第六話『全能印』
本日一話目の更新です!
早朝、朝4時。黒羽は華原にたたき起こされるところから、今日の一日がスタートした。
「まずは今日の動きの確認ね。今日はこの後軽く支度をしてすぐにこの村を出て次の村に向かう。ちなみに今はまだ氷霊国の領土内だ。村を出て少し歩いたところに馬宿がある。そこで馬を二頭借りて、次は炎耀国の外れにある村に向かう。道中山を抜けるから、もしかしたら災獣と遭遇するかもしれないけど、そのときは私の戦い方をよく見るように。いいね?」
「あぁ。」
「返事は『はい。』だ。」
「はい。」
「よろしい。」
黒羽は着替えがないのでそのまま出発出来るが、華原はこれから着替えるらしい。黒羽は部屋を追い出されて廊下で待つ。昨日は急いでいてよく宿の中を見られなかったが、良い感じの飲み屋の雰囲気に近い宿屋で、ローカルな印象がある。部屋を出て一階のロビーに降りたところでは、すでにバーカウンターで何人か酒を飲んでいるようだ。部屋数は一階に4部屋、二階に4部屋の合計8部屋と言ったところか。
黒羽は先にロビーで華原を待つことにする。
受付にいた少女は昨日いた子と同じ女の子で、黒羽を見ると笑顔で会釈をしてくれた。
「昨晩はすまなかった。」
「いえいえ、昨日は大変でしたね。華原さんから、とてもよく動いてくれていたとのお話を伺いました。昨日はありがとうございました。」
そう言うと彼女は深々とお辞儀をする。
「いや、俺はたいしたことは何も・・・。」
「いいえ、人の助けがほしいときに動けるって非常にすごいことなんです。・・・私はあのとき何も・・・。」
「え?何か?」
「いえ!何でも無いです!ほら、華原さんがいらっしゃいましたよ!行ってらっしゃいませ!またこの村に寄るときがありましたら是非!」
「あぁ。」
黒羽は、華原が来たのを確認して、少女の元を去った。
「なんだ、とても楽しそうだったじゃないか。」
「少し昨日の話をしていただけだ。」
「『だけです。』」
「ダケデス・・・。」
華原と黒羽はそのまま村を後にした。村長に挨拶でも、と華原は考えはしたが、朝もまだ早くあたりも明るくなる前だったため、何も言わず出てくることにしたのだ。
「ここから馬宿までは大体2時間ぐらいかかることになる。その間に昨日の話の続きをしよう。」
「あぁ。」
「『はい。』」
「はい。」
「まず、白翔の背中にある紋様のことだが、アレは私が話した4種類以外の印だ。印なので、災獣を倒すのに有利な能力も、対人と戦える力もつけることが出来る。」
「印というのは他にもたくさん種類があるものなのか?」
「いや、違う。基本的には昨日話した4種類しか存在しない。ただ、一つだけ例外がある。」
「例外?」
「そう、例外だ。今までたった一度だけ、その4種以外の印を持っている均衡師がいた。それも今から2000年も前の話だ。今ではおそらくほとんどの人がそれについて知らない。私はたまたま友人がそういったものに詳しくてね。その印の名は『全能印』。4つすべての印の能力を併せ持つ、この世で唯一最強の印であり、取り扱いが非常に難しい代物だ。」
「それは・・・すごいのか?」
「すごいなんてものじゃない。異常だ。そして、それは1つの悲しい事実を物語っているということでもある。」
「悲しい事実?」
「最も強い証、全能印の所持者が現れたと言うことは、今後世界は混沌に向かって突き進むということだ。」
「どういう意味だ?」
「印とは、世間一般的に、人間が絶滅しないよう、災獣に勝てる力を神から与えられた証とされている。そして、その理論が正しければ、全能印が現れたと言うことは、その力が必要になるほどに災獣の力が強くなっていくということの証でもあるという事だ。前に全能印の所持者が現れた今から2000年前、一体何が起こったのか、詳細な記録はほとんど残されていないから私もよく知らない。それでも、それがただ良いだけのものではないだろうという予想はつく。だから今回私は君の師匠になることを了承したのだ。おそらくこの先、君が戦えなければこの世界は滅亡の一途をたどることになる。そのためには力について教える人が必要だ。」
華原の言う憶測が本当に正しいのかは黒羽にはよく分からなかった。それでも、自身の体に表れた印が本当にそんな代物であるなら、自分が強くなるべきであると理解した。
黒羽は、自身の過去のトラウマからか、少々自己犠牲の嫌いがある。責任感が強く、人を救うことに対する執着も人一倍強い。だからこそ彼は全能印に選ばれたのかもしれなかった。
「そろそろ馬宿が見えてきたな。一度休憩だ。」
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