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モテモテ無自覚者観察中1

カルティスなんてうらやましいんだ。

アンジーさんもオリンちゃんもラスちゃんもうちの妹どもはいいとして…。

この無自覚モテ男め!


「なんだ?」

オレの未来の主人が後を振りむいた。


さっきから水路の状態を見ている。

今日も若長ゆずりの赤い短い髪と狼耳の長身で精悍な次代若長ぶりをはっきしている。


「いや、で土砂の具合はどうなんだ?」

岩山から流れ出る清水から引いている水路は秋口になるとやはり上流からの土砂がたまる。

その撤去をいつやるか見極めるのが今日の仕事だ。


「まだ大丈夫だ。」

いつも通り短い返事でカルティスが答えた。

そう言いながら服を脱ぎ始めた。

細い身体に適度に筋肉がついているのがわかる。


「何をするつもりだ?」

上半身裸になったカルティスに聞いた。

「もぐってみる。」

カルティスはそういって水路に飛び込んだ。


げ、さむそうだぜ。

岩山の石で作った水路にカルティスの赤い髪がちらちら見える。


「カルティスさん寒くないのかしら?」

通りかかった雑貨屋の看板娘のラスちゃんが手を口元によせて言った。


小柄な赤みの薄い赤狼のラスちゃんは同年代のやろうどものアイドルで文句なしに可愛い。


「さあ、不感症なんじゃねぇの?」

オレは軽く言った。

「アンリさんのえっち。」

ラスちゃんが赤くなった。


今のどこがえっちなんだ?


「アンリ、まだ大丈夫のようだ。」

カルティスが珍しく沢山しゃべりながら水路から出てきた。


水滴が髪と耳から滴り落ちて赤い目を覆っているようでカルティスが手ではらいのけた。

男のオレからみてもかっこいいぜ。


「カルティスさん。」

ラスちゃんがますます真っ赤になって呟いた。

「失礼した。」

カルティスがそういって岸においた服で身体を隠した。


そのしぐさでさえ様になるってなんだよ、オレだっておまえと同じに育ったよな。


「あの寒くありませんか?よろしければ家でお茶でも。」

ラスちゃんが大胆な行動に出た。


たしかにラスちゃんの家のうちの雑貨屋『岩の花』はすぐ近くだ。

いいな、ラスちゃんにお茶入れてもらえるなんて。


「すまないがいそがしい。」

カルティスが断った。


ラスちゃんががっかりした顔をした。


「おい、何がそんなに忙しいんだよ!お茶いっぱいくらいいいだろう?」

オレはカルティスの腕をもって言った。


冷たいじゃねぇか。


「仕立て屋がくる。」

カルティスがそう言って服を着だした。


仕立て屋だって?

聞いたか?朝飯の時はついつい食の方に目が行くからな。

不味い親父に締められる、ここで聞いといてよかったぜ。


「悪いなラスちゃん、行こうぜカル。」

オレは仕方なくラスちゃんとのお茶を振りきった。


ラスちゃんはカルティスを未練がましくみてるけどな。

なんでこんなそっけないやろうがもてるんだ。


屋敷に帰ると碧露族アオツユぞく薄い翅をもった虫人が来ていた。

碧露族は腕のいい仕立て屋の一族だからな。


「ナーラファー・ローと申しますわ。」

綺麗な緑の髪の中性的な虫人は言った。

「世話になる。」

カルティスが軽く頭を下げた。


屋敷の一室にはもう布地が並べられている。

赤が多いか?赤狼のシンボルカラーだからな。


「お兄ちゃん遅いよ。」

妹の一人のが布地を運ぶ手伝いをしながら言った。

「奥さまがお待ちよ。」

もう一人の妹も手伝いに呼ばれたらしく人台の設置を手伝ってる。


オレとおなじで女にしては大柄だがイザークは可愛いといってたな。

茶色の狼耳と尻尾がピコピコ動いてるから大分慌ててるらしい。


うーん、妹ども兄ちゃんはどっちがどっちだかわかるが見事なそっくりぶりだな。


「すまない。」

カルティスが頭を軽く下げて言った。


「カル様のせいではありませんよ、うちのバカ兄のせいにきまってます。」

布地を運んでる方の多分ミューゼリーの方が言った。

「そうですよ、ウイセニアの言うとおりです。」

人台を設置していた方がミューセリアだったみたいだ。


わるいな兄ちゃんの目は節穴だったらしい。


「いや、アンリのせいではない。」

カルティスがそういって仕立て屋のいる部屋の奥に入って行った。


「ああん、すてき。」

ウイセニアが布地を持ったまま悶えた。

「カル様のあとにみると家の筋肉兄のカッコ悪さがきわだちますわ。」

ミューセリーがオレを見上げて言った。

「悪かったな、カッコ悪くて。」

オレはそう言ってカルティスを追った。


どうせオレは筋肉だるまだよ。


「カルティス様はやはり赤が似合いますね。」

仕立て屋がカルティスに金糸の織が入った布地を当てて言った。

「そうか。」

カルティスがたいして表情も変えずに言った。


だがオレにはわかるあれは気に入らない時の表情だ。


「奥さまこちらになさいますか?」

仕立て屋が布を当てて姿見でうつしながら言った。

「そうねぇ、もう少し色見が複雑なのはないかしら?」

奥さまが指を頬に当てて言った。


いつまでもどこか少女じみたおしとやかな奥さまがオレの母ちゃんと同じ年なんて信じられねぇ。


「ではこちらの少し紫がかった赤はいかがでごさいますか?柄にあわせて金糸で赤狼族の御紋を刺繍いたしますと映えると思いますわ。」

仕立て屋がそう言いながら端末でしあがり予想を見せた。

「あら、いいわね、カルティスどうかしら?」

奥さまが長身の息子を見上げて言った。

「母上の良いように。」

カルティスが言った。


ありゃ気に入ってないな。


「カル、お前はどんなのがいいんだ?」

未来の腹心としてはフォローしてやんないとな。


「これがよい。」

深い青の布をカルティスが指差した。

本当に上質な布だけど織が地味だ。


そういやお前青大好きだもんな。

いつも着てるのは青か黒系だしな。


「あら、赤狼なのに赤じゃなければダメよ。」

奥さまがそういって次の布地を取り出した。


あきらめろカルティス。

しょせん男に選択権はないんだ。


「大にいさまにはこれがお似合いですわ。」

いつの間にかアルシア嬢さんまで乱入してきて布地をあてがってる。


結局奥さまが気に入った紫がかった赤の布に決まった。


「次はアンリ君よ。」

奥さまが嬉しそうに言った。

「お兄ちゃんに似合う布なんてあるのかしら?」

失礼な妹たぶんミューゼリーが言った。

「アンリさんなら茶色系ですわね。」

アルシア嬢さんがそういいながら茶色系の布地を引っ張りだした。


カルティスと随分扱いが違うじゃねぇか。


「そうね、もう少し派手なのがいいかしら?焦げ茶に赤で刺繍とか。」

奥さまが小首をかしげた。

「オレンジに銀で刺繍も似合いそうですわ。」

仕立て屋がそういいながら細かい柄の入ったオレンジの布地をオレにあてがった。

「カル様のあとに見ると落ちるわね。」

ウイセニアが両手の指を組んでうっとりとカルティスの方を見ながら言った。


カルティスは腕を組んで黙ってオレの方を見てる。

おい、助けろよ。


「ウフフフ、アンリ君はがたいがいいからカルティスと違うおしゃれが楽しめそうね。」

奥さまがうきうき言った。

「そうですわ。」

アルシア嬢さんがそういってカタログから顔を上げた。


まあ、結局女性陣の言う通りにされるんだけどよ。


「カル様はどれがいいと思いますの?」

ミューゼリーが恋する乙女の表情でカルティスに近づいた。

「すまん、分からない。」

賢明にもカルティスが言った。

「そうですわよね、すみません。」

ミューゼリーはそう言いながらもうっとりと見上げた。

「ミュー、抜け駆け禁止です。」

ウイセニアまでカルティスの方に行った。


「あらあら両方まとめてカルティスのお嫁さんになってもいいのに。」

奥さまがおっとりと恐ろしいことをいった。


おい、カルティスいい加減モテる自覚もてよ。

そうじゃねぇと一夫多妻何て言う大昔の風習が復活するかも知れねぇぜ。


女性のパワーは半端ねぇからよ。

青い夜のような布を訂正します。

紫世界なので闇は深い緑でした。

ちなみに昼間は青空でなく紫空となっております。

申し訳ございません。

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