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 白髪黒衣の旅人1

「あなたが『魔法売り』さんですか?」


 炎魔法を調達すべく、1度外に出ようとして、門を出たところ声をかけられた。


ティナは振り向く。


 その人は町の外壁に張り付くように立っていた。


 ──なんてきれいなひと………。男の人…なのかな、さっきの声はすこし女の人にしては低かったし………


 とてもうつくしい顔だった。見た目だけなら女性に見える。


ティナが男の人だとわかったのは、女の人にしては低い声と、身長もかなり高かったからだ。


 それでも今すこし確信が持てなかったティナは直接聞いてみることにした。


 「あなた……男ですか?」


 「ええ、男ですよ」


 笑顔で返された。


 その余裕で大人な態度に言いようのない敗北感を覚えるティナ。


 「えっと……」


 落ち込んでいるティナを見て戸惑う男。


 「なんであんなきれいな人が男なのよ、不公平じゃない。けど、身長も高いし、声も低いから……」


 「あの?」


 ふと気づいたら男は鼻がくっつきそうなほど近くによってきていた。


 「な、なんですか!? いきなり──わっ!」


 慌てて離れようとして、尻餅をつくティナ。


 「イタタタ」


 「大丈夫ですか?」


 男が手をさしのべてきた。


 とっさに手をとろうとしてしまい、慌てて跳ね起きる。


 「いきなりなにするんですか!?」


 とりあえずさっきのことを問いただす。


 「なにって、しりもちをつかれたので」


 「そっちじゃないです!どうしてあんな近くに寄ってきたんですか!」


 「話しかけても反応が無かったので」


 だからってあんな近くに寄らなくてもいいだろう。

 

 あれではまるでキスしようとしていたみたいではないか。


 そこまで考えて顔を真っ赤にしてしまうティナ。


 「大丈夫ですか? 顔が赤いです。熱があるのかも」


 「ちがいます!そんなんじゃないです!……だからおでこに手を当てようとしないでください!」


 「しかし、ティナさんはあまり大きな声で怒鳴ったりなさらないお方だと聞いています。それなのに、こんなに怒鳴られて……。やはりどこか体調が悪いのでは?」


 「私を怒鳴らせている原因はすべてあなたにあるんです!………『聞いています』?」


 引っかかる言い回しをする男。しかし、

 

 「そうですか……。原因は僕だったのですね。ならば仕方ありません。これ以上お体に障らないよう、僕はここを去りましょう」


 といって、こちらの話を聞かずどこかに行こうとする。


 ティナは慌てて止めた。


 「ちょっとまってください! さっきのは…えっと………その……、キスされるかもって思って」


 急いで弁明しようとし、思い出したせいで後半はとても消え入りそうなほど小さくなってしまった。


 案の定、男には聞こえていなかったらしく、


 「やっぱりどこか悪いところが」


 「………キスされるかもって……」


 「なんと言っているのですか? もう少し大きい声でないと」


 「だからキス………」


 「はい?」


 なおも男は聞き返してくる。


 そしてとうとうティナがキレた。


 「キスされるかもって思ったって言ってんのよ!!!!」


 大きい声で怒鳴り散らしてしまう。自分の敬語口調もはずれていた。


 一瞬、妙な間が空く。


 涙目になって顔も真っ赤のままのティナ。しかし、今度うろたえたのは、男のほうだった。


 「え、えぇ!? そ、そのようなことを勘違いさせてしまうとは!た、たた大変ご無礼を!」


 慌てすぎて、ただでさえ丁寧な口調が、さらに丁寧になって時代錯誤をしているような言葉が飛び出す。


 他人が慌てている様を見て、すこし冷静になるティナ。


 そして、慌てている男を落ち着かせるため、さっきのしかけた質問をもう1度する。


 「私のことを聞いているって言ってましたよね?誰に聞いたんですか?」


 「え!? そ、それは昨日泊めてくれたお方にこの町のお店の事などを聞かせてもらっていると、『魔法売り』と言う仕事をしている女の子がいると言っていたので、どこに行けば会えるのか聞くと、今日この場所に待っていたら来るようにしといた、と言われたのでここで待っていたんです」


 一気に話しながら、男も落ち着いてきた。


 このことを聞いて、ティナにはそれが誰だかもう察しがついていた。


 ──この人を泊めたのは絶対にナターシャおばさんね……。ナターシャおばさんったら、昨日、やたらと炎魔法の量が多かったのは、私に在庫を尽きさせて調達させる意味もあったのか……


 まんまとしてやられた。


 ──それに、この人に私のことをはなしたのはレンくんにお使いを頼んだ後。つまり、ナターシャおばさんはこの人に魔法売りのことを聞かれなくても私のことを話してあわせるつもりだったに違いない


 なぜナターシャが、そんなことをする必要があるのか。


 決まっている。私に男を紹介してつき合わせるためだ。


 以前、ナターシャにティナは、ボーイフレンドはつくらないのか? と聞かれたことがある。作らないし、いらない、とゆったら、とても残念そうな顔をしていたのを覚えている。


 おそらく、私が16にもなるのに男友達1人いないのを心配して、この男を私に会わせようとしたのだろう。


 大きなお世話…と言いたいところだが、ナターシャのおせっかいは今に始まったことではないので、私はただため息をついた。

 




 


 

読んでくださってありがとうございます!

この話はすこし後に引く話になります。ので、なるべく早く書き上がらせれるようがんばります!


では、また次回!

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