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ワケあり脱獄者と7人の守護者(旧.主と七つの宝珠)  作者: 旧成 アノマ
第一章『学びと成長』

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第十九話『袋』

本日2話目の更新です!ちょっと長め。


それと報告です!

一章を書ききるまでは極力1日2話更新を継続することになりました!

ただ、たまに1日1話の日ができるかもしれませんが、度了承ください。

明日は三連休の中日ということで、できれば3話更新できればとおもいます!

「まだ時間があるな。修行において、時間は如何に有効的に活用するかがとても重要になる。ということで、さっそく衡力のトレーニングに移ろう。」

 黒羽の選んだ師匠は相当スパルタ気質らしい。ただ、衡力のトレーニングについては黒羽もずっと気になっていたので、特に異論はなかった。


「衡力のトレーニングってどんなことをするんだ?」

「まずはじめにやるのは、自身の衡力を体外に放出することだ。衡具は体外に放出できる衡力を一部に集めて放出し、形を持ったもの。だから、まずは基礎となる衡力放出をやってみよう。」


前置きをそう説明すると、続いて華原は衡力の放出の仕方について説明していく。ちなみに、陸と荘隆はたまった仕事を片付けて来るということで、既に訓練場から退室している。


「衡力というものは、身体の心臓部の近い位置にとどまっている。そしてそれは膜につつまれたような状態になっているために、均衡師はその場所を『袋』と呼ぶんだ。細かい位置は人によって異なるため説明は難しいが、袋のある部分は、身体のほかの部分よりもかすかに温かい。大抵はこの場所を探すのにも一か月は時間を要するから、まずは場所を探す訓練——」

「なんとなくわかったよ。」

「——…今なんて?」

「だから、衡力のたまる場所が大体わかったんだって。」


 華原は信じられないものを見るように黒羽を見つめる。先ほど華原が話したように、袋の場所は人によって異なる。大抵は腹部から首下までの上半身のどこかであることが多いが、たまに指先や足先、頭部など、一般的でない場所に袋がある例も存在している。この袋に衡力がたまっている感覚というものは、実際に衡力を扱える人しかわからない感覚で、なおかつ印もちは生まれた時から当たり前のように衡力が体内に存在しているため、大抵は感知するのにかなりの時間を要するのである。中には、感知することがどうしてもできずに均衡師になることをあきらめる者もいる。華原でさえ、袋を感知するのに二週間の時間を必要としたし、それでも異例の速さとされたのだ。黒羽はそれを超越する速度で自身の袋を感知したのだ。


「もう…わかったのか?」

「多分。」

「そ、そうか。それなら次だ。印を持っている人間は世界のおよそ3割。そして、そこから均衡師になれる人間は、そのうちの約一割といわれている。断念する人間のうち、約30%は袋の位置がわからずあきらめる。約68%が、次の放出の段階であきらめるとされているんだ。つまり、均衡師を目指す者が均衡師になるための最も大きな関門というのが、この衡力放出となる。これは、その名の通り、袋の中の衡力を体外に放出する、という訓練だ。これを繰り返すことで練度が上がっていく。口頭で説明しただけではイメージがわかないと思うから先に私がやって見せよう。」


 華原は、黒羽の才能へ改めて恐れおののいたものの、自分は師匠であるということを思い出し、気持ちを切り替えて指導をする。


 彼女はその場で座禅を組む。そして、目を閉じてすっと息を吸い込んだ。数秒間息を止め、その後ゆっくりと息を吐きはじめる。すると


――シュー――


 というかすかな音とともに、身体の周りに、衡具と同じ色をした、霧のような膜が張られる。黒羽はそこからなにか膨大な力を感じるようで、唾をのむ音が聞こえるほどの緊張感を持って自分の師匠を見つめている。


 水色の霧は、煙が上に上っていくように、華原の上部にどんどん範囲を広げていく。そして、訓練場の天井にその霧がつくぐらいの所になって、彼女は座禅を解いた。


「これが衡力放出のお手本だ。衡力放出は、衡力量を増やし、練度を上げる効果がある。今私は途中で放出をやめたが、放出ができたなら当面の目標は、衡力の霧をこの訓練場の天井に到達させることだな。そもそも白翔が衡力を放出できるかはわからないが。放出は、できるようになるまで早い人でもおよそ三か月はかかる。放出できたとしても、この天井に到達させるにはどれだけ早くても三年はかかると思った方がいい。そこまでできてから初めて衡具の生成について教える。私は座禅を組んだが、自分がやりやすい方法であればどんなポーズでも構わない。」

「わかった、やってみる。」


 黒羽はそういうと、その場に座り、片方は胡坐、片方は膝を立て、それぞれの腕をそれぞれの足の膝に置いた。そして、華原のやったように目を閉じ、集中する。彼が感じる袋の位置、それは上半身全体だった。どこか体の一部、とかではなく、上半身全体に、大きな袋がある。そんな感覚だ。これが異常なことであるとはまだ黒羽も知らない。


 袋から衡力を押し出そうとするもの、どうしてもうまくできない。水をかくように、手で押し出そうとするが、うまく手に捕まらず逃げてしまって全く手ごたえがないのだ。しばらくしてもうまくいかず、一度断念する。


「さすがにこれは一発じゃ行かないか。一度コツを教えてやろう。衡力を水、袋を布でできた袋だと考えてみろ。袋の中に手を突っ込んで、軽く揺らしたり仰いだりしたぐらいじゃ、水が外に出ることはない。だからここで方法は二つ。袋を絞るようにして外から圧迫して出すか、それとも袋の内側、水の中心部から圧迫して押し出すか、ということになる。ここで一つ注意をしておかなければならないことがあってね。袋というのは、よく見る巾着のように、上が開いたりしているわけではない。だから、慎重に体外に放出していかなければ袋に大きな穴が開たり、破れてしまって、今後一切衡力が使えなくなってしまおそれがあるんだ。だから、私が説明した、外側の膜を圧迫するようにして押し出すか、内側から外へ向けて圧迫するように押し出すか、どちらかの方法で、丁寧に、ゆっくりと押し出さなければいけない。」

「なるほど…。いや、ちょっとまってくれ。」

「なんだ?」

「一度に大量の衡力を放出すると膜が破れて使い物にならない、と言っていたが、それなら華原さんはなんでさっき一気に衡力を放出できたんだ?」


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