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14 ギルド編⑥ ~Cランククエスト~

クエストの内容はこうだ。

依頼元はとある夫婦の奥さんからであり、夫の尾行をして欲しいという事であった。クエスト開始前に一度奥さんとの面会が事前内容として書かれており、俺達は奥さんに連絡して、アポイントを取った。

どうやら、今日の午後から時間が取れるらしく彼女を訪ねた。


住宅街にあるその一軒家は他の家屋と変わらないように感じる。こういっちゃ悪いが、ただの普通の一軒家だ。


リビングにあげてもらい、俺達はソファに座った。お茶を出してもらい、俺は口をつけた。

少しの間、静寂が流れたが、口火を切ったのは奥さんの方からであった。


「浮気していると思うんです」

「なるほど、それで旦那さんの尾行して相手を見つけて欲しいって事ですね」

「ええ、そうなんです。でも、一つ気になる事があって」

「気になる事?」

朝日(あさひ)が尋ねた。


「この家の中で人の声が聞こえるんです」

「というと?」

「お風呂とか、トイレとか、あと一人で寝室で着替えている時も声がするんです」

「それは電話をしてるとかではなくてですか?」

「違うんです。そこに本当が人がいるような声がするんです」


そう言って奥さんは泣き出した。朝日(あさひ)が何度か慰めながら、奥さんの背中をさすってようやく泣き止んだ。これ以上、情報は引き出せないなと思い、俺達は旦那さんの尾行を開始する事にした。


「ねえ、このまま尾行するの?」

朝日(あさひ)が俺達に尋ねた。

「なんで?」

「サングラスぐらい買いましょうよ。こういうのの鉄板でしょ?」

「3人ともサングラス付けてたら余計目立つんじゃ?」

「僕は付けたいです……」

とニック君が気づかない程度に手を上げ主張した。

「ね!ニック君もいるって言ってんだから買いましょう」

仕方なく、僕らは近くの服屋でサングラスを買い、それからコンビニのような所でアンパンと牛乳を買った。

「いや、それは張り込みだろ」

と俺は突っ込んだが誰も聞いてもいなかった。

俺達は奥さんから聞いていた

旦那さんの勤務地までくると近くのカフェに入り、窓越しに旦那さんが出てくるのを待った。


俺は奥さんからもらった写真を見ながら呟いた。

「浮気ねえ。でもそんなモテるようには見えないけど」

「馬鹿ねえ。男なんてお金よ。それに年とればなおさらそうよ」

「見てよ。絶対いいところに勤めてるわよ。こんないい場所に勤めるんですもん」

朝日(あさひ)は俺達が見ている建物を指さしながら言った。


「いえ、そっちじゃないです」

ニックはそう言って隣の建物を指した。

「え?そっち?そうなの?」


「旦那さん出てきましたから」

確かにニックの言う通り、旦那さんはエントランスから外に出てきた。

「っちょ、もうちょい早く言ってよ。追いかけるわよ!」

俺達は急いで店を出て、旦那さんの尾行を開始した。


俺達は一定の間隔を保ちながら追跡していた。尾行対象と歩くスピードは変えず、絶えず見失う事がないように注意を払いながら尾行していた。


尾行対象は最初大通りを歩いていた。下を向きながら、そそくさと歩いていく。

「ルート的には家に帰るルートのように思えるけど」

「もしかしたら、今日は合ったりしないかもね」


そのまま尾行をつづけた。その後、旦那さんは薬局に入った。

そうして、そこで、目薬を差した。その時気づいたのだが、何かずっとしきりに右目を擦っていた。そうして、何か一人事を言っている。

少し近寄って、耳を澄ませるとかすかに聞こえた。

「もう少しだ……」


そう言って、旦那さんは歩き始めた。

「もう少しって何がもう少しなのかしら?」

「分からない。とりあえず、追おう」


俺達はそれから旦那さんを尾行続けた。

しばらくして、暗い裏通りに入った。

そうして、そこで急に電話をかけ始めた。


「今誰にも見られていない。ああ、どこに行けばいいんだ?」

旦那さんはしきりに怯えながら電話をしている。

そうして、暫く電話をして切り、また歩き始めた。


旦那さんはある倉庫に入っていた。もう使われていない倉庫だ。鍵は掛かっておらず、その中に入っていた。

「なんだか、嫌な予感がするわ」

「ただの浮気じゃなさそうだ」

三人とも目を合わせながら、恐る恐る中に入っていた。


中は電気が付いておらず窓もなく、暗く良く見えない。奥の所には大きなカーテンで閉められていた。

所々段ボールが積み上げられており、視覚になりそうな場所が多々あった。

俺達はその陰に隠れながら様子を伺っていた。


旦那さんは最初貧乏揺すりが増えていき、何度も携帯が鳴るのを待っているかのようだった。

そうして、目を摩りながら、何度も何度も目薬をしていた。次第にその回数が増えていき、ついに叫び声をあげた。


「もうダメだ。我慢できない」

そういって、彼は膝から崩れ落ちた。

しかし、その時崩れ落ちたのは彼だけではなかった。

一人の女の子が転がり落ちたのだ。


「な……なんだあれ」

と俺が尋ねると、朝日(あさひ)は既に”思能(しのう)”を使っていた。

「彼の”思能(しのう)”だわ。目に物を入れる能力だったのね。それで誰かを誘拐してたんだわ」

「まさか、これ誘拐って事?もしかして、人身売買!?」

「え、人身売買!?」

とニック君もがたがた震えながら声をあげた。

俺達は咄嗟に”っし”と静かにするよう仕草した。


その時、奥のカーテンが開いた。

「持ってきたか?」

カーテンの奥にいたのはガスマスクを付けた奴がいた。


「ああ、言われた通り持ってきたよ」

「よくやった。これが報酬だ」

「なあ、もういいだろう?こんなちっぽけな金のためにこんな小さな子供を誘拐するなんて俺には耐えられない。この子供たちをどうするつもりなんだ?」

「知りたいか?」


「いいや、知りたくない。関わりたくない。もう俺はこれで終わりにしたい。それじゃ」

「そうはいかない。ビルさんはあんたを気に入ってるんだ。それにお金が必要なんだろ?ギャンブルですったお金、奥さんにも言えないくらい大量らしいじゃないか?」

「そ……それは」

「子供がいやなら大人でいい。また頼むよ」


そう言って、ガスマスクは彼の肩を叩いた。

旦那さんは項垂れながら、倉庫を出ていった


誰もいなくなった倉庫で、ガスマスクは袋の中に女の子を入れて、倉庫を出ていった。

「どうする、九条(くじょう)?これ完全に人身売買の現場よ」

「あの子供を助けよう」


俺達はガスマスクの後を追った。


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