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プロローグ

王都から遠く離れた森の奥。


そこに人口150人程度の村があった。


森に囲まれた静かな場所で、村人は畑を耕し、家畜を育て、村から木を切って生活をしている。

大きな町のような賑やかさはないが、穏やかな時間が流れる村だった。


そしてこの村には、少しだけ珍しい少年が住んでいる。


「レイ!斧の振りが甘いぞー!」

森の中に低く太い声が響いた。


「わかってるよ!」

少年――レイはそう返事をしながら、大きな斧を振り上げる。


レイは14歳ほどの少年だ。

少し日に焼けた肌に、まだ幼さのの超える整った顔立ち。

肩まで伸びた白色の髪には少し癖があり、ところどころ跳ねている。


そして何より目立つのは――。

頭の上に生えていると腰に生えている、耳と尻尾だ。

レイは、

人間の母と獣人の父から生まれた半獣人の少年だった。


ガンっ!

斧が木に食い込む。

もう一度、斧を振り、

ドォン・・

大きな音を立てて気が倒れた。


レイは斧を地面に建てて肩で息をする。

「はぁ・・」

「うん。だいぶましになったな」

そういって腕を組んでいるのは、筋肉の塊のような大きい獣人。


レイの父、ガルドである。


身長は二メートル近くあり、肩幅も広い。

全身が灰色の毛に覆われており、狐が二足歩行しているかと誤認する。

口元の鋭い牙が太陽により輝いている。


「今のは良かったな。木の芯をちゃんととらえてる」

ガルドは大きく頷いた。


「ほんとに?」

「あぁ。木こりとしてならもう一人前だな!」

ガルドの言葉にレイは苦笑を漏らした。

「僕は木こりになるつもりはないんだけどね」

ガルドと談笑しながら、木々を抱え、レイたちは村へ戻った。



村の中心には、小さな工房がある。

石造りの建物の入り口にぶら下げられた木製の看板【ミリアの杖工房】を横目に、2人は建物の中に入る。


扉を開けると、木の香りと、僅かな魔力の気配が漂う。

棚には、様々な杖が並んでいた。

長い杖、短い杖。

様々な色の宝石が埋め込まれ、丁寧に飾られている。


「ただいま!」

レイが声を上げる。


すると数秒足らずで、奥から女性が顔を出した。

レイの母、ミリアだ。


腰まで伸ばした白い髪を緩くまとめ、優しい紫色の瞳をしている。


落ち着いた雰囲気の女性で、魔法使いが着用するローブの上から作業用のエプロンを着ていた。


「おかえり。レイ。あなた」

やわらかい声でミリアが言う。


「今日もありがとう」

2人から木々を受け取り、ミリアは微笑んだ。


レイの両親は杖工房を営んでおり、ミリアが杖を作り、ガルドが木を刈っている。


「そうだ。レイ。魔法の練習する?」

ミリアはそう言いながら、机の上に置かれた小さな杖を取り出した。


その言葉にレイの目が輝く。

「やる!」

「ふふっ。レイは本当に魔法が好きね。」

「斧も好きだよ?」

「ははっ!それはお父さんも嬉しいな!」


70年ほど前、魔王が暴虐の限りを尽くしていたころ、魔法・剣・弓。3つの流派を鍛え上げた3人が魔王を討ち、人々を救った三英雄、

剣聖グリス・モンディオン

大魔術師ベイル・フィオレ

大弓術士アリオ・イースト。


人々に、その3流派を伝え、現在、3流派のどれかを使えるのが当たり前となった。

その中でもレイは魔法が好きだった。


3人は家の裏庭へ出る。

「今日はこの前の続き、中級の風魔法ね」

魔力という力を使って無から有を生み出す

その不思議な現象がレイは好きだった。


「《風刃(ウィングエッジ)》」

指先に風が生まれ、刃のように鋭くなってゆく。


「あの木目掛けて打ってみて」

ミリアが刺した木に標準を合わせ、打った。


ギュン!

甲高い音とともに、木が倒れる。

「うん。いい感じね。でももうそろそろ教える魔法なくなっちゃいそうね」

ミリアの言葉にレイは肩を落とす。

「ごめんね。私も中級魔術までしか・・・。それも風と水だけ・・・」

3流派の中で、魔法は一番難しい。


基本属性 火・水・氷・雷・風・土の6つと、補助魔法 治癒・状態異常治癒・付与魔法の3つ。

種類が多く、個々の魔力量が決まっており、下手をすれば死ぬ。


その時だった。

「レイ―!」

村の道から声が聞こえてきた。

振り返ると、一人の少女が塀越しに手を振っていた。


水色の髪を胸元まで伸ばし、上半分を後ろで結んだハーフアップ。

透き通るような青い瞳。白いワンピースの上から紺色のローブを羽織っている。


レイと同い年の少女、アリス。

幼馴染だ。


「また魔法の練習してるの?」

アリスは息を切らしながら聞いた。

その様子を見て、怜は笑う。

「そっちこそ」

すると、アリスは少し困った顔をしていた。

「さっき・・・・ちょっと失敗して・・・」

レイは察した。


「・・・どれくらい?」

恐る恐る聞いてみると、アリスは視線をそらした。


「・・・・井戸が吹き上がった」

レイはその言葉に頭を抱え、両親は苦笑を漏らした。


「またアリスちゃん失敗したのね」

「あはは・・・・」


アリスは魔力が強すぎる。

普通の人の何倍もの魔力を持っているのだ。

そのせいで――

魔法の威力が大きく、制御が難しいらしい。


「村長に怒られる・・・」

アリスがしょんぼりとする。


「一緒に謝りに行くよ」

レイの言葉にアリスは少し安心したように笑った。


その時、

レイの耳がピクリと動く。

森の奥から、それも物凄い小さな音。

巨大な何かが群れを成して動いているような音。


レイは森の方を見る。

風が木々を揺らしている。


「どうしたの?」

アリスが効く。

「・・・なんでもない」

レイは首を横にふった。

だが、胸の奥に、小さな違和感が残る。


まだ誰も知らない

この村で、少しずつ異変が起き始めていることを。


そして、それが、

レイとアリスの運命を変える出来事へとつながることを

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