第三十八話『村』
本日三話目の投稿です!
村は一年半前と全く変わらない様子で、黒羽は少し懐かしくなる。村の入り口には警備の人が立っていて、前回と同じ顔触れだ。門番の二人は、華原たちが近づいてくるとすぐに誰か気が付いたようで、嬉しそうに寄ってくる。
「華原さんでねぇか!」
「おぉ!あんときの坊主も一緒か!でかくなったなぁ!」
「今日は何用でここに来たんだ?」
とても楽しそうに話しかけてきた二人に華原は村を訪ねた理由を簡潔に述べた。
「そうかぁ!また退治しに来てくれたんか!」
「村長呼んでくるでな、ちょっと待ってろ!」
ここの村の人たちは、みんな華原に恩を感じている人ばかりだからか、華原と長く話したがる人が多い。しかしここはさすが門番といったところか、目的がわかれば自分たちの話をすっ飛ばして村長を呼びに行った。
村長は案外すぐに出てきた。
「華原さんご無沙汰しております。この度はまたまたこの村の依頼を受けて下さりありがとうございます。」
「こちらこそ。この村の依頼は修行にちょうど向いている物ばかりでいつも助かっております。今回は、うちの弟子が認定証をもらってきたので、弟子の修行として使わせていただく予定ですが、問題ありませんか?」
「もちろんですとも!依頼を受けてくださるのであれば、どのような形で討伐していただいてもかまいません。依頼料はこれ以上引き上げられないですが、災獣は山ほど湧いて出て来るので、好きなだけ狩ってやってください。」
「お気遣い感謝いたします。」
「今日はこの村で宿泊予定で?」
「いえ、私は宿泊の予定はありません。ただ、うちの弟子をできれば早く一人前にしてあげたいので、これから半年ほど、うちの弟子をここにおいてはもらえませんか?」
「は!?」
「私共はかまいませんが…。」
始めて聞いた計画に、黒羽は素っ頓狂な声を上げて華原を見る。その様子に村長は少し困惑したようだ。
「少し席を外しても?」
華原は村長にそう告げ、黒羽の首根っこを引っ張って少し離れたところで内緒話を始める。
「この計画は前から考えていて、今日実際に確認をとってOKだったらそうしようと思っていたのだ。」
「聞いてないですよ!俺何日もここで過ごす準備も何もしてませんし。」
「万が一断られたらと思ってずっと話してなかったんだ。それと、君の着替えだけど、ちゃんとここに入れてきたから。」
「なんか荷物たくさん持ってるなと思ったら!」
「まぁだから、これから半年間頑張れよ。」
「…はぁ、今更です。」
ここで拒否したところでその願いはかなわないのだからと、黒羽は腹をくくる。
「半年間、よろしくお願いします。」
「わかりました。こき使うかもしれませんが、よろしくお願いします。滞在場所は、ちょうど私の息子がもともと使っていた部屋があるのでそこでお願いします。」
「急なお話を引き受けて下さり感謝します。」
「とんでもございません!華原様の大切なお弟子様ですので、大切に預からせていただきます。」
「その代わりといっては何ですが、これから半年間、うちの者が毎日この村に通い、うちの弟子と共に森の災獣退治に赴くようにします。なので、半年間は依頼を出さなくて大丈夫です。」
「おぉ!それはありがたいです。最近災獣が増えてきているからか、協会から依頼料の引き上げをせっつかれて困っていたんです。」
「ただ、弟子はお金を一銭も持っておりませんので、生活については甘えてしまいますが…。」
「依頼を出す必要がないなら、彼の分の生活の保障をしても余るぐらいのはずですから問題ありません。」
「それでは、本日の依頼を受け終って依頼書にサインを頂いたら私は帰りますので。」
「承知いたしました。」
そんなこんなで、なぜか黒羽は、これから半年間、炎耀国のはずれの村でお世話になることが決まったのである。
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