第四十話『初討伐』
本日一話目の更新です!
もう少しで修行編完結します!
「ならそのまま、鎖を手に巻き付けてみろ。」
「はい。」
黒羽は華原の指示通り、手を軽く開いた状態で、鎖を手に、肌が見えなくなるまで巻き付ける。
「それで攻撃できそうか?」
その質問に、試し打ちをしてみる黒羽。まだ感覚に慣れておらず、素手と比べれば幾分かやりにくさはあるが、それ以外は特に問題はなさそうだ。
「大丈夫そうです。」
「OK。それならさっきの災獣のもとまで戻ろう。今度は君が戦闘で災獣のもとに向かうんだ。私は霧の中が見えるぎりぎりの距離から君の様子を観察しておく。指導はその都度しよう。」
「わかりました。」
二人は、今度は黒羽を先頭にして、先ほどの災獣のもとまで向かう。さっきはまだ災獣の姿をしっかりと目視していなかったため、どういう系統の災獣かはまだ分かっていない。
特に濃い霧が見えてくると、二人は腰を落として静かに近づく。災獣は音にはそこまで敏感ではないが、目が非常にいいのが特徴だ。災獣の目にはいる可能性を少しでも下げるために身体を低く保つ。
だんだんと姿が見えてきたところで、華原は足を止める。黒羽は一瞬足を止め、不安そうに華原を見つめるが、華原の力強いうなづきに、覚悟を決めて足を進める。
今回の個体は黒羽が初めて技をかわした、浮遊型の小型の災獣だ。災獣は、黒羽が半径五メートルあたりまで来たところでその存在に気づき、勢いよく方向転換すると、ものすごい速度で黒羽に向かってくる。
「うわっ!」
黒羽はその攻撃を危機一髪のところで避ける。羽を動かして飛んでいるのか、災獣が黒羽の横を通過した際『ブーン』という羽音が聞こえた。
「相手をよく見ろ!!隙を探すんだ!!」
華原の指示が飛ぶ。黒羽は改めて災獣を見つめなおす。外観はどことなく蠅に似ている様に見える。ヤツは、一度攻撃を避けられても何度も向ってくる。黒羽は落ち着いてそれを観察する。できるだけ近くで避け、極力相手から目を離さないように。
――シュッ――
最小限の動きで避ける黒羽の頬に、切り傷が浮かぶ。それでも、彼は相手から目を離さないことを大切にする。華原ははらはらしつつ、静かに見守っていた。
そんな攻防が始まっておよそ一時間。黒羽はまだ相手の隙を伺い、攻撃が出せずにいる。いかんせん相手の動きが速く、見失うこともしばしばあるのだ。華原はしびれを切らして再び助言を入れる。
「しっかりと敵を観察しろ!相手が背を向けたタイミングが一番の隙だぞ!」
黒羽にもそれはわかっていた。しかし、相手が向き直るまでに攻撃を与えられるほどの早さを彼はもちあわせていなかった。
「そのままの速さで弱点をつけないなら、少しづつ攻撃を与えて弱らせるんだ!攻撃を仕掛けてきた時、どこが無防備になるかよく見ろ!」
その指示に、黒羽は特に相手が攻撃するときを着目する。何度か攻撃をかわしていくと、災獣が必ず片側の足でしか攻撃してこないことがわかる。自分の左側を狙って飛んでくるときは左足、右側を狙ってくるときは右足。
黒羽は今まで、攻撃を避けやすい方向で避けるのが鉄則だと思っていた。しかし、今回の場合、自分が避ける方向は、ちょうど災獣が自分に攻撃をしようとしていた方向と一致する。ということは、少し難しい手ではあるが、それとは反対側に避けて、災獣の腹部に攻撃を入れればいい。
黒羽は、何度も災獣の動きを見て、動き始めのタイミングを予測する。そして、攻撃をかわしながら何度もシミュレーションした。
そして、いざその時がやってくる。今度災獣は、黒羽の左頬めがけて飛んでくる。なので、黒羽は
右側ではなく、左側に避け、災獣のがらあきの右腹部に自身の拳をうちこむ。ぐにゃりとした嫌な感覚がしたのと同時に、災獣は霧となって消えた。
ここまでの時間、およそ二時間。
「よく頑張ったな、白翔。」
「はい。」
「初めてにしては上出来だ。やってみてどうだった?」
「今まで対人戦しかしたことがなかったので、弱点を見つけるのが大変でした。特に、災獣は明確に形を持たず、どこかボヤッとして見えるので、なおさら。」
「そうだな。身をもって分かったと思うが、災獣との戦闘は、経験がものをいう部分が多い。特に、災獣に多く見られる『浮遊型』『触手型』『銃弾型』『近接型』は、経験からどこが弱点なのか割り出しやすかったりする。――さて、今日は村の人たちとも親睦を深めておきたいだろうから、村に戻ってご飯にしよう。依頼はこれで達成だしな。」
「え?一体だけの依頼だったんですか?」
「あぁ。今回はそうだったようだ。」
「でもまだたくさんいそうな気配しましたよ?」
「そうだね。まぁ確かに依頼はこれ以上出ていないが、明日以降も君が討伐に赴くのだから問題はない。」
「…まぁ、そうですね。」
「では戻ろう。」
こうして二人は森を後にした。
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