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若き赤狼は黙り込む4

何をいったい企んでるんだ。

他の一族を批判するのは礼儀に反するとはいえ。

得体のしれない一族だな。


おじい様の部屋の書斎の大きな机の前に集まった。

おじい様が座る木の大きな椅子には赤狼のシンボルマークの背当てカバーが掛かっている。


「蛇族の蛇王ジャセル殿からの今回の件の話し合いをしたいから屋敷に来てほしいと言う書状のようだ。」

開封して読んだ手紙を机に置いてお祖父様が言った。


それはいったいどういうわけだ?

ミノン嬢がここにいることをなぜしっている?


「蛇族の王都の屋敷にですか?」

ケインティス叔父様がお祖父様の方を机の向こうからみて聞いた。

「そうかいてある読んでみるがいい。」

お祖父様が腕を組んで手紙視線を向けていった。

ケインティス叔父様はその手紙を持って読みはじめた。

「カルティス指名ではありませんか。」

ケインティス叔父様が手紙を机におかず持ったまま言った。

「もともとカルティスにまかすつもりだったが裏があるか?」

お祖父様が鋭い眼差しで言った。

「ミノン嬢が逃がされたことも計略かも知れません。」

ケインティス叔父様が私を見つめた。

「カルティスお前はどうする?」

お祖父様も鋭い眼差しで私を見た。

「行きます。」

私はお祖父様を見つめ返して言った。


それが私の使命なら行くしかない。


「そうかいってこい。」

お祖父様が静かに言った。

「父上様。」

ケインティス叔父様がとがめるように言った。

「ケインティス、カルティスは次代若長だ、このくらい片付けられなくてどうする?」

お祖父様がそう言って返信用の書状をしたため始めた。

「アンリ君もついていってくれるね。」

ケインティス叔父様がアンリを見つめて言った。

「もちろんです。」

アンリが緊張気味に言った。

いつも迷惑かけて申し訳ないがぜひ来てもらいたい。

蛇族の屋敷に行くと思うだけで寒気がするのはなぜだ?

「まあ、一人で来いとはいわれてないからアンリも訪問するむねを伝えておこう。」

おじい様が顔をあげて言った。


蛇族の王はいったい私になにを話たいのだろう。

考えるだけで寒気がとまらない。


「ジェーアスこの書状を蛇族の屋敷に届けるように手配せよ。」

おじい様が扉の方を見て言った。

「かしこまりました。」

ジェーアスが扉を開けて入ってきて書状を一礼して受け取り出て行った。


おじい様はやはりすごいなジェーアスの気配を扉越しに感じるとは…。


「お食事の準備をしてもよろしいですか?」

すぐにもどってジェーアスが声をかけた。

「ああ、頼む。」

おじい様が言った。


ジェーアスがワゴンを押して入ってきた。

汁ものの暖かい香りと炊き立てご飯のおにぎりの香りがした。

食べやすいものと言う注文を厨房に伝えたらしい。

青菜の漬物とふわふわの卵焼きが白いご飯のおにぎりに添えられてる。

汁は具だくさんのけんちん汁みたいな醤油仕立ての汁のようだ。


「美味しそうだな。」

アンリのしっぽがぶんぶん回った。

「ではいただくとしようか。」

おじい様がそういって書斎からテーブルセットの方に行ったのでみんな続いた。


美味しそうだけど…本当は不安だよ。

ちゃんと他の一族のところにいって話し合い出来るのかな?


王都蛇族の屋敷は石造りの円形の平屋だった。

綺麗な女神みたいな女性に蛇がからまる石像や八匹の蛇がからまってリース状になってまんなかに蛇族の男女の尻尾がからまる蛇族のシンボルマークが壁面に彫刻された優美な建物だった。

窓が極端に少ないのだが?


「ようこそいらっしゃいました。」

卵色の蛇体を持つ穏やかそうな男が出てきた。


この間の側近がわざわざお出迎え?

なんかそらおそろしいな。


その側近に導かれて屋敷の中に入ると廊下がすでに傾斜になっている廊下はカーブが続き先が見えない。

らせん状に地下の方へつながってるらしい。

廊下の壁面には男女とりまぜて蛇や蛇族に絡みつかれたりどこか廃退的な雰囲気の彫刻で飾られている。

調度品の花瓶ですら蛇にからまれてどこかうっとりしたトラ族の少年の彫刻で紫の薔薇が飾られていた。


一番奥らしい部屋に蛇王ジャセル殿がつまらなそうに寝椅子によりかかるように座っていた。

「お招きいただきありがとうございます。」

赤狼の礼をして言った。

この発言くらいなら多少長くても問題はないよね。

礼儀は大切だし。

「よくおいでになりましたね。」

ジャセル殿が満面の笑みをして言った。

満面のその笑みを見たとたんまた寒気がした。

「セジャテ、腹心殿をおもてなししてください、私は若長殿と大事な話がありますので。」

柔らかい口調でジャセル殿は命じた。

「お心のままに、腹心殿こちらへ。」

セジャテ殿がアンリを部屋から出そうとした。

「オレはカル…次代若長から離れるわけにいきません。」

アンリが言ってくれた。

「ミノン・シスーア嬢の件で来たのでしょうあなたの出る幕はありません。」

ジャセル殿が不気味な眼差しで言った。


つまり一対一でないと交渉もできないわけか。

この寒気は多分風邪だ…そういう事にしておこう。

そうでなければ次代若長としての役目がはたせない。


「大丈夫だ。」

私はアンリを見つめてうなづいた。

「…わかった、オレがいる事を忘れるんじゃねぇぞ。」

アンリが小声で言ってセジャテ殿について部屋の外に出た。


「さて赤狼の次代若長殿こちらへ。」

ジャセル殿がなぜか寝椅子の空いてる所を示した。

寒気がするのに隣などいけない。

「ここでけっこうです。」

私はジャセル殿の前にたったまま言った。

「たったままだと威圧されているようです敵対行動とみなしますここに座りなさい。」

ジャセル殿が何処か迫力のある目で言った。

「わかりました。」

仕方なく座るとジャセル殿が蛇体を私の足に絡ませて起き上がった。


これは蛇族の礼義なのか?


「やっと戻って来たね。」

ジャセル殿の顔が目の前にきて言った。


どうしよう寒気が止まらない。

戻って来たってこの間あったばかりだよね。

ミノン嬢と勘違いされるような体型じゃないし。

ああ、振るえがばれてしまう。

次代若長として頑張らなきゃいけないのに。

今世の幸せを守る為に。

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