13 ギルド編⑤ ~Cランククエスト~
俺達は暫く、Cランクのクエストを回していた。
俺達はアドレナリンが出まくってるせいか、思能者狩り討伐ばかり着目していたが残念ながらCランククエストでそんなクエストは舞い込む事はそうそうなかった。
基本的にCランククエストは基本日常の揉め事や、調査依頼などそういった類の物しかない。
しかし、クエストランクを上げるにはある程度のクエストの達成が不可欠であった。
クエストのランクを上げるにはクエストポイントというのが必要になる。クエストにはそれぞれ達成した際に付与されるポイントが決まっている。
例えば、調査や日常的な依頼などは1~2ポイント程度、討伐依頼などは3~ポイントとクエストの難易度によって変わってくるのだ。
CランクからBランクに上がるには最低25ポイント程度必要であり、ポイント到達後に昇格クエストを受注できる。この昇格クエストは一つ上のクエストを受注することになっている。
つまり、ランクが高くなればすぐにクエストのレベルをあげられるが、低ランクであれば数をこなすしかなかった。
つまり俺達はあと、22ポイントも必要であった。地道に1ポイントを積み上げていくしかなく、俺と朝日あとたまにジルちゃんを加えてクエストを受注していった。
風の噂によると、大抵の人間はCランクで挫折するらしい。ピラミッド構想でいう最下層の部分であり、ボリューム層になる。そりゃそうだ、登録するのはお金さえ払えばできる。ギルドはいい商売をしているというもんだ。
時には猫探し、時には草むしり、時には探偵の真似事など色々仕事を引き受けた。
そうして、俺達は何とか20ポイントまで集まった、ある時の事であった。
その日ジルちゃんは用事があるらしく、俺と朝日の二人でクエストを探していた。
「ねえ、集会所に行ってみない?」
と朝日が思いついたかのように口を開いた。
「集会所?」
「そう、もしかしたらいいクエストが張ってあるかも」
確かにな…… 意外とお得な情報ていうのは足元に転がってこないものだ。自分の足で動いて探さなくては。
「行ってみるか」
俺達はこうして、集会所に足を運んだ。
集会所はギルドの建物の2階に位置している。部屋に入ると広々とした受付カウンターがあり、カウンターの背後には大きな掲示板が張られている。掲示板はランク毎に分かれて設置されている。堂々とカウンター背後に張り出されているのはSランクまたはAランクのクエストであった。
それ以下のB~Cランクは左隅の小さな受付カウンターの後ろに設置されている。新人なのか、不安げに掲示板を見つめながら受付の人に話をしていた。
集会所には多くの人で溢れており、案外ここに人が流れ集まっていたようであった。
「なんかここだけ凄い雰囲気あるな」
と俺は朝日に話しかけた。
「あれかもね、クエスト参加人数制限もあるし、ここで人員メンバーとかも見つけてるのかもね」
確かになと俺は心の中で思った。
「あそこがCランクね」
俺と朝日はCランクの掲示板前に向かった。
「うーん、まあ受注掲示板とさして変わらないわね」
「あの、クエストをお探しですか?」
弱弱しい少年が話しかけてきた。
「あなたは?」
と朝日が尋ねた。
「ぼ、僕はニッコと言います」
ペコペコ頭を下げながらニッコと名乗る少年はクエスト受注用紙を差し出した。
「僕これ受けようと思っていて、もしお二人よろしければ一緒に受けませんか?」
内容を確認すると、カラスのペットを探して欲しいという内容であった。
また、このタイプのものかと半ば呆れた気持ちになり、朝日を横目で見ると朝日も顔が引きつっていた。
同じ気持ちだったらしい。まあ、これは断ろうかなと思った時、背後から声がした。
「クエストをお探しなんですか?だとしたら、どうぞ」
声の主は深くフードを被って素顔が見えない。
「あんたは?」
「私はバグダードと言います。私もCランクでしてね。最近登録したんですよ。おっとフードはすみません、日焼けに弱くてですね、申し訳ない。」
クエストの内容を確認すると、それはある人間の尾行であった。ポイントを見ると5ポイントと書かれていた。
え?5ポイント?と俺は思わず興奮して、目を見開いた。
「え?5ポイント!しかも尾行調査で?いいのこんなにいい奴!?」
と朝日が嬉しそうに声をあげた。
「ええ、私丁度、用事が入ってしまい行けないのです」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
俺達はバグダードさんから受け取ったクエストを受注することにした。
「じゃあ、せっかくだしニッコ君もいく?」
と俺が声をかけると彼は元気よく返事をし、一緒に受注する事になった。
「っけ、いいね。Cランク帯は5ポイント程度で嬉しくなっちゃうなんて」
Bランク帯の男なのだろうか、巨漢の輩みたいな男が俺達に突っかかってくる。
「いやな突っかかり方してくるわね、そういうあんたはランクいくつなのよ?」
「俺はBランクだ。全く、おめえらみたいなしょぼい奴見てると胸糞わりいんだわ。お金だせばギルドに入れるとか終わってるぜ」
俺もちょっとカチンときて、言い返す。
「うるせえよ、Bランクのくせに。こっちにくんなよ」
「なんだとクソガキ。いまここで分からしてやってもいいんだぜ?」
巨漢の男は俺の挑発に乗り、向かってくる。案外近場で見ると迫力がある。
「まあまあ、ここで争い事はよしましょうと」
そう言ってバグダードさんは仲裁に入ってくれた。
しかし、巨漢の男はバグダードさんを払いのけようとした。その時、バグダードさんは巨漢の男の耳元で何かささやいた。
巨漢の男は急にお腹を摩り始め、走り出した。
「だ、だめだ。漏れるぅぅ」
俺達はそれを笑って見つめていた。
「何をしたんですか?」
と俺が尋ねるとバグダードさんは笑って返すだけだった。
巨漢の男はトイレに駆け込み、止まらない腹痛に汗を流していた。
「あの野郎……何をしやがった」
項垂れながら足元を見ると、巨漢の男は氷ついた。足元が白く変色していた。
男は慌てて、様子を確認しようとすると足はまるで灰のように空に舞った。
「なんだこれ。なんだ!?」
男は悲鳴をあげて、そうして全てが灰になった。