第二話『移動』
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ご飯を食べ終わり、今度は着替えをする。
「そういやあんた、名はなんて言うんだい?アタシは優倣ってもんだ。」
「俺はこ・・・ハクト・・・白翔だ。」
黒羽は名を隠すことにした。教会の人間が自分の名前を知っているかは分からなかったが、隠すに超したことは無いと思った。
「それにしてもあんた、背中にすごい大きい入れ墨彫っているんだね。これも捕まってたやつにやられたのかい?」
「いや・・・あぁ。」
黒羽の背中には大きな黒い文様があった。背中一面で、服を脱ぐととても目立つものだ。黒羽はなんて説明しようか悩んだが、どうともいえず、優倣の言葉に同意する形をとった。
「あんたがずっと持っているその真っ赤な宝珠はいったいなんだい?大事なものかい?」
「あぁ、これは俺の母の形見でね。とても大事なものなんだ。
「それならそいつを入れて肩にかけられる巾着も準備しようかね。」
優倣に手伝ってもらって着た服は、黒羽によく似合う黒い服だった。首元まで隠れるタートルネックに、袖口が広い羽織を着て、下は同じく黒いシンプルなズボンだ。整えられていない長い髪もうまく整えてもらい、見えづらかった顔がよく見えるようになった。黒い髪は腰あたりで切りそろえられ、下の方で緩くまとめられる。肩にかけられる巾着は、青みがかった黒で、服とは少し色味が違うものの、服とよくマッチしていた。その姿はどこか上品で、どこかの貴族を想起させるようだった。手枷足枷が着いていなければ、の話だが。
「うん、我ながら上出来だね。とっても似合ってるじゃないか。じゃ、早速検問の所まで向かおうかね。」
「あぁ、お願いするよ。」
黒羽は優倣とともに彼女の家を後にすると、検問の場所まで歩いて行く。好奇の目にはさらされるが、さっきよりもマシだ。検問の場所は、優倣の家からは意外と近くそこまでかからずたどり着いた。検問では、入国する人ほどではなくともやはり一人一人窓口でチェックを受けるようだ。
「――次。・・・ん?なんだお前は。手足に鎖・・・?」
「この子は見ての通りこんなきれいな顔だろう?どこぞの変な男に監禁されていたらしいんだ。そんなに怪しまないでやっておくれ。」
検問までついてきてくれた優倣は言葉通り、黒羽をかばってくれた。検問をしていた人も簡単にその言葉を信じてくれ、痛ましい顔をしながらそこを通してくれた。検問でも枷を外してあげたいが道具がなくて出来ない旨を伝えられ、案外優しい人がいるものだと、黒羽は心が温かくなった。
「いいかい、白翔。ここからずっと南に進むと小さな村がある。最近災獣の動きも活発化しているから、夜には絶対に出歩いちゃいけないよ。あんたなんてすぐやられちまう。村が転々としているから、必ず夜は村で寝泊まりするんだ。いいね!」
「あぁ!ありがとう!」
手足の鎖をジャラジャラ鳴らしながら、黒羽は冒険の一歩を踏み出した。
地図も何も手元にない中、優倣に言われた言葉通り南に向かいとにかく歩いている黒羽。彼は優倣に言われた『災獣』について考えていた。それがなんなのか彼には見当もつかない。
「襲われるってことは人か何かか?山賊なんかをそんな風に呼んでいるのか?」
考えたって分からないものは分からない。
黒羽は考えるのをやめてまっすぐ村を目指すことにした。ずっと地下牢で過ごしてきた黒羽にとって周りの景色は物珍しいものであふれている。かなり栄えていた氷霊国の検問を抜ければあたりは急に緑が増える。
遠くに森らしきものも見えて、黒羽は見慣れない景色に目を輝かせた。
一つ目の村まではそこまで距離はなく、あっという間にたどり着いた。道中耳の長い白い生き物や、大きい茶色い毛むくじゃらな生き物が顔をのぞかせて、黒羽は見かけるたびに近づいてよく観察しようとしていた。大抵はすぐに逃げられてしまったが。
村は氷霊国とは打って変わって、そこまで栄えている雰囲気や人が多い雰囲気もなく、こじんまりとの人が村の入り口に二人ほど立っている程度だ。
「お前、氷霊国からきたのか?」
「あれだろ?どこかの国に向かう途中に内の村に寄ったんだろ?最近災獣増えてるもんな。」
優倣が言っていた「災獣」という生き物の増加は、多くの人の共通認識らしい。
「氷霊国で、最近『災獣』?ってやつが増えてるからよりは出歩くなって言われて。それからずっと気になってるんだが、災獣ってのは何なんだ?」
黒羽の質問に門番の二人は盛大に驚いた。
「なんだお前、災獣も知らないのか?!」
「よく今まで生きてこられたな?!」
そういったあと、二人の視線は自然と黒羽の手枷足枷にうつる。
「なるほど。お前訳ありか。」
「しょうがねぇから教えてやるよ。」
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