第二十七話『大事な話』
本日二話目です!
再計測が終わった後、黒羽は華原の部屋に呼び出されていた。
――コンコン――
「入れ。」
――ガチャリ――
「失礼します。」
「座りなさい。」
華原は、黒羽が部屋に入ってきたのを確認すると、自身の座る椅子の向かいの席に座るように促した。黒羽は素直にそれに従う。
「話したいことってなんですか?」
黒羽の質問に、華原は少し考えるようなしぐさをする。どう伝えようか悩んでいるようだ。
彼女はしばらくしてようやく口を開いた。
「――…そうだな、単刀直入に言おう。君は、均衡師としての一般的な能力を逸脱しすぎている。」
「…はい。」
「…はぁ。その様子だと、自分でもわかっていたようだね。」
「…まぁ、師匠たちの反応から、うすうす感づいてはいましたよ。」
黒羽は、苦笑しながら彼女にそう答えた。彼は、確かに戦える力を望んではいたが、人よりも異常なほどに強い力は望んでいなかった。それでも、自分の力には自分が責任を持つべきだ。わかっているからこそ、彼女がその先何を言おうとしているのか怖かった。そして、彼は静かにうつむく。
「あぁぁ~勘違いをしているかもしれないから先に言っておくが、別に君の修行をこれで終わりにするわけでも、君の師匠を降りるわけでもない。」
黒羽はその言葉に目を見開いて顔を上げた。正直彼は、「もう手に負えないからここを出て行ってくれ」ぐらいのことを言われるものだと思っていたからだ。
「…違うのですか?」
「むしろ逆だ。より強い力を持つ者ほど、力の使い方を熟知していなければならない。なぜなら、その者が力をふるったとき、それを止められる者がいないからだ。だから、私が今日君に話したかったのは、単純に、自分で自分の力量をしっかりと把握しろ、という話だ。力というのは、人を守れる可能性を秘めているものだ。でも逆に、人を傷つける恐れのあるものでもある。私は君に、自分の力で人を傷つけてしまうことの辛さを経験してほしくはない。」
そういう華原の顔は、どこか暗く、今にも泣きだしそうに見えた。
「倒そうとした標的に向けて放った攻撃が、もし自分の想定よりもはるかに強かったら、自分の守りたい人まで傷つけてしまうかもしれない。力の使い方を熟知していなければ、間違った使い方で想定していない死人が出るかもしれない。もちろん私たちも今後も君にしっかりと教育を施していくつもりだそれでも、限度がある。だからね、白翔。自分が今使っている力が、武器が、自分の中のどれくらいの力加減で出しているのか、何のために使っているのか、そこをしっかりと日々確認していてほしい。どれほどの割合を自身の攻撃に込めているのかを把握していれば、想定外の強い攻撃を仕掛けてしまうこともない。自分が戦う目的がわかっていれば、自分が後悔するような力の使い方はしない。それを、知っていてほしくてここに呼んだんだよ。ここで一年修行してきた、学んできた今の君にはもう、私の言っていることの意味が正しい意味で伝わるんじゃないかな。」
彼女の表情は、厳しく諭しているというよりも、黒羽に懇願している様に見えた。きっと彼女には彼女にしか見えていない景色があるのだろう。
「胸に、刻んでおきます。」
「…ありがとう。それに伴い、今後は今までよりも厳しく指導をさせてもらうけど、許してくれ。話は以上だ。この後は自由にしてくれてかまわない。」
「わかり、ました。」
黒羽は、華原の様子がいつもとどこか違って見えて気にしていたものの、特にかける言葉も見当たらず、華原の部屋を後にした。
黒羽が退室した後、華原は席を立ち、窓を開けて空を見上げる。空はすでに少し暗くなってきていて、一番星が空に上っていた。彼女はそれを見ながら自身の過去を思い起こしていた。
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