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 奇妙な食事

 「ん~♪ やはり、ナターシャさんの料理は絶品ですね!」


 ウォーカーはナターシャの料理を絶賛し、量をどんどん減らしている。


 「そうだろう? 私は宿じゃ、女将だけじゃなく、料理長もやってるからね」


 ナターシャもまんざらでもなさそうに返す。


 さっきまでの険悪な雰囲気と悪口雑言が嘘のように、上機嫌だ。


 「っく!」


 リアは悔しそうに下唇を噛みしめた。


 なまじ料理が出来て、それなりに上手だと自分でも思っていたからだろう。


 ナターシャの料理は、自分とは比べものにならないほどおいしかった。


 ウォーカーとは対照的に、量はほとんど減っていなかった。


 「おやぁ? どうしたんだい? 私の料理は口に合わなかったかな?」


 それに気づいたナターシャが、してやったりと言った調子で皮肉った。


 「………っ!」


 リアがナターシャを睨む。


 ナターシャは、それを悠然と受け止める。


 場がまた険悪な雰囲気になろうとしたとき、ウォーカが、


 「でも、ナターシャさんの豪勢な料理もおいしいんですけど、僕はリアの料理の方が好きですね。あの村で作ってもらった朝食は実においしかったです」


 と、空気を読めてるのか読めていないのか、よくわからない事を言った。


 リアは、その言葉で一瞬キョトンと固まった。と思ったら、ウォーカーの背中を思いっきり、バシン! と叩いた。


 「なに言ってんのよ! 当たり前じゃない!」


 そう言って、豪快に笑う。


 「痛いです……。リアさん…」


 よほど痛かったのか、呼び捨てからさん付けに戻ってしまっている。


 「ほらほら! さん付け禁止!」


 とても楽しそうに注意するリア。


 ──まったく。こいつ、ほんとにわざとやってんじゃないだろうねぇ


 ナターシャはウォーカーを見て、呆れていた。


 リアの顔は真っ赤になっている。照れているのだ。


 先ほど背中を叩いたり、軽口を聞いているのは彼女なりの照れ隠しなのだろう。


 ──ティナに協力なライバル出現だね


 ナターシャは心の中で、自分にとって娘のようなティナにエールを送る。


 最も、ティナに、ちゃんとした恋愛経験はないので、ウォーカーに抱く感情が、果たして本当に恋愛感情なのかは、ナターシャにもわからないいのだが。


 ナターシャは気になっていたことをウォーカーに聞いた。


 「ウォーカーの人を探してきますって言ってたのもあながち嘘じゃなかったんだね」


 「えっと、……まぁそうなりますね」


 言いにくそうに言うウォーカー。


 歯切れの悪い返答にナターシャが訝しむ。


 「?」


 それに気づいたウォーカーも白状した。


 「リアとはこの街に来たとき馬車ごとはぐれてしまったんです。それで、このままにして、逃げようと思っていたんですが、見つかってしまいまして………」


 心底残念そうに言うウォーカー。


 「本人の前でよくそんなことが言えるわね」


 怒りを通り越して呆れるリア。


 そんな2人を見たナターシャは、当然の質問をした。


 「あんたら、2人で一緒に旅をしているんじゃないのかい?」


 「していると言うか、させられる事になったと言いますか……」


 「?」


 またも、頭に疑問が浮かぶナターシャ。


 そこでリアが答える。


 「簡単に言うと、私が勝手について来ちゃったの」


 ウォーカーも首肯する。


 「まぁ、簡単に言うと、そう言うことです」


 ──いや、ついて来ちゃったって


 そんな簡単なことではないだろう、とナターシャは思う。


 「あんたの親は? 反対しなかったのかい?」


 「しなかったわ」


 即答するリア。


 「こんな見るからに怪しい男について行くのにか?」


 だとしたら、ずいぶん大らかな家族だ。


 「そんなに怪しいでしょうか………」


 少し傷ついた様子のウォーカー。 


 「……まぁ、怪しいってところは否定できないけど」


 ウォーカーをチラッと見ながらリアが小声で言う。


 「いや、そこは否定してください」


 ボソッと言うウォーカー。リアは無視して続ける。


 「けど、そんな所を差し引いたとしても、娘の恩人だからね。

 そっちの感謝の気持ちの方が勝ったんじゃない?」


 「恩人?」


 「恩人。実は私、蛾のモンスターの鱗粉を浴びちゃって、寝込んでたの。そこに、たまたま泊まるための宿を探していたこの人がやってきて、解毒魔法を使って助けてくれたのでしたー」


 料理を食べ始めるリア。


 そのあと、黙って待ってみるがしゃべり始める気配がない。


 「………。終わり?」


 仕方なくナターシャが聞く。


 リアはキョトンとした顔で、


 「終わりだけど? なんか分からないところあった?」


 「いや、あんたにとって、こいつが恩人だってことはわかったよ。その理由もね。

 ……ただ、あんた自身が旅をする理由が分からない」


 「旅をする、理由?」


 「あぁ、まさかなにもないなんて言わないだろう?」


 「ないけど?」


 あっけからんと言い放つリア。


 「ないのかい!?」


 「だって、ウォーカー本人が、どんな理由で旅してるかも知らないもん」


 「……じゃあ、あんたは、ほんとに旅をする理由がないのか」


 ナターシャの言い方に若干の棘を感じたのか、リアは弱気になって言い返す。


 「ないけど……。強いて言うなら……、あれかな。ウォーカーが旅をする理由が、私の旅をする理由かな」


 適当にも聞こえるリアの言葉。


 だが、知りもしないで、ウォーカーの理由に自分も付いて行く、と言えるほどウォーカーのことを信頼しているのだろう。


 「はぁ~~~ーー………」


 ナターシャは1つ大きなためいきをつくと言った。


 「じゃあ、そのウォーカーに旅をする理由を聞いてみようか」


 ウォーカーをじろりとと睨みながら。


 「え、僕ですか?」


 1人黙々と食べていたウォーカーはキョトンと首を傾げた。


  

 

 










 

読んで下さってありがとうございます!

ここでもまだティナは出てきませんね。

主人公放置してなにやってんだ作者!

と思われてそうです。

次回、もしくは、その次からはティナも登場さたいので、それまではこの三人のやりとりを楽しんでいただければ幸いです。


では、また次回あえることを祈って!

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