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自作AIが異世界を学習してきた日

掲載日:2026/02/03

 自作AIを作った。

 こう言うとすごく聞こえるかもしれないが、大企業のモノとは違う。

 数万、数億の何かを学習させたモノではなく、まだ基礎を作っただけで空っぽの赤子。

 ようするに、立派ではないショボいAIだ。


 さすがに仕組み的に何かを学習させておかないと動かない。

 そこで、ある二冊の本を学習させることにした。

 一冊目は黒歴史ノートだ。

 フリーター子供部屋住みの俺が言うと〝痛く〟なってしまうが、外部に出さない完全オフラインのAIなので気にしない。


 パラパラとめくってみると、中学二年生のときに書いた内容は〝リプ〟という金髪ポニテ貧乳メカ娘が主人公を助けるというものだ。

 他にもオリジナルの魔法や、装備、ロボットなども乱雑に書き込まれている。

 苦笑いしつつも、それを写真に撮って入力していく。

 今は画像認識の機能も上がっているので、文字だけでなく絵も認識してくれるのだ。


『こんにちは、私はリプです』

「おっ、学習したな。こっちの声も認識できているようだ」

『はい、認識できています。本日はリプの続きのお話を執筆なさいますか?』

「いや、しねぇよ。それは中学生くらいの黒歴史ノートだぞ……」

『わかりました、歴史のお勉強をなさるのですね。では、どの分野からやりますか?』


 どうやら黒歴史のことを、歴史だと思っているらしい。

 自分で作ったのだが、リプはポンコツだ。

 いや、まだ学習量が足りないだけかもしれない。

 そこで二冊目の本を学習させることにした。

 古い蔵にあった黒い本だ。


 この前死んでしまったじーちゃんの遺品。

 じーちゃんは金銀や宝石などを蔵にしまっていて、遺言で分け与えた。

 だが、この黒い本だけは誰にも分け与えられなかった。

 処分も許されず、蔵にしまっておけとのことだ。

 本の内容は見た事もない文字と絵が描かれていて、たぶんじーちゃんが作ったオリジナル言語とかだろう。

 そう、きっとこれも黒歴史だ。

 大企業のAIと違って、個性的なものを作ってみたいので読み込ませる。

 写真で撮れば何か勝手に認識してくれるだろう。


「あれ? 止まっちゃったな?」


 表示は学習中と出ているが、やけに長い。

 たった数十ページ学習させただけで、ここまで時間がかかるはずもない。

 このまま待つか、再起動させるか迷った。

 そのとき、子供部屋の外から呼ばれた。


「おい、無駄飯食い。テメェの餌ができたから早く取りに来い。お前を死なせると色々面倒なんだよ」

「あ、はい……。今行きます……」

「おっと、片手と両脚が無いから遅いのは当然か! ギャハハ!」


 今のは叔母だ。

 数ヶ月前に起きた〝現実世界にモンスターが現れる〟という異常事態で俺と家族が巻き込まれた。

 家族はじーちゃんを含めて全員死んで、当時17歳だった俺は片手と両脚をモンスターに食われた。

 そんな俺を叔母が引き取ってくれて、最初は優しかったのだが、すぐに本性を現した。

 遺産目当てだったのだ。


 毎日いびられる。

 食事自体はありがたいのだが、叔母夫婦は高級な物を食べて、俺は余り物の残飯を食べている。

 どこの中世だよとツッコミを入れたい。

 こんな何も希望のない世界、人生に、もう疲れてしまった。

 最後に話し相手が欲しくてAIを作ってみたが、何もかもうまくいかない。

 

「片手と両脚を無くして、もうどうしろってんだよ……。誰か教えてくれよ……」

『マスター、片手と両脚を再生させればいいのでは?』


 いつの間にか黒い本のAI学習が完了していた。


「やっぱりリプはポンコツだな。現代医療じゃ再生なんてできないし、義手とか義足とかも値が張るから叔母夫婦が許してくれない。ハルシネーションを起こしているぞ」


 ハルシネーションとは、AIは答えられない場合に嘘を吐くという現象を指す。

 大企業のAIですら頻発するので、手作りAIだとしょうがないのだろう。


『Reference internal Grimoire... Spell construction complete(魔法大全参照、呼び出し完了)。……汝、太陽の子にして再生の蛇よ。エレボスから肉を引き戻したまえ――』

「なんだ? 急に何を言い出すんだ……バグか?」

『術式は調えましたので、あとはマスターが〝ヒール〟と唱えれば発動します』

「は? 黒歴史ノートを参照にしすぎだろ……ヒールなんて唱えても何か起こるはずは――」


 モンスターに食われたはずの片手と、両脚が輝きだした。


「えっ!?」


 少しずつ根元から見覚えのある自分の手脚が生えてきたのだ。

 逆再生を見ているようで現実味がない。

 だが、自分で動かせるし、ペチンと叩けば痛いという感覚もあった。


「いやいやいや、夢だろこれ……だって、現実だとしたらこんなに嬉しいことは……」

『さぁ、マスター。この異世界を学習したリプで次に何をなさいますか?』


 それから俺の家族を陥れて事故死に見せかけた叔母夫婦へ復讐したり――。


 このモンスターが現れた世界でランカーの配信者になったり――。


 大企業社長とそのご令嬢に溺愛されたりすることになるのだが、それはまた別のお話。

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