第四話『遭遇』
本日一話目の更新です!
災獣は、教会に侵入してすぐ無造作に攻撃を始めた。体から縄のような長い触手を複数本伸ばして振り回す。教会の壁や柱は壊され、天井にも攻撃が当たる。
「なぜ!どうして!」
神父は何かわめいているが、黒羽にはそれを聞いている余裕など無く、上から降ってくる瓦礫から身を守る。
しばらく災獣の攻撃が続き、身動きがとれない時間が続く。そんな中黒羽の頭の中は子供たちのことでいっぱいだった。教会内には、おおよそ20人ほどの子供たちがいたはずである。目の前で誰かが傷つく姿を見るのはもう嫌だった。
(早く、早く…!!)
攻撃が早くやんでほしい、早く周りの様子を見たい、子供たちの無事を確認したい。
攻撃がやんですぐ、黒羽は体を起こして周りを見渡した。そして間もなく絶望した。教会の真ん中にいた黒羽とは異なり、壁側で息を殺していた子供たちは、その多くが崩れた壁の下敷きになっていた。瓦礫の下から血がにじみ、子供たちの手足がのぞいていた。もしかしたら、もう息はないかもしれなかった。それでも、誰も失いたくなくて、大量の子供の死を信じたくなくて、黒羽は災獣がいることも忘れて、目についた子供の上の瓦礫をどかそうと奮闘した。しかし、瓦礫は一人の非力な少年が一人でどうにか出来るような重さではない。何かを思い出したように涙をこらえながら、黒羽は必死に瓦礫を動かそうとする。
しかし、災獣はそんな黒羽の心情など慮ってくれるはずもない。黒羽は混乱でそんな災獣の動きに気づけなかった。そして、気づいたときには新たな瓦礫が自分に降りかかってきていた。
黒羽は死を覚悟して目をつぶる。せっかく餐央から抜け出してきたのにもうここまでかと後悔が襲った。せっかく目的のために抜け出してきたのに、これでは意味が無い。もっと別の日にすれば良かったのでは、そもそも村など寄らず炎耀国を目指すべきだったのではないかと。
しかし、どれだけ経っても想像していた衝撃は黒羽の元には訪れなかった。
恐る恐る目を開けた彼の前には、鉈を持った金髪の女性が立っていた。
「無事か、少年。」
笑顔で自分にそう声をかける女性が、そのとき黒羽にはヒーローに見えた。女性はすぐに災獣の方に向き直る。
「遠距離攻撃型の災獣か。さっさと片をつけないと。」
そこからの女性の動きはすさまじかった。無造作に動く複数の触手の攻撃を素早い動きでかわしていく。災獣は触手以外に攻撃方法を持っておらず、近づいてきた女性に狙いを定めて攻撃することはできていない。複数の触手を切っては数を減らしていき、ものすごい早さで災獣に近づくと、本体を真っ二つに切り裂いた。その後すぐに黒羽の元に走ってくると、声をかける。
「少年動けるか?できれば少し手伝ってほしい。瓦礫の下敷きになった子たちの安否を確認したいんだ。」
黒羽は素早く立ち上がると、女性の指示通り、女性がどかした瓦礫の下の子供たちの様子を確認する。大半は頭や体が潰され、原型をとどめていなかった。黒羽はその様子に嘔吐しながらも、少しでも助かっている子がいることを願って女性について回る。
「!!ねぇ!動ける?!」
結果として無事だった子供は、黒羽を除いてたった一人だけだった。ちなみに神父も瓦礫に潰され命はなかった。
無事だった子は8歳ぐらいの女の子だ。片足が潰されていたが、命に別状はなさそうだった。女性はその子を抱えて教会を後にする。黒羽も急いで彼女の後ろについて行く。村では教会の騒ぎがすでに広がっていて、噴水の周りに村人たちが集まっていた。多くの大人が手に武器を持ち、村の子供たちを背にしていた。彼らは女性が教会から歩いてくるのを見て静かに武器を下ろした。
「災獣は倒したのですか?」
「ええ。しかし、神父とその他多くの子供は救うことが出来ませんでした。無事だったのは、この少女と、私の隣の少年だけです。力及ばず申し訳ありません。」
女性はそう告げると頭を深く下げた。彼女は村が災獣の対処の依頼をした女性だという。その後、助かった少女は潰れた足を正しく処置した上で、子供に恵まれなかった村の夫婦が迎え入れることになったようだ。
黒羽は、今回の事件で改めて自分の力のなさを痛感することとなった。どれだけ人の死が怖くとも、今のままでは今後同じようなことが起こったときにどうすることも出来ない。
話が済んで村人たちが解散の雰囲気になったとき、女性が黒羽に声をかける。
「少年、君はこれからどうするのかな?村の人たちの話ではどこか向かうのに途中でここに寄っただけらしいじゃないか。」
黒羽は少し考える。今後またこのようなことが起こったとき、今のままでは目標を達成するどころの話ではない。
「なぁ、俺に戦いを教えちゃくれないか。」
読んでいただきありがとうございます!
「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけたら
高評価やブックマークをしてくださると励みになります!
本日もう一話投稿します!




