第十七話『荷物置き場』
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部屋に戻ると、黒羽のルームメイトたちは自分の時間を過ごし始めた。特別黒羽に気を使って話しかけるといったこともなく、翼抄は筋トレをし始め、旺律は読書、猫峯はそんな旺律にくっついて幸せそうにしている。
一方黒羽には一つだけ確認ができていないことがある。そう、荷物の置き場所についてだ。黒羽の荷物は、最初猫峯に言われた通り、床に置き去りなのだ。翼抄が来てからどこに置くべきか聞こうと思ったもの、結局今の今までその場に放置だった。
黒羽は、筋トレ中に声をかけるのも申し訳ないとは思ったが、その場に置いておいても邪魔なだけなので、思い切って聞くことに。
「あの、翼抄さん。」
「フンッ…フンッ…——なんだ?——フンッ…フンッ…——」
翼抄は腕立てふせをしたまま黒羽の話を聞く。
「持ってきた荷物をどこにおいておけばいいかと思いまして…。」
「—フンッ…なんだ…——フンッ――そんなことか…—フンッ…——旺律!——フンッ…俺は今手が離せないから―…フンッ――…荷物置き場の場所…——フンッ…——教えてあげてくれ…!——フンッ…」
「わかったよ。」
旺律は翼抄の指示を受けて静かに本を閉じると、黒羽を見て場所の説明をしてくれる。
「ここの部屋を出て、廊下に二つ扉があったでしょ?」
「はい。」
「その手前側の扉に入ると、部屋用の風呂の脱衣所になってて、そこに洗濯機と洗面台とかもあるんだけど、入ってすぐ右手側に、鉄でできた大きめの棚があるんだ。そこに私たちの荷物も置かれているから、そのあたりに置いておいたらいいよ。」
「わかりました。」
黒羽の反応を見て、旺律はまた読書に戻ってしまった。自ら動いて案内する気は毛頭ないらしい。黒羽的には、それで荷物を置く場所もわかったため、特に問題はなかったが。
言われたところに荷物を置くと、黒羽は部屋に戻り、何をしようか考える。寝るまでにはまだ一時間ほど時間がある。一瞬、翼抄のように体を動かそうとも思ったが、風呂に入った後に汗をかくのは気が引けた。そこで、早めに寝て朝早く起き、早朝に朱雀塔の周りでも走ろうか、という考えに至る。
それから、黒羽は再び翼抄に、今度は「朱雀塔が出入り自由かどうか。」ということを聞いた。そして残念ながら答えは否。朱雀塔の均衡師が全寮制なのは、いつ緊急事態が起こっても対応できるようにするためであり、不要な外出はしてはいけないとのことだ。
それから、朝運動がしたい旨を話すと、翼抄は、地下二階と三階にトレーニングルームがあることを教えてくれた。トレーニングルームは特に決まった使用時間や使用申請が必要ではないため、いつでも使っていいそうだ。
黒羽は翌日の早朝にトレーニングルームに行くため、少し早いが寝ることに。洗面台には、一つだけ開いていない歯ブラシがあり、それが自分の物だとすぐにわかった。歯を磨きうがいをしてから、共同スペースへ戻ると、一つだけ全く使われていなさそうな、右端のベッドにさっそく潜り込んだ。それについて特にリームメイトから文句を言われることもなく、いろいろあって疲れていた黒羽は、早々に就寝した。
―――――――――――――
「…で、翼抄。今日部屋に戻ってくるのが遅かったのは副隊長と話していたからでしょう?何かあったの?」
黒羽が就寝したのを確認し、旺律は再び静かに本を閉じると翼抄に質問をする。
「いや、まだわからない。副隊長も、白翔については計りかねている段階のようだ。」
「なるほどね。私たち目線からすると、確かにまだよくわからないけど、悪い人ではなさそうだよね。」
「あぁ。俺もそう思う。これで逆にアイツが極悪人だったらそれこそびっくりする。最近玄武のことがあって、あの人も気が立っているんだと思うよ。」
「確かにそうだよね。それに白翔くん、この組織のこと本当になにも知らなそうだもんね。とはいえ私たちが受ける依頼が玄武に筒抜けなのも確かだ。」
「副隊長は隊長を怪しんでおられた。」
「…もし仮にそうだったとしても、それにしては情報が出回るのが速すぎる。隊員側や朱色軍にも何人か内通者がいそうな動きだよ。」
「もしかしたら今後、副隊長が疑っていることを利用して白翔が濡れ衣を着せられるかもしれない。」
「うん。まだ白と決まったわけではないけど、この件とは全く関係ない可能性の方が今のところは高いしね。それよりも他の隊員をしっかり調べた方がよさそう。」
「あぁ、そうだな。」
その日行われた話し合いを、黒羽は知る由もない。
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