表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/19

16 ジルちゃんとのデート

後日、旦那さんは逮捕された。どうやら、6人ほどの子供達を誘拐していたらしい。その子供達の行方は未だ不明である。

脳吸(のうす)い”の行方も未だ不明だ。あれから、緋村(ひむら)の協力のもとバグダードという男を調べたがそんな男はギルドに所属していなかった。しかし、彼が所有していたギルド所属証明書の人物は確かにCランクで存在していた。つまり奴は顔を変え、声を変え、姿を変えて紛れ混んでいたのだった。結局”脳吸(のうす)い”の手がかりも一つもなく、振出しに戻った。


「へえ、そんな事があったんですね。私参加しなくて良かったです」

ジルちゃんは大きなパフェを幸せそうに頬張りながら話しをしていた。


さて、いまどうしてこんな状況かと言うと、今朝いきなりジルちゃんから電話が掛かってきたのだ。

九条(くじょう)さん!今日暇ですか?」

暇ではない。でも何の用か教えてほしい。これじゃ断るのも断れない。


「え、暇だけど?」

「じゃあ、デートしましょ!」

「え、なんて?」

「じゃあ、10時に噴水広場の前に集合で!」

そう言ってジルちゃんは電話を切った。行くとはまだ言ってないのだが……

こうして、なぜかジルちゃんとデートする事になった。


待ち合わせ噴水広場には10分早くついた。

というのも、何故かあまり眠れなかったのだ。

よくよく考えたら、デートなんて俺はした事もない。

てか、よくよく思い返せば学生時代も女子とあんま会話してなくないか……


ジルちゃんは真っ白の花柄のワンピースに黒のベルトを巻き、足元は黒のブーツという姿であった。

ちゃんとおめかししてきて、俺は妙にドキドキしてしまった。


「すみません。待ちました?」

よく聞くセリフだ…… 漫画とかアニメとかで

「いやいや、全然待ってないよ」

俺はあたふたしながら答えた。

やべえ、俺変な汗かいてないよな……


「じゃあ、行きましょう」

ジルちゃんはそう言って、俺の手を引いて歩き出した。


「ど、どこいくの?」

「ウィンドウショッピングです!お金ないんで!」


そう言ってジルちゃんはは二の腕の筋肉を見せる仕草をして笑った。

完全にジルちゃんのペースだ。まあ、今日くらいいいか。


こうして、俺達はウィンドウショッピングに向かった。

しばらく、店を周り歩き疲れた俺達は近くのカフェに向かい休憩する事になった。


「それで、これの目的って何?」

と俺はアイスコーヒーを啜りながら尋ねた。


「特にないですよ!デートです」

「え、あれまじなの?」

と俺は呆れて聞き返す。


「はい!私デートした事ないので」


いや、俺もないんだけど……


「初めての相手が俺でいいわけ?」

と俺は照れ臭そうに尋ねた。


「はい!私師匠以外男の人知らないので」

「ジルちゃんて師匠いるの?」

「いますよー」

ずるずる音を立てながらオレンジジュースを飲み干した。

そうして、なくなったのを確認するかのように氷を鳴らした。


「それより良かったんですかね?」

「何が?」

朝日(あさひ)さんに許可取らなくて」

ジルちゃんの言ってる意味が良く分からなかった。なんで朝日(あさひ)に確認のがいるのか?

「なんで朝日(あさひ)の許可いるの?」

俺は思った事をそのまま聞き返した。


「だって、朝日(あさひ)さんと付き合ってるんですよね?」


俺はコーヒを噴き出した。何言ってのこの子は?てか、もしそうだとして、君デートに誘ってるじゃん。

倫理観やばい系?

と俺は頭の中で色んな事を考え始めて、ついに爆発した。

あー、考えるのめんどくせえ


「なんでそうなんの?」

「え、違うんですか?」

「違うよ」

「だって、朝日(あさひ)九条(くじょう)さんの事好きですよ」

「何で?証拠は?」

「勘です!女の!」

「あー、はいはい」

俺はアイスコーヒーを一気に飲み干した。


「それでこの後どうする?」

「映画みませんか?」

「今から?夜になっちゃうぜ?」

「えー、いいじゃないですかー」

「まあ、いいけど」


俺達はそれから映画を見た。なぜか今日に限ってカップルばかりでなんかモヤモヤした。

俺達が見た映画はSF映画であった。でも恋愛要素が強めだった。


そのせいか、なんかジルちゃんの距離が近い気がする。

「なんか近くない?」

「えーそうですか?」

ジルちゃんはわざとらしく、俺の右腕に抱き着いた。

いやっちょ、当たってるって……


「今日は本当に一般的なデートしたな」

俺は街を歩きながらぽつりと呟いた。


「そうですね。普通のデートってやつですね」

「そうだな」

と俺は言った。


「じゃあ、私としかできないデートしますか?」

そう言って、ジルちゃんは走り出し、下から俺の顔を除くような姿勢で尋ねた。

「どういう事?」

ジルちゃんはニコっと笑うと、俺の背中に手を置き、翼を作った。そうして、自分の背中にも作り、俺達は空を飛んだ。

ビルを超え、空を飛び、俺達は街の明かりが蛍の光ぐらい小さくなる高さまで飛んだ。

茜色の太陽が近くに見えた。もう夕方だった。

「あれは太陽なんだよな?」

と俺は尋ねた。

「当たり前じゃないですか?」

そう言って、ジルちゃんは笑った。


そうして、暫く俺達は景色を楽しんだ。


もう一個秘密の場所があるんです。

そう言ってジルちゃんは俺の手を取り、ある場所に向かった。

そこはアップルタウンで一番高い建物の時計塔の屋上であった。

俺達は時計塔のすぐそばに座ると街の景色を楽しんだ。


「どうですか?この景色!すごくないですか?」

「凄い。めっちゃ綺麗」

俺がそう言うとジルちゃんは嬉しそうに微笑んだ。


「これが私としかできないデートです」

「確かにこれはジルちゃんとしかできないや」

と俺は笑った。


そうして、夕日が沈み俺達のデートは幕を閉じた。










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ