第十話『ありがとうございました』
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「そうだ、俺からも皆さんに渡したいものがあるんです。」
食事後、黒羽はそういうとプレゼントが入った大きな袋をもって席を立つ。パーティの準備はしても、まさか黒羽がプレゼントを用意しているとは思わず、師匠たちは驚愕する。
黒羽は、座っている師匠たち一人一人のもとへいき、プレゼントを手渡ししていく。
「葉港さん。葉港さんには眼鏡のアクセサリーを。あまりアクセサリーをつけるイメージはなかったので、気に入っていただけるかは心配ですが。」
「心配だなんて。とてもうれしいわ。」
葉港はいつも通り表情筋は少しも動いていなかったが、心なしか嬉しそうにそう返事をした。
「陸さんには、ミサンガを。色味が陸さんの髪色にそっくりだったのと、比較的使いやすいかなと思って。」
「ありがとう!アクセサリーは使わないけどこれなら使えそうだよ!」
陸は「わかってんじゃん!」といわんばかりにウインクをして黒羽を見た。
「壮隆さん、壮隆さんには眼帯を。今使っているものが大切なもので外したくない、とかなら全然いいんですけど!今の物と形が似た、金の装飾がきれいなものが売っていったので…」
「ちょうどそろそろ買い換えようと思っていたところだったんだ。とてもうれしいよ。ありがとう。」
壮隆はとても嬉しそうにほほ笑み、丁寧にプレゼントを受け取る。
「軍嶺さんには、このイヤーカフを。赤い色味が軍嶺さんの髪色ととても合うと思ったので。」
「おう!ありがとな!——司漣!ちょっとこれつけてくれ!」
待ってましたと言わんばかりの反応をした軍嶺は、さっそく隣に座っている司漣にアクセサリーをつけてもらっていた。それが終わってから黒羽は司漣に声をかける。
「司漣さん、司漣さんにはシルバーのネックレスを。前々から似合うと思っていたんです。」
「わぁ!ありがとう!アクセサリーなんてとても久しぶり!出かける時に使わせてもらうね!」
司漣はアクセサリーをとても気に入ったようで、手で持って眺めている。黒羽はその様子を見ながら気を引き締める。最後に彼がプレゼントを上げる相手は、彼が今の彼である理由を作ってくれた人だ。他の師匠たちに感謝していないわけではないが、やはり少し緊張する。
「華原さん、華原さんには赤いスタッドピアスを。普段金のフープピアスをしているので、たまには形が違うものをと思って。」
「ありがとう!」
華原はそういうと勢いよく立ち上がり黒羽を抱きしめた。彼女は、既に自分より背が高くなってしまった青年の成長を肌で感じた。
「今まで私の厳しい訓練を頑張り続けてくれてありがとう。私も今の指導があっているかなんてわからなかったけど、立派に成長してくれて本当にうれしいよ。あの時、私に声をかけてくれてありがとう。」
華原は静かに涙を流しながら思いを告げた。黒羽も目を潤ませながら抱きしめ返す。
「俺も、あなたと出会えて本当に良かったです。あなたがいたから今ここで皆さんと一緒に強くなることができたんです。あなたがいたから今の俺があります。あの時、俺を受け入れてくれて本当にありがとうございました。」
しばらくそうして抱きしめあっていると、その上からほかの師匠たちも抱きしめて思いを告げてくれた。
「私の授業をしっかりと聞いてくれてありがとう。私は自分の好きな事ばかり語ってしまう癖があるけど、その話にもしっかりと耳を傾けてくれてうれしかったわ。その優しさがあれば、この先どこでもやっていけるはずよ。」
「シロちゃんの潜在能力にはめっちゃ驚かされたけど、それ以上にめちゃめちゃ努力家で、頑張ってるのをちゃんと見てきたよ!どんどんシロちゃんとの戦いが楽しくなっていくのがうれしかったし面白かった!また一緒に訓練しよ!」
「俺は口下手で、あまり指導がうまかった自信はない。それでも、お前が頑張ってくれて、俺の自信にもつながったんだ。教えることの楽しさを思い出せた。ありがとう。」
「白翔は潜在能力がピカイチで、最初俺らの教えなんていらないかと思ったぜ。でも、悩んだときに俺たちに相談してくれて、弱いところを見せてくれて、少し親近感を覚えたというか。これからも頼りたいときに好きなように人を頼れ!お前は一人じゃないからな。」
「僕は下手に人よりできてしまうことの辛さを多少は感じて生きてきたから、もし今後君がそういった類の辛さや苦しさを感じたらいつでも相談しにおいで。君と過ごした時間は本当に楽しかったし、今後も楽しく生きていってほしいからね。」
それぞれの師匠からの言葉に黒羽の涙腺は崩壊する。
「皆さんがいてくれたおかげで俺は強くなれたんです。葉港さんがいたから丁寧な言葉遣いや、均衡師のこと、補術印の使い方を学べました。陸さんと荘隆さんがいたから、体術の基本や対人戦、敵を見ることをしっかりと体に叩き込めました。軍嶺さんと司漣さんがいたから苦しい時に俺が折れることなく、俺が目標としたいところを知ることができました。これから俺はここを出て新しい環境に行くけど、いろいろ全部終わったら、またここへ戻ってきたいと思います。」
名残惜しくもみんなと過ごす時間はすぐに終わるを迎えてしまう。その日夜中まで盛大に最後の夜を過ごし、悔いが残らないようにさんざん話しつくした。
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翌日の夕方、予定通りに烈焔寮の扉がノックされた。
「白翔くんのお迎えに上がりました。」
扉を開ければ立っていたのは無論、紅色隊隊長の紅劉だ。黒羽は、夕方に来ることがわかっていたので、既に荷物の入った少し大きめのバッグをもって入り口で待機していた。
「もう準備はお済ですか?」
「はい。済んでいます。」
「では早速まいりましょうか。」
生憎、師匠たちは今日は仕事で出払ってしまっている。誰も送り出してはくれない状況が少し寂しくはあった。それでも、黒羽が新しい生活に胸を躍らせたのは確かだ。
読んでいただきありがとうございます!
さっそく次回から本格的に朱雀塔での生活が始まる予感…
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