表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ボン・カリーは異世界でカレーを食べたくなる  作者: まるちーるだ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/8

ノーザン・ルビーの丸焦げジャガイモ

友人から『ボンちゃんとノーザンくんのお話を細かく読みたい!』とリクエストいただきまして、ついつい書いてしまいました!

これを書いたら、キタくんとサラちゃんも書きたくなったのですが、どうしましょう!?

まあ、前に話した通り、私、ボン・カリー伯爵令嬢はもうすぐ結婚すします。


さて、私の結婚相手ノーザン・ルビー公爵令息と私の出会いは少々特殊だった気もします。



私の父コクマロ・カリー伯爵はまあ婚約者にあぶれて、おかげで母というジャガイモ……ではなく、妻・アイリスを得たわけですが、父を狙っていたのは他にも居ました。



父は高位令息……今だと権力者ですかね?とにかく同性にモテモテでした!


まずは長男・ゴールデン・カリーが生まれた時ですが、同じ年に王太子殿下がお生まれになりました。


ちなみにゴールデンお兄様の名付け親は国王陛下だったりします。


ここで、国王陛下が――


『慣例に基づき、カリー伯爵令息を第一王子の側近に……』


ええ、言い切る前に父のブリザードに気が付き言葉を止められたそうです。


『ええ、構いませんよ?また、私の時のように婚約破棄していただければ問題ございません。それに人間、合う合わないがございますからね?おかげで私はアイリスを得られましたし、何の問題もございません。王家の不良債権の片付けも頑張りましたが、ええ、褒賞も何もなかったことを恨んでは居りません。カリー伯爵家は『法の番人』ですから、王族ですら噛みつけますからね~』


ノンブレスの弾丸論破。ええ、その時の国王陛下の周りの居られた文官、護衛、皆さまお父様のブリザードに凍えて動けなかったそうです。余談ですが、サラの亡くなられた兄上も同じように選ばれそうでしたが、グラン・ダポテート伯爵が『ご冗談を』と一刀両断だったそうです。


ええ、お母様の件で王家の信頼は底辺どころか地底にめり込んでいたそうですわ!


流石に不味いと思った国王陛下は側近と婚約者を早くに決める制度を廃止なさいました。もちろん、伝統に煩い皆様が喚かれたそうですが、お父様の超辛口スパイス攻撃、グラン・ダポテート伯爵の熱々ふかし芋攻撃、ポール叔父さまことコブラー男爵の肉汁バチバチ攻撃で香ばしく焼かれたそうです。豚肉とジャガイモのスパイス焼きですわ!


まあ、おこげも美味しいラインで済ませるのがこの御三方の手腕ですわ!


ああ、余談ですが、我がカリー伯爵家とサラのお家であるダポテート伯爵家は元々『法の番人』と呼ばれる家でありまして、代々司法に強い清廉なる家と言われておりますが、ここ最近はコブラー男爵家もその仲間入りをしました。


なので『司法の番犬』だとか、『司法のケルベロス』なんて呼ばれているんですって!

さらに余談ですが、次の褒賞でコブラー男爵家は伯爵家へ格上げされます。流石に男爵家だといざという時に権力で負けるかもしれないので、その措置だとか?


まあ、『司法のケルベロス』はおいておきましょう。



こうしてゴールデンお兄様の婚約者はある程度自由に選べる!となりたい所でしたが、残念ながら私たちは王太子殿下の再従兄弟に当たることから、まあ、高位のお方から声がかかるのです!仕方なしに、父はある程度見繕って、あとはゴールデンお兄様の意志に任せることにしました。


次男ジャワお兄様、三男バーモンドお兄様はそれほど競争力が高くなかった……と、言うよりは皆さま虎視眈々だったかと思われます。


そして四人目に私が生まれてさあ大変!何せ女の子ですからね!


ええ、お父様を落とそうとした権力者たちから釣書が届く、届く……。


第二王子殿下……『血が近いわボケ!』で速攻却下。

シュールストレミング公爵令息……『年上すぎるわ!』で速攻却下。

(※ジャワお兄様と同じ年で6歳年上)

サンドパン王国の王太子……『異国に嫁がせるなら侯爵令嬢以上!』で速攻却下。


国王、公爵、隣国国王を一刀両断した父ですが、一つだけ断れなかった縁談がありました。


ええ、それがノーザン・ルビー公爵令息でした。


同じ年で公爵家の一人息子。ルビー公爵家はお父様大好きなスターさまと、お母様のお友達であるカルネさまのご夫婦。どう考えて私を大事にしてくれるというのが見えていたので、候補として残すことにしました。


お父様はあわよくばノーザンがクズで、娘との結婚なんて無くなれ!とめちゃくちゃあら探しをしようとしたらしいですわ。


まあ、そんな感じでノーザンが私の婚約者の候補に入ったのです。


……ただ、何故ノーザンが私の婚約者となったかは、いまだによく分かっておりませんわね?












Side ノーザン・ルビー



初めて彼女、ボン・カリー伯爵令嬢と出会ったのは俺が五歳の時だ。俺は母親から聞いていた『英雄』のような伯爵の娘と会える日を楽しみしていた。



カリー伯爵とコブラー男爵家の話を母親から聞いたのは三歳だった。正しいことを貫いたコブラー準男爵や、その甥っ子で姉を助けたいが為に努力したコブラー男爵。なによりもその窮地を華麗に救ったカリー伯爵を尊敬しない訳がなかった。


父にカリー伯爵の話を聞いては、その凄さに憧れていた。


そして茶会の日。


現れた金の髪を持つ少女は母親の後ろに隠れていた。こそっとオレンジ色の目で俺を見てはにかんだ瞬間、その表情にくぎ付けになった。


『……この子は……やっぱりスターの子ね』


呆れたように母が言ったが、そんな言葉が遠くに感じるほど、彼女の表情をもっと見たいと思ってしまった。その日のお茶会はよく覚えていないが、その夜に父と母に彼女の可愛さを存分に語った記憶はある。


そこで父から悪魔のささやきともとれる言葉を聞かされた。


『婚約して結婚すれば、ずっと一緒に居られるぞ?』


『ずっと?』


『そうだ、私とお母様みたいにずっとだ!』


よくよく思い出してみれば父の顔は楽しそうだったし、母の顔は呆れつつも笑っていた。完全に乗せられた!


そう言う経緯で俺はボン・カリー伯爵令嬢の婚約者候補の一人となった。これは彼女の母親が国王陛下の従妹という特殊な血筋ゆえ、取り合いになっていたからだと今ならわかる。



だが、彼女の婚約者になりたいと本気で思ったのは12歳の本格的に婚約者を決めるとなった時。なんとく好き、程度であった彼女……ボンを本気で好きになったのはこの時だろう。


その当時、私は氷魔法の使い手としてかなり有名になっていた。氷魔法は水魔法と風魔法の複合魔法。10歳で使えるようになり、12歳当時では完全なコントロールが出来るようになっていた。それに母からの遺伝の炎魔法もあり、水、風、炎の三属性を使いこなす『天才』としてもてはやされていた。


ようするに天狗だった。


ただ、運命を変えたのはまさかのふかし芋だった。


意味が分からないと思うだろう?


本当にふかし芋だったんだ……。


『ノーザンさまは氷魔法と炎魔法がお得意なのですよね?』


そう聞いて来たボンが持っていたのはジャガイモだった。


『ジャガ……イモ?』


『ええ、私のお母様のご実家で取れたジャガイモですわ!これをほくほくにしてバターをに塩コショウで食べると美味ですの!で、最近は、このジャガイモを使って魔法の練習をしておりますの!』


キラキラしたオレンジ色の目で、うっとりとジャガイモを見つめるボン。


『どういう、ことだ?』


『ええ、ちょっと見ていてくださいまし!』


そう言って彼女が使った魔法は炎魔法と水魔法。ジャガイモを水の膜で包み、炎で加熱する。ついでに風魔法で浮かせているようだ。その不思議な光景に目を奪われていれば、ボンは風で浮かせたジャガイモを目の前の皿に置いた。ナイフでスッと半分に切ったジャガイモから湯気が立ち、そして彼女はバターをその上に置いた。


『な、何を!?』


『美味しいですわよ!』


塩と胡椒を軽く振ったジャガイモの乗った皿を差し出される。湯気が上がるジャガイモに濃厚なバターの香りが漂ってくる。ごくりと喉を鳴らしながらそのジャガイモの皿を受け取り、そしてナイフを落とせばストンと重力だけで切れた。恐る恐るフォークに差して口に運べば、ほくほくとして熱いがねっとりとした芋が言いようのない甘みを持っていた。


『これは……本当にジャガイモか?』


『ええ、ゆっくりと過熱していくことで、こうやって甘みが引き出されますの!あと魔法の練習になりますわ!』


『へえ、やってみていい?』


『ええ、どうぞ!』


まさかジャガイモがもう一個出てくるなんて本来は思わなかったけれども、彼女から渡されたジャガイモを受けとって、同じようにしようとした。


――瞬間、火柱が立った。


驚いて目を真ん丸にした俺は真っ黒こげになった炭のようなジャガイモを見た。


『最初はそんなもんですわ!意外と難しいのですよ、繊細なコントロールは』


そう言った彼女は消し炭になったかと思ったジャガイモを風魔法で自分の手に持って来て、炎魔法と風魔法でクルクルと炭のようなジャガイモを回していく。


『でも、失敗は成功の基ですわ!』


ある程度回したところで彼女は皿に置き、ナイフで真っ二つにした。焦げた皮をむけば湯気の立った先ほどと同じようなほくほくのジャガイモ。


彼女はその黒焦げを省いた中身を美味しそうに平らげた。


『ごちそうさまでした!』


今思えば、初めての挫折であって、初めての失敗だった。


でもそんな悔しさは、彼女の笑顔に塗りつぶされていった。


その日から、俺は、来る日も来る日も、芋をふかした。





まあ、そうは言いつつ、俺はまだ『候補』でしかなかったので、とりあえず、周りを潰……他の相手を紹介することにした。


辺境伯爵令息の先輩には、同じく辺境伯爵令嬢の先輩。お互いに剣術を嗜むから上手くいくかな?と思ったら思いの外、順調で、あっという間に2人は婚約した。


続いて年上の侯爵令息。自滅してくれたので問題なかった。


問題は年下の心優しい公爵令息。いい子なんだ。本当にいい子なんだ。不幸にしたくないし、できるなら助けてやりたい。そこで目を付けたのはボンの親友で、婚約者のいない令嬢。こっそりっと協力し合うことにした。家が没落するのは目に見えていたので、カリー伯爵にも協力を仰いで、上手い具合に彼をボンの親友に押し付けた。


嬉しい誤算は彼がボンの弟になったことだ。彼も俺が義理の兄になることを喜んでくれたので、win-winであると信じたい。


まあ、地道に周りを全部排除出来たところで、まさかのことが起きた。


もう名前を出してしまうのだが、没落より統治者がいなくなったアカリ公爵領で大規模な水害と土砂崩れが起きた。失礼な話だが、アカリ公爵領は重税を課されていたにも関わらず、土地の改良工事などは一切行われず、その結果な大規模な水害だった。


俺は魔法騎士団に特例で所属していたので、アカリ公爵領への復興に従事する魔法士の招集に手を上げた。心優しい令息……キタ・アカリ改めキタ・カリー伯爵令息も手を上げていた。


ただ、広がった被災地は学生の俺たちには心を抉る光景が広がっていた。


更地となった村。泥まみれになった生活用品。住む場所を無くして絶望する領民。


キタは涙を溢していた。


ただ、その背を叩いて『やれることをするぞ!』と檄を飛ばす。特にキタは水魔法が得意だ。すぐに彼は泥まみれのものを綺麗にし始めた。


『何か、困りごとはありませんか?』


そう尋ねれば、領民たちは諦めた目で『来てくれただけでありがたい』と呟く。どうにかできないかと思っても何も思いつかなかった。


数日、大人でも音を上げそうな作業を繰り返していた時、幼い子供が急に『お腹空いた!』と泣き出した。釣られるように何人も、何人も幼い子供が泣き出す。言われて見て思ったが、確かに量が少ないかもしれないと思った。


いや、持って来られた支援物資はほとんどが野菜。しかし調理できる窯も、鍋も、調理道具もなく、干し肉や乾燥パンしか食べられないのだ。


そこでハタっとジャガイモに目が行った。


思わずジャガイモを手に取って、水魔法と炎魔法、そして風魔法でゆっくりと熱を加える。クルクルと回しながら、出来るだけ丁寧に。


こんなもんか?と思い、魔法を止めて、手に乗った瞬間、流石に熱かった。今度は氷魔法と風魔法で適度な温度まで下げて、そしてそのジャガイモを二つに割った。


ほくほくのジャガイモ。その場にある塩を明るく振った。


それを持って泣いている少年に差し出した。


『すまない、こんなものしか作れないが、ふかしたジャガイモだ。少しは腹が満たせるかと思う』


香ばしい匂いに、少年はピタッと泣き止んで、両手でジャガイモを受け取った。そのままパクっとかじりついた少年は『美味しい』と目を輝かせて笑った。


『足りないものは申し出てくれ。人数分、芋をふかそう』


俺の言葉に一人、また一人と手を上げてくる。一つずつでは間に合わなそうなので、一気に十個とふかして配っていく。真似ようとしたキタをはじめとする他の令息たちは、昔、俺がやったように消し炭を作ったが、俺の失敗話をしながら、ボンにやってもらったようにその消し炭も食べられる芋に変えた。


その時に知ったのだが、俺は話しかけにくい人間だったらしい。


学園の同胞たちは俺が失敗なんてしない完全無欠の人間だと思っていて、失敗しようものなら怒られるとか思っていたらしい。


そう考えると、失敗も成功の基と教えてくれた彼女のおかげかもしれないと、思わず笑うのだった。


そこから同胞たちが炎魔法と水魔法と駆使して料理を作り出し、その温かい料理が領民たちの表情を明るくした。


『ノーザンが芋ふかしたの見て、料理も作れそうって思ったんだよな!』


『流石に魔法で料理は考えてなかったけど出来るもんだな!』


そう言いながら協力して作る料理は楽しいものがあった。特に領民の子供たちで、魔法が僅かでも使える子供が俺の真似をして芋をふかしたり、野菜をふかし始めた。


それが騎士団と魔法騎士団の団長の目に留まり、色々と大変なことに巻き込まれるのだが、この話は今度にしよう。



復興の手伝いは学園の長期休みの間だけで、ただ、復興のめどが立ったのを見て学園に帰ってこられた。


君が俺に教えてくれたことが、多くのアカリ公爵領の領民を救った。


その話をしたくて彼女に会いに来たところで、彼女から言い放たれたのは予想もしない言葉だった。


『あら、ノーザン。無事に戻られてよかったですわ!』


『ああ、アカリ公爵領も安定しそうでほっとしたよ』


彼女にアカリ公爵領での話をしたところで、本題に入ろうと思った。もう、婚約者候補は俺しか残っていない。なら、正式な婚約を結びたいと思うのは正しい判断だと思う。


しかし……


『そろそろ、本当の婚約を結びたいのだが……』


『え?』


『嫌か?俺としては上級生の忙しくなる前にちゃんとした婚約を結びたいのだが』


『え、私は繋ぎの婚約者候補ではありませんの?』


この言葉の破壊力は凄まじかった。そして彼女に俺の愛が全く伝わっていないのだとも痛感した。


だから、その日から恥ずかしさなんて全て捨て去って、全力で彼女に愛をささやくことを心に決めた。

耳まで赤くなっているだろうが、それでもささやく愛は遠慮しない。

手加減なしで、君を膝に乗せながら、今日も愛をささやこう。





【本日のお品書き】

1、超甘口ボンカレーとほくほくノーザン・ルビーのふかし芋



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ