第十三話『服』
本日二話目です!
少し長めです!
そんな話をしている間に鍛冶師が戻ってきた。何やら手には少し危なそうな道具が握られている。ミシンの針の部分がのこぎりの刃になったような道具だ。
「坊ちゃん、こっちへおいで。枷外してやるからな。」
黒羽はそのまま、作業台がある奥の部屋へ連れていかれた。まずは腕の枷から外すようだ。黒羽が鍛冶師の指示通り、道具に手枷部分をセットすると、鍛冶師は、黒羽に動かないように忠告しながら、刃の位置を調節して慎重に切っていく。
「対衡具の枷にしてはやけに固いな。」
そういいながらも、やはり通常の刃物にはかなわないようで、少しずつ刃が入っていく。今まで10年間外れることのなかった枷が、ようやく自分の腕から外れることに、黒羽はワクワクしていた。
そこから、枷に向き合うこと30分、ようやく右手側の枷が外れた。枷は、そのまま作業台から落下し、
――ガシャン!!!——
とかなり大きな音を立てる。
「おいすげぇ音だな!」
「一体どのくらいの重さで…———っ重い…!白翔、君はこんなものをずっと腕につけていたのか?!」
黒羽がつけていた枷は、およそ10㎏ほどだった。持ち上げられないことはなかったが、日常的につけているとしたらその負担は考えるまでもない。
そのまま、他の枷も順々に外されていく。すべての枷に同じぐらいの重さがあり、華原は戦慄した。この男は、道中このまま災獣からの攻撃を避けていたのか、と。これが歴戦の戦士であり、さらに力をつけようと訓練をしている人間であれば理解はできた。しかし、目の前にいる彼は、どう見ても戦い慣れをしていない、やせ細った少年なのである。
鍛冶屋のおっちゃんは、大変だったんだなぁと黒羽に生暖かい視線を向けていた。
一方黒羽は、枷が外れてだいぶ動きやすくなったのか、肩を回したり、足を上げて確認してみたりしている。元々枷があった部分には当然ながら重苦しそうな金属はもうない。しかし、長いことつけられていた枷のせいで、擦れた後ができていた。色素が沈着し、跡が消えることは一生なさそうで痛々しく見える。
「今日はありがとう。」
「いいってことよ。塔の子らにはよくお世話になってるからな。坊ちゃんもこれで気楽に過ごせるだろう。」
「あぁ。おっちゃん、ありがとう!」
華原の礼に続けて、黒羽も礼を言う。本日の一つ目のミッションはこれで完了だ。
それから、服を見に行く道中も、黒羽は盛んに自分の腕を擦ったり飛び跳ねたりしている。枷が無い感覚が非常に新鮮らしく、とても嬉しそうだ。
「服屋もこの付近だからね。」
華原に連れられて来た服屋は、鍛冶屋ほど狭くはなかったもの、雰囲気はあまり変わらず、店員もアットホームな感じだった。店に入るとすぐに店員に声を掛けられる。
「どんなのをお探しで?」
「今日はこの子の服を見に来たんです。」
売られている服は、着物や羽織が多い。町の人もそういった服装が主流なようで、大抵は着物に羽織、それに草履をはいている人がほとんどだった。それに比べて師匠たちは、単なる着物よりも装飾が多く、上は和装に下は動きやすいズボン、ブーツだったり、身体にフィットする服装だったりしている。
「実はこの子は均衡師見習いで、できるだけ動きやすい服装だとありがたいのですが。」
「おや、そうなのかい。ちょうど新しいのがはいってるんだ。こっちにおいで。」
華原の言葉に、女性店員は隣の売り場に案内してくれた。そこには、師匠たちが来ている服に近しいものが様々売られていた。均衡師と一般市民の服装には明確に違いがあるようだ。とくに、売られているものを見ると、動きやすさを非常重視していることがわかる。
「――あった!これこれ!坊ちゃんにはこれが似合うと思うよ。」
そういわれて差し出されたのは、右側の袖がない青い半着と、ハイネック指穴付きの黒いインナー。短いサルエルタイプの黒いズボン、茶色い巻きスカートに黒のショートブーツのセットだ。実際に合わせてみるとサイズもぴったりだった。
「似合うね、白翔。」
「ありがとう。」
「すみません、これに、足につける黒のリストバンド二ついただけますか。」
「はいよ~。」
黒羽はあまり気にしていなかったのだが、華原は黒羽の枷が外れて以降、彼の手足の跡が気になって仕方がなかった。手首はインナーで隠れたからいいもの、足首は隠れていなかったために店員に注文したのだ。
最終的に、彼女たちはその服装を2セットと、下着等を買って店を後にした。
「いったん買い物はこれで終わりかな。他に何か買いたいものはある?」
「特に―――…あ、この服に合う巾着が欲しい。」
「巾着?——そういえば白翔、君がずっと肩からかけてる巾着には何が入っているんだい?」
黒羽は、巾着から宝珠を出して見せた。
「…それは?」
「これは亡くなった母の形見なんだ。肌身離さず持っておきたくて。」
「なるほど…。それは今すぐ必要なものか?思ったよりも時間がかかってしまって、そろそろ夕飯の時間なんだが…」
「夕飯!!!ならまた別日でいい!戻ろう!!」
「ふっ…君は本当にご飯が好きだね。ではそれはまた別日にしよう。今日の料理当番は葉港だから、おいしいものを作ってくれると思うよ。」
そんなこんなで、今日の買い物は終了したのだった。
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