第94話 なりきり日和07(なあ)
なりきり日和中の姫乃達は、紆余曲折あって、一つの部屋に合流していた。
女性兵士であるメリルが荷物の運搬で困っていたため、手伝う事になったのだ。
メリル「姫乃様達って変わってますよねー。お客さんなのに、こんな事しててー。子供だからとか?」
未利「歯に衣きせなさすぎ(ボソッ)」
姫乃「えっと、何もしないでいるのが落ち着かないから、かな」
啓区「あはは、姫ちゃんは、困った人がいたらつい飛んでちゃうんだよねー。ルミナリアがカエルみたいだっていった通りにー」
姫乃「カエルはちょっとひどいと思うな」
啓区「大丈夫だよー。姫ちゃんなら、きっと可愛いカエルだと思うからー」
未利「あたまにリボンとかつけてそうですね」
姫乃「か、可愛いのかな。それって……」
メリル「カエルは可愛いですよー。ボク、兵士になる前は家で飼育してましたし。トゲサソリも意外と愛嬌ありますしね」
姫乃「昆虫が好きなんですか?」
メリル「まあ、ちょくちょくですね」
話しながらも着々とメリルの作業を手伝う姫乃達。
そこになあが通りかかった。
部屋の扉を開けたなあが、姫乃達を見つける。
なあは、男性兵士であるディークと一緒にいた。
なあ「ふぇ? 姫ちゃま達の声がしてきたの?」
姫乃「あ、なあちゃん」
ディークは小脇に豚のような生物を抱えている。
なあの魔法の練習で動物を呼び出す事があるが、たまに個性的な個体が出てくるため、手伝いをしている兵士はその世話で大変になるようだった。
ディーク「はぁ、やっと捕まえた、他の奴はおとなしいのに。なんでこいつだけ逃げるんだよ」
なあ「お腹ぐーってなってたの。きっとご飯たべたかったんだと思うの」
豚のような生き物は、なあちゃんが行使した魔法によって空間のゆがみの中へ入っていく。
元の場所に戻ったのだ。
ディーク「ご飯ってまじかよ。なあさまそれ本当か。よく気持ちが分かるよな」
なあ「なあはみんなの考えてる事よくわかるの。それがなあのこせーだって言われたの」
ディーク「へー。すごいんだな。でもババ抜きは下手だったよな」
なあ「ぴゃ、なあは考えてる事が顔にでちゃうの。しょんぼりさんなの。なあおねーさんにならなくちゃいけないのに、ぜんぜんできてないの。難しいの。おねえさんだから、だわぁって語尾につけるの忘れちゃうの、だわぁなの」
ディーク「だわぁ? その例えはよく分かんないけど、そのままでもなあ様はしっかりしてると思うぜ」
メリル「そうそう、なあ様はそのままの方が良いと思いますよ、素材の味が活きてるって感じで、可愛いですし!」
啓区「そうだよねー。部活の成績よりなあちゃんの性格の方が大切で尊いー、みたいなー?」
姫乃「私……じゃなくてボクもうまくできてないし、無理して自分をとりつくろう必要はないんじゃないかな。頑張る事は大事だけど、向き不向きってあると思うし」
未利「そうですね。無理はよくありません」
啓区「うん、未利はおまいう、だけどねー」
メリル「じゃあ、お片付けも終わった事ですし、休憩時間にカードゲームでもします? カリバンが気を利かせてカードを持ってくるので」
ディーク「俺が!? 兄貴にはそんな頼みしないのに……」
メリル「何でもできるハイネルさんとカリバンじゃ、格が違うんだよぉーこれだからバカリバンは気が利かないなぁ。ほら、行った行った」
ディーク「えー」
姫乃「何かいいよね、こういうの」
啓区「遠慮のない間柄って感じだねー」
未利「仲いいんですよね」
なあ「ぴゃ、皆にこにこしてるのが一番なの」
メリル「にこにこしてませんよ!」
ディーク「にこにこはしてないぜ!」