第三十二話『レベル差』
本日二話目です!
「空気があんまりよくないですね。」
黒羽は二人に向かってそうつぶやく。というのも、今回依頼のあった場所は、そこまで大きくない森だ。このサイズなら普通はかなり外の光が入って明るいはずだ。にもかかわらず、森の中は、まるで外とは世界が違うと思えるほどに、目でわかるほど黒く濁って見えた。
「まぁ、大体いつもこんなもんだな。」
「僕たちが受けている依頼は大体が指名依頼だからね。強力な災獣が相手であることが多いんだ。」
そうなのだ。本来、どのような依頼であっても基本的に依頼主が指定した目的地に、依頼の確認兼見届け人としているものである。しかし、今回のように、依頼主がその場に居合わせた場合、依頼主に被害が及ぶ可能性が高いと判断された場合は、後日対処がなされているか協会の人間が確認に来ることが多い。
「最近指名依頼も増えてきてなぁ。俺らも有名になってきたってことか?」
「まったく、すぐ調子に乗るんだからお前は。」
軍嶺の言葉にそう反応する司漣は、しかしまんざらでもなさそうである。
少し森の奥に足を踏み入れたその時、
――ズドォォォォォォン!!!!!——
とけたたましく大きな音が聞こえ、地面がわかりやすく揺れた。
「…災獣が暴れてるみたいだね。」
「おそらく遠距離攻撃型の災獣だな。およそ全長五メートルくらいか?森から頭出てるぞたぶ
ん。」
二人はそういうと、すぐさま音の出どころにすさまじい速度で向かう。黒羽は頑張ってそれについていく。
二人が標的のもとにつくのから少し遅れて到着した黒羽。目の前にいたのは、さっき軍嶺が言っていた通りの、全長五メートルほどの、触手を持った災獣だった。師匠二人はすでに連携をとって戦っている。どうやら司漣が囮役、軍嶺が攻撃役を買って出たようだ。そして、黒羽は今、ある一点に目を奪われていた。
(なんだ…あれ。)
彼の視線は一直線に司漣の手元に向かっている。黒羽の見間違いでなければ、彼の両手の爪が鋭く長くなっているのだ。黒羽の知っている衡具は、戦いに使う武器で、まさに軍嶺が使用する片手剣のようなもので、身体の一部に変化が生じるものではない。黒羽の常識にひびが入った瞬間だった。
それにしても、二人の戦いはすさまじいものだった。黒羽でさえ、たまに見失うほどのスピード。攻撃の正確さ。今の黒羽には何一つとして追いつけない、レベルの差を見せつけられる戦いだった。しかし、もっと驚いたのは、その速度、攻撃に災獣がついていけるという現実だった。黒羽は今まで二回ほど災獣と対峙してきたが、それらとは明らかに別物だ。サイズ感も、禍々しさも、速度も、攻撃威力も、すべてにおいて目の前の災獣の方が圧倒的に上回っている。そのくせに遠距離攻撃型の災獣なのだ。つまり、同じレベルの近距離攻撃型であれば、もっと速度が速いということになるのではないか。
(もしかしたら災獣とは、俺が思うよりもずっと危険なものなのかもしれない。)
黒羽は、そう思いながら唾を飲み込んだ。
しばらくして、二人が災獣を倒し戻ってくる。今まで薄暗かったのが噓のように、外の光が入る明るい森になった。
「どうだったぁ~?お兄さんたちかっこよかった?」
「お前が見てたから少々張り切っちまったぜ。」
二人は少しも疲れていなさそうにそんなことを言う。改めて人間離れしている人たちである。
「あの、聞きたいことがいろいろあって。」
「なんでも聞いて。」
「俺が今まで考えてた衡具って、軍嶺さんが使う剣だったり、華原さんが使う鉈だったり、そういう、戦いに使える武器だったんです。でも、司漣さんの衡具が、俺にはよくわからなくて。」
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