第二十八話『衡力圧縮』
本日二話目です!
翌日から、黒羽の一日のメニューが変化した。座学が衡具生成訓練に切り替わったのである。
今日のご飯当番は黒羽だった。烈焔寮に来て半年ぐらいで、黒羽も当番に組み込まれたのだ。いつもより三十分ほど早く起きて急いで支度をし食堂へ行く。電気をつけ、冷蔵庫を開けると、サンドウィッチ用のパンとトマトとレタス、チーズが入っている。
「今日はサンドウィッチだな。」
そうつぶやくき、さっそくサンドウィッチを作っていく。少し切って挟むだけなので、そこまで時間がかからず完成する。
全員分のサンドウィッチが完成し、そのままキッチンで朝食にしていると、食堂に華原が入ってきた。目の下にうっすらと隈が見える。昨日はよく眠れなかったのかもしれない。
「おはようございます。」
「おはよう白翔。…お、今日はサンドウィッチか。」
「はい。華原さんもどうぞ。」
黒羽はそういうと、サンドウィッチの入った大きなお皿を、華原の席の前まで運んだ。そして、自分ののついでにホットコーヒーを入れて手渡す。
「今日から衡具生成訓練が始まるな。」
「はい。」
「楽しみか?」
「…正直言えばかなり。今まではまだ大した攻撃手段を持っていなかったので、これから戦闘にでれられるようになる、と考えるとワクワクしますね。」
「そうか…。昨日話したことは忘れていないよね?」
「はい。より一層注意しながら衡力を使おうと思っています。」
「それならいいんだ。」
安心したように笑う彼女の顔は、昨日と同じく少し悲しそうだ。
そのまま少し他愛もない会話をした後、黒羽は先に部屋に戻った。まだ訓練場に行くには時間が早かったからだ。ただ、部屋に戻っても別段特にすることもなく、時間まで待機してから訓練場に向かった。
訓練場には、既に陸と荘隆が待ち構えていて、いつものようにトレーニングが始まる。最初のころよりも筋トレの数は増え、ランニング中にはフォークでの攻撃が入るようになり、着々と成長していることがよくわかる。今では師匠の二人もトレーニング中に何か言ってくることは減った。全く注意されない日は一日もないが。
そんなこんなで昼過ぎ、いよいよ衡具生成訓練だ。担当するのはもちろん華原。
「――…来たな。今日から衡具の生成を行っていく。衡具の生成は、衡力放出の時に軽く触れたが、放出した衡力を武器の形に圧縮することで可能になる。そもそも単に放出しただけの衡力には、大して攻撃力はない。それに攻撃力を持たせる方法が、実体化、すなわち衡具の生成ということになる。まずは私がお手本を見せよう。」
華原はそういうと、普段のように一気に衡具の生成を行うのではなく、衡力放出からの過程を見せてくれる。
「衡具を作る際、生成する際のポージングで戦闘を開始することを想定しなければならない。そのために、立った状態で放出を始めるんだ。」
そういうと、彼女は普段の武器の構えのポージングで衡力放出を行う。だんだんと霧が彼女を覆い、ある程度範囲が広くなったところで、急にその霧が彼女の右手に収束した。そして、それは明らかに鉈という実態に変化した。
「本来は衡具の作成も習得に非常に時間を要する工程だ。なぜなら、自分のもとを離れて空気中に散乱した衡力をしっかりと認識できなければならないからだ。――…だがまぁ、おそらく君はしっかりと衡力を感知したうえで衡力放出を行っているのだろう。一度やってみてくれ。」
黒羽は華原の言うとおり、衡力を認知したうえで放出を行っていた。そのため、圧縮をしろと言われれば、なんとなくイメージはつかめる。試しに、剣をイメージして圧縮を試みる。
立った状態で行う衡力放出。そして、ある程度の所で手元に圧縮をしようとする。
「…ふ…——…っぐ……あぁっ―――」
(くそっ!なんだ…これ!重たくて少しも圧縮できやしない…!)
しばらく圧縮を試みた黒羽だったが、少しも衡力が縮まる気配もなく、結局力尽きて放出を解いた。意気は上がり膝に手を置いている。顔はかなり汗だくだ。
「いいか白翔。そもそも衡力というものはそもそもが密度の高いものなのだ。だから、力ずくで頑張って縮めようとしてもかなり体力を消耗する割にうまくいかない。イメージとしては、確かに衡具を出現させたい場所に意識を向けることは大前提だが、圧縮しつつ、少しずつ衡力を自分の中に収めるイメージを持つんだ。大量に外に放出された衡力は、基本的に外側に向かって移動している。それに、内側に戻そうとする力が働くことで、衡力同士の間に少し隙間ができる。そこに放出された衡力を詰めて、だんだん圧縮していくイメージだ。口で言うのは難しいから、取り敢えず少しずつ衡力を体内に戻すイメージでやってみて。」
黒羽は華原に言われたことをイメージしてもう一度トライしてみる。すると、少しだが衡力が圧縮された感じがあった。
「そう、その感じだ。それを、手元にまで圧縮するんだよ。」
黒羽は今までにないほどに実現できる未来が見えない気がした。
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