第三十話『相談』
本日二話目の投稿です!
朝食を済ませた後、三人は司漣の部屋に向かった。
彼の部屋は、普段のチャラついた雰囲気とは裏腹に、物が少なく落ち着いた、掃除が行き届いた部屋だった。
「ごめんね僕の部屋で。軍嶺の部屋散らかってて足の踏み場もないからさぁ。」
「おい別に今言わなくてもいいだろ!」
そのまま軍令と司漣が座った椅子の向かい側の席に腰を掛ける様促され、黒羽はためらいがちに椅子に座った。
「それで?お前は一体何をそんなに悩んでるんだ?」
「――じつは…」
黒羽は昨日の出来事をすべて話した。衡具生成に必要な衡力圧縮が少しもできなかったこと。どれだけやってもこの先できる気がしないこと。今まで比較的何でもできる、才能があると自分の力を過信していたことが恥ずかし事。衡具が今後扱える自身が薄れてしまったこと。そして、本当に自分に戦える力がつくのか不安になってしまい、そのことがずっと頭の中でぐるぐる回っていること。
軍嶺はその悩みを聞いた直後、封を切ったように笑い出した。司漣はその態度を視線で諫めると、軍嶺はバツが悪そうに視線を逸らす。
「…ねぇ、白翔君。君は、才能ってなんだと思う?」
黒羽は、急になんでそんな質問をするのかと思いながら答える。
「何かの能力に対する素質、とかですか?」
「うん。白翔君の言っていることは正しいと思う。きっと世間一般ではそうなんだろうね。でも僕は少しその捕らえ方は違うと思っているんだ。」
「どういうことですか?」
「うん。そうだね、例えば、白翔君は僕に、均衡師としての才能があると思うかい?」
「もちろんですよ。」
「うん、そうだよね。僕もね、君がさっき話した定義でいえば才能があるとは思うんだ。でも、僕の定義ではそうは思えなくてね。」
「?」
「僕はね、才能っていうのは、素直さだと思うんだ。」
「素直さ?」
「そう。人から言われたことをまっすぐに受け止めて、その通りに実行しようとする素直さ。人からたとえ『才能がない』なんて言葉を投げかけられても、自分よりも圧倒的に優れた力を持つ人がいたとしても、自分のできないことをできる人に素直に聞いて、学んで、努力する。僕は、それができる人が本当に才能のある人だと思っているんだよ。君は人より何倍も均衡師としての素質があることは事実だと思う。そして、その力を自覚しているからこそ、何でもできるのだと錯覚してしまうのもわかる。でもね、君は今まで、自分の師匠の話をしっかりと聞いて、できなくてもアドバイスをそのまま飲み込んで、自分のものにしてきたでしょう。世の中にはそれが全然できない人がいるんだ。…僕みたいに。だから、自信を持ってほしい。別に焦らなくていいんだよ。その素直さがあれば、なんだってやれる。」
司漣は、何かを思い出しているように、優しい笑みを浮かべながらそう話した。続けて軍嶺も話し始める。
「白翔。お前は司漣には才能があると思う、って言っていたな。お前が話している、世間一般の才能の話だ。」
「はい、言いました。」
「なら、俺はどうだ?」
「あると思います。」
「そうか。でもな、俺はこの隣に座ってるすかした天才野郎と違って、衡具が扱えるようになるまでに、二年かかったんだ。」
「二年!?」
「あぁそうだ。衡力放出できるようになるまでに半年、そこから生成できるようになるまで一年半。これは、均衡師の中でも遅い事例になる。それでもな、自分の口から言うのもなんだが、俺は今最高レベルの均衡師の一人だ。実際、均衡師となるのに必要な能力は早く培われたかどうかなんて関係ねぇんだ。どれだけひたむきに、前向きに、卑屈にならずにただ目標のためにつき進めたかなんだよ。お前は才能の塊だ。間違いなくそうだ。そしてな、才能がない俺でもここまでこれたんだ。焦るな、焦らなくたってお前なら、ひたむきに頑張れば簡単に俺なんて超えちまうだろうさ。だからな、絶対に自分の力を疑うことはするな。それは、自分を否定しているのと、自分の夢を否定しているのとおんなじだ。自分の力に自信をもって、前を向け。」
黒羽は、二人の考えを聞けて、心のつかえが取れたような気がする。そうだ、自分は焦りすぎていたのだと。自分の力を信じて、今のまま進めばいいのだと。
「ありがとうございます!おかげですっきりしました!」
黒羽は、先ほど度は打って変わってとても晴れやかな表情でお礼を言った。
「いいってことよ!」
「悩みが晴れたならよかったよ。――じゃぁ、そろそろ時間だし、遠征に出発しようか。」
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