第93話 なりきり日和06(啓区)
啓区「さてとー、部活に参加する以上てきとーに頑張らないと、未利あたりにどつかれかねないからなー」
俺、を引きあてた啓区は、部活の勝敗条件をクリアするために頭をひねってみる。
一体何を基準に勝敗を決めるのか、そもそも決められるものなのかわからないが、とりあえず置いておく。
啓区「俺って、俺様かなーやっぱり。定番なので言うとー。俺についてこいよ、キリッとかー? わー、ぜんぜんにあわなーい」
自分で言っていていあれだが、ものすごくミスマッチ感が半端ない。
啓区「ウーガナがたまに自分の事、俺様って言ってるから、あんな感じとかー? あん、俺様に何の用だよ。とかー。うーん、これもなんだか違和感があるなー」
それからもあれこれ考えてみるが、どうもぎこちなさがぬぐえない。
そんな思考を繰り返して気付くのは、とある事実。
啓区「あれ? 思った以上に、勇気啓区できてるー?」
人生年齢低めである自分だが、考えている以上に自意識というかアイデンティティみたいなものがはっきりできているらしかった。
啓区「もっと、ふわんふわんであやふやなもんだと思ってたけどねー。これはびっくりー」
意外な新事実をさっそく発見という事で、部活の有意義性が証明されてしまった。
ちゃらんぽらんなようで、我等が担任は意外と必要な事が分かっているらしい。
啓区「でもじゃあどうしよっかなー。自信満々キャラとか僕には無理だしねー」
ディーク「お、何してるんだ啓区様。って、部活してるんですか」
そこに話しかけてきたのは、最近なあの特訓につきあっている兵士の一人だ。
眼帯をしてるのがトレードマーク。
ディークは、啓区の背中に貼られた、黒地に白抜き文字の部活中ステッカー(啓区仕様)を見て、納得している。
啓区「まあ、色々あってねー」
意外な事実発見は良いが、このままだと部活の戦いが始まる前から負けが確定してしまうので、困ったところだ。
だから、少しでもヒントを得るために、部活の内容を説明。
ディーク「ふーん、なるほどな。という事は、新しい自分を見つければいいわけなんですね」
啓区「そゆことー」
腕を組んで天井を見つめながらうーんとうなるディークは何か思いついたようだ。
ディーク「その俺様キャラっていうのかどうか分からないけど。兄貴がたまにそういう性格してるなって思う時がありますよ」
啓区「へー、どんなの?」
ディーク「俺様って、自分がやるやるって感じのキャラなんだよな。小さい頃の兄貴がそんな感じでした。いっつもしたり顔で説明してきたり、俺の手を引いて前歩いたりして」
兄弟あるあるエピソードの典型のようだ。
ディークの解釈では、俺様キャラはそうなるらしい。
ディーク「弟よ、困ったときは兄を頼っても良いのだぞ……なんていう感じの時は、すごくうぜーってなりますよ」
啓区「あはは、それだけ大事にされてるんだよー」
ディーク「それはもちろん分かってますけど」
啓区「とりあえず、参考になったよー。ありがとねー、ディークさん」
ディーク「お役に立てて良かったです」
通りかかった彼にお礼を言って、その場を離れる。
啓区「まあ、ちょっと思ったのとは違ったけど、頼れる人キャラならなんとか演じられそうかなー。うーん……僕がやるから任せて、みたいなー。あれー? やってる事今までとそんな変わんなくないー?」
基本啓区は、姫乃達に余計な心配や苦労をかけたくない人をやっているので、だいたいいつもそんな感じだと思う。
見えかけていたものがまた見えなくなった瞬間だった。
首をひねっていると、なんだか見慣れない集団が通り過ぎていった。
エアロ「はぁ……。なんでこんな事に」
ムラネコ「みー。みゃっ? みゃうみゃう」
エアロ「慰めてくれるんですか?ありがとうございます」
メリル「ほらほら、次はこっちね。まだ仕事残ってるんだから!」
未利「あ、あの。ちょっとこの仕事はまだ私には早すぎるような。というか、アタシは別に新人兵士じゃ……。」
姫乃「えっと、ボクはこっちを手伝えばいいのかな?」
メリル「姫乃様はもっと軽いお仕事でいいですよー。というか、えっ? なんで参加してるの?」
姫乃「あ、ごめんなさい」
騒がしい一団が通り過ぎて行ったのをみて、苦笑。
啓区「姫ちゃん達、一体何をしてるんだろうねー」