第三十九話『侵術印』
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「では、我々はさっそく災獣討伐に向かうとしよう。」
話が済み、華原は黒羽にそう声をかける。
「森はここから、走って一時間ほどでつくだろう。お前の泊まるための荷物はもう村に預けたし、準備はいいな。」
「はい。」
「ではいこう。」
二人は、そう言葉を交わし、森へ向かって走り出す。走るスピードは村へ向かったときとあまり変わらない。そのまま、休むこともなく一時間ほど走り続け、森の入口へたどり着いた。
「いつ来ても禍々しい雰囲気の場所ですね。」
「災獣がいる場所独特の雰囲気だな。――だて白翔、この世界には、災獣が出現しやすい場所がいくつか存在するが、あたりが薄暗い場所が多い。ここも含めてな。なぜだかわかる?」
「うーん…災獣が薄暗いところを好むから、とかですか?」
「んん、半部正解といったところか。答えは、出現が人間にばれないようにするためだ。」
「…どういうことです?」
「災獣は、総じて人間を敵とみなしていると考えられている。だから人間を襲う。ただ、このように人間を襲う前に人間に見つかってしまえば、弱い人間を襲う前に、強い人間に討伐されてしまう。より多くの人間を滅するために、こういった人目に付きにくい、深い森の中で出現することが多いとされているんだ。だからまぁ、災獣が薄暗いところが好きというのも、あながち間違いではないな。」
「確かに、これだけ広いと、すべての災獣を見つけ出すのには骨が折れそうですもんね。」
――――――――――――――――――
「では、さっそく中に入ろう。」
黒羽は華原に続き、森の中に足を踏み入れる。森の雰囲気は、いかにも災獣が発生しているだろう禍々しさが感じられる。軍嶺立ちと遠征に行った森ほど淀んではいないものの、気持ちの悪い空気間だ。
「さて、まず災獣を探すところから始めよう。」
「はい。」
「災獣の見つけ方はいたって簡単だ。この森の中の空気、外よりもだいぶ濁っているのがわかるな?」
「はい。」
「この濁りの原因は、災獣の体にある。災獣は、身体からあたりを汚染する霧を発生させる。常にだ。だから、この汚染された空気の根本、より汚染が強い場所に向かって進めばいい。この黒い霧がだんだん濃くなっている方向へ進むぞ。」
「わかりました。」
黒羽は、華原が進む方向へそのままついていく。あたりを見渡すと、どんどん霧が濃くなっていることがわかる。
「ほら、あの奥が見えるか。あの霧の塊だ。」
「はい、見えます。」
「あの中心が災獣だ。霧の濃さは、災獣の強さに比例するが…あれは結構強いな。災獣がどこにいるかあらかた見当がついたら、姿勢を低くして災獣のもとまで向かうんだ。」
「なるほど。なら、俺が華原さんと出会ったときの災獣はそんなに強くなかったってことですか?あまり禍々しさを感じることができなかったというか…」
「うーむ、また確かにあいつはそこまで強い災獣ではなかった。ただ、あの時はまだ君が均衡師としての力をほとんど持ち合わせていなかったから何とも言えない。この霧は、衡力と対になる力なんだ。だから、衡力の練度次第で見え方が異なる。練度がゼロの場合は基本霧は見えないんだ。」
「なるほど、そういうことでしたか。」
「…そうだな、今日は一度先ほどの所まで戻って、衡具の使い方を確認してから、君に討伐をしてもらおう。今回の目的の災獣はあいつで間違いないようだしね。」
「わかりました。」
二人は一度、森の外まで戻る。
「さて、ではまず衡具を出現させてくれ。」
「わかりました。」
黒羽は素直に衡具を出現させる。
「これから私が教えるのはあくまでも侵術印の使い方だ。この後ほかの印での戦い方も学ぶだろうから、その時々によってうまく使い分けられるようにしてくれ。」
「わかりました。」
「まず、そもそも鎖というのは、侵術印とはあまり相性が良くない形なんだ。遠距離攻撃や守りとしては優秀だが、速さと接近戦を武器にする侵術印の方法で使うのはあまり相性が良くない。その鎖をぶん回すには、侵術印は向いていないんだ。」
「ではどうすれば…」
「だから考えたんだが、君、今陸たちに体術を学んでいるよね?」
「?はい。」
「だから、対人戦での殴り合いは比較的慣れているよね?」
「まぁ…はい。」
「だから、拳にその鎖を巻き付けるのはどうかと思って。」
「巻き付ける?」
「そう。普段接近戦をするのに攻撃を与える手の形に合わせて、鎖を巻き付けるんだ。」
「…しかし、俺は今鞭のように鎖を持っている状態です。それを合わせるっていうのは…」
「考え方を変えるんだ白翔。私たちが今使っているのは衡具であり、実際にある武器ではない。だから、陸がつかっているフォークのように、必ずしも手で握らなければならないわけではない。むしろ、使うのが鎖であるなら、なおさらその考えは持たないほうがいい。一度手を放してみろ。そもそも衡具を手で支えているわけではない。」
黒羽は華原の指示通り、衡具から手を放してみる。すると、彼女の言ったとおり、鎖の持ちてはその場に浮いた。
「本当だ…」
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