
「他に色々やる事とか考える事とかあったし、それに……私じゃ普通の女の子みたいにはできないから」
「……」
普通の人間達の中で生活していく必要があるけれど、普通の人間とは生きている時の長さが違う。
だからどうしても、浮いてしまうのだ。
そういった存在は無用な騒動を引き付けてしまう。
それらを防止するために、アイナ・ティネレットの存在が必要だったのだ。