第四十三話『華原の成しえた事』
本日二話目の投稿です!
銭湯は、比較的村の入り口に近いところにあって、梗曰宅からは少し歩いた。銭湯は想像していたよりも大きくない。中に入ると、すぐに靴入れがあり、番台の前に借りられるタオルがおいてある。
「出たらこの番台前で待ち合わせでいいかしら?」
「それでいいね、白翔くん。」
「はい、俺も大丈夫です。」
銭湯のシステムは、烈焔寮の浴場とあまり変わらなそうだ。ただ、脱衣所にはすでに人も多く、彼らは見慣れない青年—黒羽—に興味津々だ。みんなわらわらと集まってくる。
「あんたみねぇ顔だな?」
「村長といっしょじゃねぇか!村長の息子か?!」
そんな風な村人たちに少し委縮してしまう黒羽を見かねて、梗曰が割って入る。
「彼は華原さんのお弟子さんだよ。今日からしばらくの間うちで面倒を見ることになったんだ。仲良くしてあげておくれ。」
梗曰の言葉に、今度は興奮した様子で話しかけて来る村の人たち。服を脱ぎながら適当に相手をしていたが、風呂場に入るともっとたくさんの人に声を掛けられる羽目になってしまった。
「あんたあの華原さんの弟子なんだろ!?」
「どうやって弟子にしてもらったんだ!?」
「華原さんの弟子ってことはお前も強いのか!?」
「華原さんってやっぱりオッパイでかいのか!?」
そんな質問をかわしながら体を洗い、梗曰と共に湯船につかる。
「どうあれこの村に来てくれたんなら歓迎しねぇとな!」
「あんた名前はなんていうんだ?」
「白翔…です。」
「そうか!白翔か!」
「うちにあんたと年の近いのもいるから、仲良くしてやってくれよ!」
そんなこんなで、勝手に村の人たちと親睦を深められた黒羽は、梗曰たちと共に銭湯を後にした。
「とてもフレンドリーな方が多いんですね。」
「そうだね、とても小さい村だから、村人同士がみんな顔見知りなんだよ。そして、村の誰かが大事にしている人は、村総出で大事にしようとするんだ。ごめんね、あれでも気のいい子たちなんだよ。」
「それは…話していてわかったというか…、悪意は全く感じなかったので、俺が見慣れない人間だったから興味があったんでしょうね。」
「うん、それもあると思うけど、やっぱり華原さんのお弟子さんだからね。」
「…華原さんって、この村にとってどういう存在なんですか?何をしたのかもよくわからなくて。」
「うん、そうだね、彼女は私たちの生命線を救ってくれた恩人なんだよ。」
「生命線、ですか?」
「そうよ。私たちの村は鹿繊という植物から作られる消毒液が名産なの。」
「それは…昼頃に伺いました。」
「そうなのね。」
「鹿繊は、この辺では君が今日災獣の討伐に行ったあの森でしか取れない植物なんだ。私たちの村ではあの消毒液を主な資源としていてね。その日、災獣の影響でその植物が全部だめになってしまう所だったんだよ。」
「ちょうど特に強い災獣だったようでね。その時依頼を受けてくださったのが華原さんだったのよ。」
「彼女は災獣を倒すだけでなく、鹿繊の周りに衡力が付与された柵を立ててくださってね。」
「今でも討伐依頼があると、ついでに柵を確認してきてくださるのよ。」
そういえば今日も、昼食の後、「ひとつ確認したいことがあるから少し待ってて。」と華原が森に戻っていったことを思い出す。
「そういうことだったんですね。」
「そう。だから、村の人たちはみんな彼女に恩を感じているわ。」
「白翔くんにも、期待しているからね。」
自分の偉大な師匠の顔に泥を塗らないためにも、より一層努力をしようと、黒羽は心に決めたのだった。
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