表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/12

7 アップルタウン④~死体探し編~

私がこの街に生まれたのはいつだっただろうか。いや、私は多分生まれはここでは生まれていない。この場所ではなかった。


そもそもここは、地球なのだろうか?

私は中国の片田舎に生まれた。貧しい村だった。学校にいけない子供達もいた。私はなんとか親がお金を作ってくれ、なんとか通う事ができた


「文字の読み書きだけは大事だよ」

祖父がよく私に言っていた。そうして、祖父は古い本を私にくれた。多分どこか村に捨てられていたのを拾ってきたんだと思う。証拠に表紙にはゴミがよくくっついていた。


私には5人兄弟だった記憶がある。ずっと昔のように感じて、忘れかけているのだ。

その日、私は一番上の姉に頼まれて井戸に水を汲みに行ったのだ。

街には酷く深い井戸があった。そこには地下水が溜まっていた。私はいつものように慣れた手つきで井戸の桶を落とし、水を汲もうとした。


本当に事故だった。その時たまたま、井戸の奥を覗いていると滑って井戸の中に落ちていった。

私はそのままひたすら落ち続け、気づくと海の中にいた。


見知らぬ場所だった。酷く冷たい海だった。私は急いで海上に顔を出した。呼吸を整えながら周りを見渡した。しかし、陸地のようなものは見えない。


その瞬間私は海中に引きずり込まれた。私の目の前に巨大なサメのような生物がいた。私は恐怖で口の中から酸素があふれ出した。

(に、にげなくては)

私は必死にもがいてその場を離れようとした。

しかし、それはにも意味もなさなかった。


私の体はその海の魚達に喰い荒らされてしまった。身体のあちこちで痛みを感じる。

(ああ、俺はここで死ぬんだな)

そう思い、俺は目を瞑り抗うのを止めた。


気が付くと、私はトラックの上にいた。どやら浜辺に打ち上げられていたらしい。


「お、気が付いたか」

トラックの男はの問いかけに、私は頷く。


「浜辺で倒れていたんだ。街まで送ってやるよ」

私はトラックの男にお礼だけを伝えた。


トラックの男は私をとある街に下した。

どうやらそこはアップルタウンというらしい。


「大丈夫か?泊まるところとかあるのか?」

私は大丈夫だとだけ伝え、改めてトラックの男にお礼を伝えた。


私はこんだけ栄えた街に来たことがなかった。すこし、一人でぶらついて見たかった。

街は綺麗な円周になっており、中心部に行くにつれて高層ビルが建ち並ぶ。中心部のはずれになると工業地帯や住宅が並んでいた。

道路も所々舗装されている。経済的に発展しているのが伺えた。

しばらく、歩いていると一人の男に出会った。


「あなたは酷い怪我をしているようだ」

男は心配そうに私を見ていた。

「おぼれていたらしい」

と私は短く答えた。


「私は医者をやっているものです。非常にあなたの姿恰好を見るとほっとけない。どうか私の所で診察を受けないか?お金も必要ないです」


「本当にお金が必要ないのか?」


ええと医者と名乗る男は返事した。

それならばと私は医者と名乗る男に付いていくことにした。確かに体の節々が痛くて歩くのも非常に苦労していたのだ。


男は小さな診療所を営んでいた。

男は診察室に私を通すと診察ベッドに横になるよう伝えた。


私は男の言う通り横になった。


「じっとしといて下さいね」

そう男が言うと、私の両手両足は拘束されていた。


「大丈夫。大丈夫だから」

その時、男の顔が見えた。私は血の気が引いた。男の眼光は開き、視点が定まっていない。斜視なのだろうか。私と目が合うのは右目だけであった。


すると私の頭の中に奇妙な感触がした。

視線を男にずらすとどうやら男は私の頭に両手を突っ込んでいるようであった。


「あああああああ」

私はこの感覚を払いのけようと藻掻いたが、高速具はびくともしない。

「大丈夫。ちょっと記憶をいじるだけだから」

そう言って男は私の脳みそをくちゃくちゃいじり回すのだ。


その度に私は叫び声をあげる。しかし男はお構いなしに私の脳みそをいじくり回す。

私の視界はまるで回転しているかのようにグルグル回り始めた。

そうして次第に天井と床が一つなっていくかのような感覚が私を襲った。

私は次第にぐったりして意識も朦朧としてきた。そうして意識を失った。


「これを付けてあげよう。とっておきだ」

「何をする気だ?」


「ふふふ、知っているか?“思能(しのう)”てのは死んだ後も残り続ける。例えば、相手の能力を吸い出すストローのような口があったとしたら、その持ち主が死んだとしてもその口には力が残るんだ。つまり何が言いたいか分かるか?」

男は興奮が抑えられないようであった。

「何を言っているんだ?」

「これを君に移植するんだ」


「や、やめろ」

私はジタバタあがいたが、どうにもならない。


「大丈夫だ。私の“思能(しのう)”で君の記憶もアップデートできる。君は生まれ変われるんだ」


「や、やめてくれ」

私の頬に一筋の涙は流れたが男は手を止めなかった。

ひたすらに私の口の中にその奇妙なストローのような物体が縫い付けられていった。

それから暫くして、男は何度か私の脳をいじった。私はそれからどんどん記憶を奪われていった。


「お前の名前は?」

「名前ってなに?」

と私は問いかける。

「いい子だ」

男は私の頭を摩った。この男の人に見覚えがなかった。誰だろう……


私が目覚めるとあの男の人の姿はなかった。拘束具も外されていた。私はベッドから体を起こした。

机の上に一枚の紙が置かれていた。

そこにはこう書かれていた。


(お前が何者か知りたければ、その死体を啜れ。そこに答えがある。)


机の横に死体が転がっていた。しかし、それには見覚えがある気がした。そうだ、あの男の人だ。


私はどうしても男の人の脳みそが美味しそうに見えた。我慢できず、脳みそを啜ってしまった。

この伸縮自在な舌は融通が利いて楽だった。


男の人の脳みそを吸った瞬間、記憶が流れ込んできた。

この男が何者なにか、そうして私がされていた改造手術の事も思い出した。


私は思い出した後、男の顔面を蹴っ飛ばした。怒りが抑えきれず、何度も頭部を踏み潰した。


しかし、男の脳みそを啜った事で一つ興味深い事を知れた。

思能(しのう)”というものである。


どうやら私は二つの“思能(しのう)”を持っているようであった。

そうして、もう一つ奇妙な記憶も得ていた。この男も改造手術をされていたという事であった。

この男も私と同じような手口で改造手術をされていた。


ふと先ほどの紙をひっくり返すと赤い文字でこう書かれていた。


「私の名前はビル・サンダー」


私は脳みそに手を突っ込んで、記憶をいじった。

それから、壁に立てかけられていた鏡に向かい問いかけた。


「私の名前は?」

「ビル・サンダー」


私はこうして生まれ変わった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ