17 ~修行編①~
俺と朝日は順調にCランククエストをこなしていき、とうとう20ポイントまで集まって来た頃、ジルちゃんから電話がきた。
「すみません。九条さん…… 突き指しちゃって、ちょっとお休みさせてください」
「大丈夫?」
「師匠が手加減してくれないんですよ」
「あー、この前言ってた師匠?」
「そうです! いつも稽古付けてもらってます。”思能”の使い方とかも教えてもらってます」
”思能”の使い方か……
というのも俺は以前のジョン・ジャックとの戦いから少し反省をしていた。
俺はまるで、”思能”の使い方を理解していない。少しレベルアップの必要があるなと感じていた。
「俺達も稽古とか付けてもらえないかな?」
「いけると思うですよ。師匠、暇だし」
電話の奥で「誰が暇だって!?」という叫び声が聞こえた。
「そしたら、とりあえず2日後に来てください。後で日時と場所送ります!」
朝日はどうやら予定があるらしく、こうして俺一人で稽古を付けてもらう事になった。
後日、待ち合わせ場所は小さな道場のような場所であった。
「ごめん下さい」
と俺は挨拶をする。
「入っていいよ」
という声がして俺は扉を開け中に入った。
「お前が九条だな。ジルから話は聞いているよ」
そこには長身のやけに男前がいた。道義に黒帯をしており、長い髪を後ろに結んでいる。
汗まで爽やかそうなイケメンだった。
「俺の名はチャルノドール。よろしく、チャルノでいいよ」
「お願いします。」
と俺はお辞儀した。
ジルちゃんの師匠と合ったが一体どういう関係なのか気になった。
「ったく、ジルの奴突き指したのとかいって休みやがって」
「すみません、今日は”思能”の使い方を教えて頂きたくて、その……チャルノさんはジルちゃんの師匠という事でしょうか?」
俺は恐る恐る尋ねた。
「ああ、ジルはうちの門下生だよ。あいつに”思能”の使い方を教えたのも俺だよ」
なるほど、ここの道場の弟子って事なのかと理解した。というか、”思能”っていのうは格闘技みたいに宗派とかあるのか気になった。
「それでまずは何を知りたい?」
「一から教えて欲しいです。正直使い方自体もあまり分かってなくて」
「”思能”の基本はメモリ管理、処理構成の構築がベースだ。それは分かっている?」
「ええ、それは以前聞いた事があります」
「スタートは0か1の能力発動だけになるが、メモリ管理や能力の処理の解像度を上げる事でよりこの力は派生する事ができる。例えば、物を浮かすことが最初にできたとしよう。しかし、最初は一つの物しか動かす事はできない。それぞれバラバラに、意識せず複数の物を動かすのは処理またはメモリオーバーになる。まあ、こういった理論系は後にしよう。とりあえず、君はどんな”思能”があるのか見せてくれ」
「分かりました」
俺はキョロキョロ辺りを探しながら、近くにあった竹刀を見つけた。それを手に取り、”思能”を発動させた。
「物を消す”思能”か。かなり危うい能力だな。使い方を間違えると危険だ」
「はい。この能力かなり使えると思うんですが、以前の戦闘で遠距離戦に持ち込まれた時に何もできなかったので何か対策を考えたいなと思ってあと……」
「なんだい?」
「この能力もう一度使用すると消したものをもう一度消そうとすると再び出す事が出来るんです」
そう言って、俺は再び能力を使用して竹刀を元に戻した。
「なかなか、器用な事をやっているな。時間の条件とかあるの?」
「図ってませんが、そこまでないと思います。以前2,3日前の物を出せたりしました」
「なるほど、そうなると色々できそうだね。例えば倉庫の役割とか」
以前俺が考えてた事も言い当てて驚いた。この人に習ったら、能力の向上は間違いないだろう。
「はい、自分も同じ事考えてました」
「とりあえず、”思能”の構成把握が先だな。まずは2,3日は色んなものを消してみよう。そうすることでまずはメモリ消費の量が分かる。それから、拡張能力について考えよう」
「分かりました。一ついいですか?」
「どうした?」
「チャルノさんの”思能”と拡張能力を見てみたいです」
少し考えてから、チャルノさんは答えた。
「確かにな見た方がイメージしやすいか」
そう言って、チャルノさんは右手に息を吐きかけた。
すると、バチバチと火花を散らしながら右手には電気が帯びていた
「俺の”思能”は電気を操れる。そうして、九条君にはもう一つ先の力をお見せしよう」
そう言って、人差し指と親指で自身の脳みそに突き刺して何かを取り出した。それは何か白い光のようでうねうねと動いていた。それを空に投げ右手の電気を浴びさせた。
すると、それは一匹の龍になった。意思を持ってるかのようにその龍はゆらゆらとチャルノさんの周りを漂っていた。
「いいか?これが”思能”の先の力。”思獣”だ」
「”思獣”……」
と俺は繰り返した。
「もしかしたら、君が困っていた、遠距離対策になるかもね。でもこれは習得するのはかなり難しい。
”思能者”の中でもごく一部だ。ほんの数日で君がこれを使えるかは分からないがね。さあ、お行き」
”思獣”はチャルノの命令を聞きいて空を泳ぎ、天に昇った。空には雷鳴が轟いた。
一瞬、緋村が使っていた仕草ににているなと思った。緋村の場合は獣のようなものではなかったが、脳を使っていた。”思能”はやはり、脳に深く関係しているのだろうか……
確かにこれが使えたら俺の遠距離対策は飛躍的に拡張する。できるとこまでは覚えたい。
「やりたいです。教えて下さい」
俺は気持ちを込めて返事した。
「分かった」
こうして、俺の修行が始まったのであった。