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 奏商祭

 そして、さらに少したったあと、とうとうウォーカーは、「ちょっと人捜しをしてきます」と言って街に出て行った。


 この街に来てまだ一週間もたっていないのに、人捜しとゆう理由は無いだろう、とナターシャは思ったがなにも言わず送り出した。

 


 そして、今にいたる。


 「………」


 「………」


 ナターシャもティナをからかうのをやめたらしく、部屋は静かになっていた。


 それから10分ほどすぎた頃、思い出したようにナターシャはティナに言った。


 「そーいえば、あんたは《組合ギルド》に入ってないから知らないでしょうけど、今年の『奏商祭そうしょうさい』は1週間後だってさ」


 ティナは特に気にした風もなく、むしろ楽しそうに返す。


 「そーなんだー。今年はどんな魔法を売ろうかな~」


 《組合ギルド》とは、同じような仕事を持った人同士で作る団体の事である。


 この街では、主に《職人ギルド》や《商人ギルド》があるが、ほかの国々には、《冒険者ギルド》、《傭兵ギルド》、《農業ギルド》などなどが多岐にわたり存在している。


 中には、暗殺や強盗などを扱う《闇ギルド》と呼ばれる違法ギルドも存在する。


 最後の闇ギルド以外は、メルクリウスでは『仕事』を認可された者以外加入できない事になっていて、仕事を持っていないティナは、当然ギルドにも参加できておらず、街のイベントや連絡事項には必然的に鈍くなる。


 ティナはそこら辺のことをナターシャを通じて情報を流してもらっているのだ。


 ナターシャはティナが『仕事』を持ってないことを知る数少ない人のうちの1人なので、ティナも今更仕事の事を言われてもなにも感じない。


 ちなみに、ナターシャは宿屋の女将で、ここらいったいの《宿ギルド》を取り仕切っている。


 「それがさ、今年の奏商祭はなんとメルクリウスの第一王子が来るらしいんだ」


 「へぇ………え?」


 さっきまでふんわりとした笑みはどこに行ったのか、目を見開いて口をぽかんとあけているティナ。


 「な、なんでわざわざこんな端っこの方の国の祭りにメルクリウスの王子がくるの?」


 驚きの声をあげるティナ。


 それでもナターシャはやっぱり軽く、


 「さあね~。遊びに来たいんじゃないの?」


 ナターシャはあまり気にしていないようだが、ティナには死活問題だった。


 なぜなら、ティナは『仕事』を持っていない。それでも毎年、この街で行われる『奏商祭』には参加してきた。それを出来たのは、祭りの間、メルクリウスの兵士などの監視が緩くなるからだ。


 奏商祭は1年に1回行われる、シャルアートの伝統的な祭りだ。シャルアートの全ての店という店、職人という職人がこぞって、街の中央通り…南の門から北の門までを一直線につなぐ道に店をあげ、毎年とても賑わう。外からの観光客も来るので、街をあげての祭りとなっている。


 そんな理由があり、兵士たちの監視や規制も国の干渉によって緩くなる。


 しかし、そこに第一王子などの王族がくるとなったら話は別だ。


 王族がくるということは護衛の兵士なども来るであろうし、街の方も、王族の手前で兵士に根回しをするのも難しくなる。


 そんな所でティナが働いていたらそく捕まってしまうだろう。


 「今年の奏商祭は客として参加するしかないかぁ~」


 そこでナターシャは少し眉を上げた。


 「おや? 案外楽観的なんだね~。いつものあんたならもっと落ち込んで1人で悩んでるだろうに」


 「人が気にしていることをずけずけと………。まぁ、それはおいといて、そう?」


 「そう」


 うなずくナターシャ。


 「なんか昨日会ったときから思ってたけど、あんたちょっと明るくなったんじゃない?」


 「うーん……そーかなー……」


 首を傾げるティナ。


 明るく見えるようになったのは嬉しいことだ。しかし、自分では自覚出来ておらず、相変わらず自分は暗い性格だと思っている。


 「いっとくけど、元からあんたはそんなに暗い性格はしていないよ?」


 呆れたようにナターシャは、物覚えの悪い子どもに言うように言った。


 「どうして?」


 「あんたの周りには自然と人が集まってくるだろう? 街で商売しているときだって見知った人が声かけてくるだろう?」


 「それはみんなが優しくて、自分で言うのもあれだけど、私の魔法瓶がほしいからじゃないの?」


 「もちろんそれもある。が、それだけで年端もいかない子供から商品買ってやるほどみんなバカでもお人好しでもない」


 そう言うナターシャの顔は、商人の顔をしていた。


 「あんたのとこに人が集まるのは、あんたが一生懸命やっているからだ。努力を惜しまず、愛想は良く、どんな人でも客ならば対等に接する。あんたの商売はそれが伝わってくるんだよ。だからみんな、あんたを商人だと認めているし、兵士に通報するような輩も出てこない。あんたの商売はあんたの人徳がなせるがあってなせる物なんだよ」


 ナターシャにこんなに誉められたのは初めてだ。昨日の師匠と言い、ナターシャと言い、普段誉めてくれない人からよく誉められると、ティナはぼんやりした頭でそんなことを考えた。


 「けど、そのことと私が暗いことにどんな関係があるの?」


 ナターシャはまた呆れてため息をついた。


 「だれも暗い顔や雰囲気を持った言うから物なんか買いたがらないだろう」


 言われてみればその通りだとティナは思った。


 「じゃあ私ってほんとは明るいんだ!」


 ティナは素直に嬉しかった。


 「まぁ、ネガティブではあるけどね。ただ私が気にかかったのは、そのことじゃないんだけど……」


 後半は独り言のように呟くナターシャ。


 「え?」


 そのおかげかティナにはよく聞こえなかったようだ。


 「なんでもないさ。それよりほんとに今年は客としてしか参加しないのかい?」


 「そーだねー。やっぱり、王族がきて警備が厳しい中で、仕事を持たないまま商売をする気にはなれないかな~」


 さほど気にした様子もなく話すティナ。


 その反応を見てある決心をするナターシャ。


 「やっぱりあんた変わったね。いつもなら仕事の話をすると落ち込んで、自分からは絶対話したりしないのに」


 「それはあれだよ、昨日の夜ウォーカーさんにも話したし、なぐさめてもらっちゃいましたから」


 ナターシャの雰囲気が変わったことにも気づかず、フフッと思い出し笑いをするティナ。


 すると唐突にナターシャが言った。


 「あんた、もう1回、仕事を認めてもらいに行かないかい?」

 




 






読んでくださってありがとうございます!


この話でやっと、物語全体のメインテーマが出てきました!


次回から気合い入れてかくぜぇー!

と気持ちの入れ直しをして書きたいと思っています!

(もちろん今までも気合い入れてかいていましたけどね?)

 兎にも角にもこれからもよろしくお願いします!

 ではまた次回会えることを祈って!

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