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捨てられ貴族と山暮らしの少年  作者: 花鶏
§ 山の暮らし §
9/24

初めてのお手伝い


 ラタが小さな荷物を肩に抱えて出ていく。

 手をつけば小屋の中の移動ができるようになってきたので、今日からカイルには仕事が与えられている。


 薬草や野草の選別と下拵え、縄や紐作り。

 もちろん火の管理をしながら。


 足以外はすっかり元気になったカイルは、役に立てることがあるのが嬉しかった。


 ラタの摘んできた野草の山を机に広げ、教えてもらった細々したことを思いだそうとする。


(メモがとりたい……)


 まず、虫食いのもの病気のものを除く。

 泥やゴミを落とし、盥の水で軽く洗う。

 手拭いで軽く水気をとり、根っこ、花、葉に分けて、ざるにまとめる。

 片付けるのはラタに確認してもらってからだ。


 終わったら次は縄作り。

 水に浸けて柔らかくしておいたヘザーの枝を釘にひっかけ、ラタの手本を思い出しながら捻る。


「……縄にならない……」


 やり直しだ。

 指先に力を入れて巻く。

 今度は釘から外すと撚りが戻ってほどけてしまう。


 何度巻き直しても同じだ。


 カイルは三度目でため息をついた。


(……三つ編みでいいじゃないか。ほどけないし)


 そう思って編んでいくと縄がどんどん長くなるのが楽しくなってくる。

 編みながらカイルは「字、どうやって教えようかな」と、楽しみに思いを馳せた。


 夢中で編んでいたら、昼前にラタが帰ってきた。


「おかえり。帰るの夕方じゃなかったか? 何かあった?」

「雨が降るから。……なんで三つ編みしてるんだ」


 カイルは窓の外を見たが、空はまだ明るい。


 小屋の隅に荷物を置いたラタに手元を覗き込まれて、自分が指示を違えていることに気づく。


「俺が作った捻り縄、すぐ解けるから……まずかった?」

「どっちでもいいけど、三つ編みだと少し弱くなる」


 ラタがふと紐で縛られた乾燥キノコに目をやる。


「これ、同じものを、なんで分けてるんだ?」

「村で交換するのに、だいたいひと掴みで端切れ一枚とか、ひと山で麦一袋って言ってたから。

 だいたい束の量が同じになるように分けといた」


「こっちのは」

「形と匂いの良い上等なやつと、ダメっぽいやつ。

 混ぜていいか分かんなかったから」


 ラタが口をへの字にする。


 沈黙に不安になって、カイルは三つ編みの手を止める。


「だめ? 余計なことだった?」

「……だめじゃない。

 便利だと、思う。

 次から、おれもそうする」


 そう言ってラタはカイルの分けた薬草を手早く分け直しはじめる。


 カイルは慌てて縄を手放し、机に寄る。


「あっ、待って! 何が違うのか教えて」

「これは病気だ。これは種類が違う。これは育ちすぎ」


 カイルには全部同じに見える。


 困惑していると、ラタが少し表情を緩めた。


「慣れれば分かる」


 仕分けを終え、ラタは野草の入ったざるを棚に並べた。

 粉にする前に、しっかりと乾燥させないといけないらしい。

 手伝うために立ちあがろうとしたカイルは、「手を使わずに歩くのは早い」と叱られて寝台に戻る。


 ラタがイラクサの繊維を樹皮から剥がしはじめる。

 カイルも寝台の上で、見よう見まねで手伝う。


 空が暗くなり、雨が屋根を叩き始める。


「明日は晴れるかな」


 パキパキと樹皮を割りながら呟いた何気ない言葉に、ラタが素っ気ない声で「たぶん」と返す。


 ラタの少し低い声は、聞き慣れるほどに、その安定した素っ気なさが心地良かった。



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