第四十二話『奥さん』
本日一話目の投稿です!
華原たち二人は村長宅を後にし、昼食を食べてしばらく村を散策した後、解散する運びとなった。
「多分明日は葉港が付き添いで来ると思う。いいか、大丈夫だとは思うが、村の人たちに迷惑をかけないようにね。手伝えることがあれば進んで手伝うんだよ?」
「はい。」
「心配せんでも大丈夫さぁ!」
「俺たちもおるでな!」
村の入り口で華原を見送るとき、そばに門番の人たちもついていてくれ、心強い声掛けをしてくれる。彼女と出会ってから、黒羽は彼女と顔を合わせない日はなかった。一年半も一緒に生活をしていた場所から半年離れるのは少し寂しかった。
「じゃぁ、また来週来るから。」
「はい。」
華原が去っていく後ろ姿を見て、少し鼻の奥がつんとしたのは、黒羽だけの秘密である。
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黒羽は華原と別れた後、自分が寝泊まりする村長——梗曰宅に戻る。村の人たちと親睦を深めようにも、今まで自分から人に声をかけたことなんてみじんもなかったからどうすればいいかわからない。
扉をノックすると、梗曰が出て来る。
「見送りは終わったかい?」
「はい。」
「そうかい。そうだ、これから半年間私の家で生活するのだし、緊張しすぎずでいいからね。私の奥さんがもう夕飯の準備を終えてダイニングで待っているよ。さぁ、中に入りなさい。」
「はい。ありがとうございます。」
黒羽の梗曰宅での部屋は二階だ。きれいに片づけられた、木目がきれいに見える部屋は、広すぎず狭すぎず、ちょうどいい広さで、黒羽は一目で気に入った。すでに荷物は華原が部屋に置いておいてくれているので、黒羽はそのまま梗曰とダイニングに向かう。
ダイニングには、梗曰と同じ年ぐらいの、きれいなおばあ様がいた。
「あら、おかえりなさい。あなたが華原さんのお弟子さんの白翔さんね。どうぞお座りになって。若い子にご飯をふるまうなんて久しぶりだからつい張り切ってしまったわ。」
ふふふ、と上品に笑う彼女の前のテーブルには、きれいに盛り付けられたサラダや鳥の照り焼きなど、かなりの料理が並べられていた。
「初めまして、白翔と申します。半年間、お世話になります。」
「いいのよぉそんなに堅苦しくしなくて。白翔さんのおかげで半年は災獣退治の依頼を出さなくていいと聞いたわ。ゆっくりして行ってちょうだいね。」
それから、三人で話をしながら食事をする。どうして均衡師になりたいと思ったのか、華原とはどこで出会ったのか、億樂はどんな場所か、など様々なことを聞かれる。梗曰の奥さんの名前は『泉祁』というらしい。
「そういえば、白翔さんは巾着だけは外さないようだけど、何が入っているのか聞いてもいいかしら。」
「この中には、母の形見が入っているんです。必ずあなたの役に立つから、と渡されたもので。」
「あら、そうだったのね。つらいことを聞いてしまったかしら。」
「いえ…かなり…前のことですから。」
黒羽は、気にしていないよという風にほほ笑む。嘘だ。いまだに脳裏に母の死に際がこびりついて離れない。でも黒羽は自身の過去を、誰にも話すつもりはない。
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「御馳走様でした。とてもおいしかったです。」
「まさか…この量をすべて平らげるとは…。」
目の前にあったたくさんに料理は、たいていが黒羽の胃袋に消えてしまって、もう何も残っていない。
「さて、ならこれから風呂に行こうか。」
「風呂、ですか?」
「うん。」
梗曰の話によると、この村は自宅に風呂がある家は非常に珍しく、基本は村の銭湯に行って体を洗うらしい。
「この家にも風呂はないからね。タオルは銭湯で借りられるから、脱いだものを入れる袋と、着替えをもって玄関前で集合しよう。」
「わかりました。」
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