ティーチャーを愛してしまったかもしれない
鐘川凜:21歳大学3年生
鐘川律:18歳高校3年生
姉妹だけど性格や体力、好きなことは全然違う。
凛は勉強得意だが、
律は運動と遊んでばっかり。凛と同じ大学にちゃんと受かるのであろうか。凛の通っている大学は超のつく頭の良い学校だから……
律は高校には行っていない。お母様とお父様に行かなくて良いと言われ育ってきた。しかし今になって大学を受けなさいと言われた。
友達がいない悲しい生活。
でも家庭教師もいるしお姉様もいるから悲しくなんかないの。
凛お姉様は私とは違って学校にちゃんと行ってるし頭も良い。本当だったら私は高校に行っているはず。行ってないから私のこと知らない人が多い。
心配性なお姉様。凄いくらいな心配性。
姉の凛は、学校にも行かずに部屋でゲームなど遊んでいるばかりいる妹を心配していた。中学までは部活バカで運動をしていたのに……
今は、まだ若いから親のすねかじりでも許されるがこのままでは自立出来ないダメな子になってしまう。
「そろそろ妹に本格的に受験勉強を教えてあげたいけど、基礎がないから無理よね?」
「そうですね、まずは大検に受からないといけません」
家庭教師をしてくれているのは、あたしの大学のボーイフレンドのの高村陽一。
彼は、はっきり物を言うタイプだった。
「とにかく、妹のことは頼んだわよ。せめて大検が通るくらいは勉強教えてあげて」
彼は苦笑いをしながら妹の部屋に消えた。
陽一先生が私の部屋に入ってきて、テレビの電源を消した。
プチっ…
「ちょ、ちょ、ちょっと先生!
セーブしてないのに勝手に切らないでよ‼あーあ…最悪だ……先生のバカァ…大っ嫌いだぁ……」
律は泣きながら先生に飛びついた。大好きなゲーム、セーブしてないのに電源を消されてしまった。
これは人生最悪の事態だった。
「ゲームは所詮、遊びですよ。いくらスキルを高めても、人生において何の役にも立ちません」
高村陽一は、騒ぐ私を一瞥してからテキストを開いた。彼は業務的に時間までしっかり授業をすると、最後に飴玉を一つ口に入れてくれる。
「今日はなかなか真面目に勉強してくれたので、ご褒美です。」
この時、先生の笑顔が凄く可愛いって感じた。
「ありがとう、先生。」
私はそう言うとすぐさまお姉様の部屋に向かった。
「先生が褒めてくれて、また飴玉くれたっ‼」
私は子どもみたいにニコニコしながらお話した。
お姉様はウェーブした前髪を指に巻きつけながら、ソファに腰掛けて外国語で書かれたロマンス小説を読んでいた。
「彼が本気で褒めてくれるときは、もっと甘い物をくれるのよ」
「甘い物?」
私は訳もわからず、キョトーンとしていた。
「それは飴玉よりも甘くて、お金じゃ買えない物なのよ。」
お金に困らない私には、お金で買えない物があるなんて知らなかった。
「ふーん…なんだろう……すっごい美味しいのかな…♪早く食べてみたいなぁ〜」
私にはくれるかな…
勉強がんばればくれるかな…⁇
この飴玉よりも甘いものって一体なんだろうか。しかもお金では買えないって。
凄く気になっちゃった。
今度、先生に聞いてみようかな。
浮かれている私に凛はこう言った。
「知識と教養、友情と愛情、生と死、世の中はお金で買える物の方が少ないのよ。律はまず知識と教養について家庭教師から学びなさい。分かったわね?」
「え…?あ、うん。わかったよ。」
私は飴玉を舐めながらお姉様の部屋から出て廊下を歩き出した。
するとしばらくして先生が話しかけてきた。
「お姉さんは、どこにいるのかな?」
先生は凛の部屋から出てきて眼鏡のノッチを押し上げて言った。
彼は、授業が終わるとお姉様の部屋で談笑してから帰宅する。
「あれ?お姉様、部屋にいないの?」
さっきまでいたんだけどな……
お姉様はリビングに行ったのかもしれない……と私はつぶやいた。
「リビング…? 僕は君たち姉妹の部屋しか行かないから分からないんだ......」
私は先生にリビングの場所を教えると、彼に気が付かれないようにベランダから二人の会話を盗み聞きしようとしていた。
リビングでは、二人ともソファに座って紅茶を飲んでいた。
先生はお姉様のライトブラウンの髪に指を絡ませている。
「凛の妹、僕には少し幼過ぎるよ......もっと相応しい教師を見つけたらいい」
「な、なに言ってるのよ。貴方にしか頼めないからお願いしてるのよ?それにお給料も十分払ってるじゃない!」
「僕は、お金で引き受けたわけじゃないよ。君と話す口実が欲しかったんだ……」
「えっ?」
あたしはビックリした。なんでこんなこと、言われてるんだ…
「だから、もう凛の妹の勉強を教える意味なんてないんだよ。」
「こ、困るわよ。私は、世間知らずの妹に学ぶ楽しさを教えてあげたいの、ちゃんとした大人にしてあげたいのよ!」
「いいのか…?本当に妹が大人になっても……」
「そのために貴方をやとっているのよ……?」
凛は少し泣きそうになっていた。
一通り争いが終わると先生は、凛の唇を奪った。
私は焦った。
(……ど、どうしよう。私がこんなんだから、、飴玉よりもっと甘いってやつもらえないんだ…)
私はそのあと自分のお部屋に戻った。
そして珍しく復習や予習をしてみた。
「復習するなんて、はじめてだから眠くなってきた......けど、勉強がんばって、先生からご褒美もらうんだ、だから、ね......」
私は、机に向かったまま寝てしまった。
「律、夕食も食べずにゲームしてるの?」
ドアをノックする音に目を覚ますと、おねーちゃんが夜食を運んできていた。
「勉強してたのね」
「うん、先生がくれるご褒美、甘いやつが気になるから……」
「そう、なら頑張らないといけないわ」
「お姉様は先生からご褒美もらったことあるの…?」
「どうかしら。私は人に褒められる生き方をしていないから、たぶん一生もらえないわね」
お姉様は、唇に指を当てて俯いてしまった。
私、何か悪いこと言ったかな…。
「ねぇ、お姉様……わたし…先生に嫌われてないかな、大丈夫かな……」
「あの人は、勉強を頑張る子が好きみたいなのよ」
「そうなんだ。だから、いつも読書しているお姉様のこと......」
……。…好きになった? 先生はお姉様の恋人なのかと聞いてみたかった。
だけど、私はその疑問を言葉に出来なかった。なぜか解らないのはきっと頭が悪いせいなんだ。
しばらくお姉様と話していた。お姉様が部屋から出て行くと、なぜか涙が止まらないほど落ち込んだ。
「私は、バカだから解らないことばかりだ…勉強して頭良くなろう。先生に好かれるくらい勉強しよう……」
私…先生に恋、してしまったのかな?
先生……