第三話『災獣』
本日二話目の更新です!
――災獣。
それは、遙か昔から人間が戦ってきた魔獣のことを指す。一度は壊滅したと思われたやつらは、今から1000年ほど前から再び姿を現すようになったとされている。また、ここ10年でさらにその数を増やしている。
姿形は固定されているわけではないが、遠距離攻撃型と近距離攻撃型がいる。形はモヤモヤとしたものに見えるが、実態はあり、人間を襲う。
「最近特に光陽国でかなり増えてるって聞くよな。」
「だから、お前さんがどこに行く予定かは知らないが、道中は気をつけろよ。」
黒羽は彼らにお礼を言って、村の中を探索することに。
村の中心部にはあまり大きくない噴水が一つ。北側には小さな教会らしきものも見えた。ここは領土としてはまだ氷霊国内だ。しかし、『氷霊国』のイメージは中央教会が置かれる大都市『餐央』のため、領土内の村々の人々も、こぞって餐央のことを氷霊国と言い表す。
黒羽が餐央を出た時間はあまり早くなかったため、もうあたりはすでに薄暗い。村には宿があるようで、一度そこを訪ねてみることにした。
いち早く目についた赤い扉をした宿に足を踏み入れる。扉を開けると客入りを示す可愛らしい鈴の音が聞こえた。
「いらっしゃいませ。お一人様ですか?」
受付をしていたのはオレンジの髪の少女だ。年は黒羽と幾分も離れていないように見える。
「一人で泊まりたいんだが。」
「お一人様ですね。一泊銀貨1枚になります。」
さて困ったのは黒羽だ。彼は今、宿で金額を聞いて、初めてお金の存在を思い出した。
「あぁ・・・えっと・・・また機会があったときにお邪魔するよ。」
気まずそうに顔をそらしながら少女にそう告げると、それから彼女の顔を一度も見ることなく宿を後にした。
まずい、今金は一銭たりとも持ってない。当たり前だ、彼はずっと牢獄にいたのだ。お金を得る機会など長いこと一度も無かったのである。
黒羽は考える。門番の話では、夜は建物の中に入っている方が安全らしい。最近災獣が村を襲う事件も相次いで起こっているから、村にいても野宿では不安が残るそうだ。
とりあえず、お金がないとどうしようもないので、人の良さそうな門番の元で、ただで寝泊まり出来るところを聞いてみることにした。
「ただで寝泊まり出来るところねぇ。」
「教会ぐらいしか無いんじゃないか?俺はあそこあんま好きじゃねぇけどな。」
「俺も俺も。やっぱ氷霊国にかぶれてるというかな。」
「ただまぁ、一晩泊まる位なら許してくれんだろ。」
教会にもいろいろな噂があるようではあるが、無料でどこかで泊まるとなると、選択肢はそこしかないらしい。まだ死にたくもないので、黒羽は一度教会に確認をしに行くことにする。教会はそこまで大きくなく、どことなく薄暗く見える。
両開きのドアを開けると、そこには5~10歳ぐらいまでの子供がたくさんいた。彼らは監獄にはいないものの、監獄内にいた人たちと同じ目をしているように見える。大体は壁の方に複数人で固まってしゃがんでいる。痩せ細り、清潔感が少しも感じられない服を着ている。
祭壇の前には小綺麗な白い服を身にまとい、眼鏡をかけた男がたたずんでいて、黒羽が教会に入った音に気づき、振り返った。その様子は、監獄にいた教会の人間を想起させるようだった。表情には笑顔が浮かんでいるものの、目は笑っていない。
「おや、お客様ですか?」
「すまない、今日だけここで寝泊まりさせてはもらえないだろうか。恥ずかしい話だが、お金を持っていなくて宿に泊まれなくてな。」
「おや、そうでしたか。」
牧師はゆっくりと近づきながら続ける。
「一晩寝泊まりするぐらいかまいませんよ。我らが神は慈悲深いお方ですからね。・・・あぁ、周りにいるのは気にしないでくださいね。ただのゴミです。」
『ごみ』というのは、壁を背に身を寄せ合っている子供たちのことだろうか。この言葉にも無反応の子供たちの様子から、こういう言葉は普段から浴びせられているのだと安易に察することが出来た。子供たちの扱いが自分の過去と照らし合わせられて、黒羽はかなりの嫌悪感を抱いた。
怒りを覚えた黒羽は、苦言を呈そうと、息を吸う。
――しかして、その先が紡がれることはなかった。なぜなら、教会のステンドグラスが、大きな音を立てて急に割れたからである。そして、そこから侵入してきたのは、まがまがしい気配をまとった真っ黒い影だった。
黒羽は、これがさっき話していた災獣なのだと悟った。
読んでいただきありがとうございます!
「続きが気になる!」「もっと読みたい!」と思っていただけたら
是非ブックマークと高評価お願いいたします!




