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ロジハラ令嬢が年貢を納める時 〜貴様との婚約を破棄する!なんてワードは腐る程聞きました〜

作者: 草田蜜柑

「リリアーナ・ルッテンドルフ!貴様との婚約を破棄する!」


「あら、理由をお聞かせ願っても?」


「知れた事、貴様のような口煩く束縛気質な女と付き合ってられるか!」


「口煩いとは?

私は正しい事を言っただけ、それを聞き入れられなかったのは貴方でしょう?」


間違ったマナーを指摘したり浅学なところを指摘したり他の女と一緒にいる事を咎めただけ。

私は何も悪い事などしていない。

それを耐えられないというなら、それは正論を受け入れる事も出来ない愚かしい人間だという証明に他ならない。


「婚約破棄の件、承りましたわ。

ですが、今回の件、落ち度があるのはそちらです。

よって、慰謝料はそちらの家に請求しますがよろしいですわね?」


「な、何故我が家が……」


「貴方が、婚約者の指摘を邪魔なものとして退け、婚約者である私を放って他の女と逢い引きしていたからですわ。

正しい事を指摘していただけの私が慰謝料を払う筋合いは一切ありませんもの」


正しいのは私、間違っているのはこの男。

であれば、有責もこの男にのみ発生するもの。


我々貴族には常に陰の者が付く為、私の言葉が嘘でない事はすぐに証明されるだろう。


ふふっ、相手は伯爵家。

たっぷり、慰謝料は頂きますわよ。







私はリリアーナ・ルッテンドルフ、ルッテンドルフ伯爵令嬢にして長女。

下には次期跡取りの弟と、私の妹と言うにはあまりにも浅学で不真面目な愚妹がいる。


妹は男に媚びを売り、甘えるのが上手なアバズレ女で、弟も姉である私より妹を可愛がっている。

男ってどうしてこんなに見る目がないのか。

私の方がよほど美人で教養豊かで真面目で礼儀正しいというのに。


「お姉様、また婚約者さんに振られたの?」


「振られたのではなく、振らせたのよ。

あんな正論も受け入れられない愚かな男と結婚なんてしてられないわ」


まぁ、あんな人としての誠意も魅力もない男でも金だけはある。

ふふっ、次はどんなドレスを買おうかしら。

宝石も欲しいし、絵画も買いたいわね。


過度な贅沢は悪徳とされているが、クソ男から毟り取ったあぶく銭を散財したとて問題ないだろう。

むしろ経済貢献である。


「ふ〜ん……。

公式的な社交場でもないプライベートなところでチクチク細かいマナーを責め立てて?

相手が好みそうな令嬢とわざわざ交流を持たせて?

自分は愛想の一つも振らないくせに相手には細かいところまで気遣いを求める。

それがお姉様にとっての正しい令嬢様なの?」


「婚約者として、相手の至らないところを指摘するのは当たり前の事。

友人に婚約者を紹介するのも普通の事ですし、貴族令嬢が普段から表情をコロコロ変えていてはそちらの方が低俗さが滲むというものよ」


「へぇ、流石お姉様、ロジハラ……じゃなかった、正しさにおいては人一倍拘るね〜。

あたしなら、プライベートでまでそんなウザい事言う奴、親と教師だけで充分だけど。

恋人に上から目線でチクチク注意されまくるなんて真っ平」


まったく、こんな不真面目な女が私の妹なんて、恥ずかしいわ。

まぁ、実際には妹と言っても、身分の低い後妻の女の子供。

その女の子供が低俗でも仕方ない。

正直、うちの品位を疑われるし、跡取りとなる弟にとっても悪影響なのでとっとと出て行って欲しい。


さて、私は次の婚約者を見繕わないと。

次は真面目な方だと良いわね。

でも真面目さだけでは駄目、やはり経済力も大事だもの。

いざ慰謝料をふんだくろうにも、金のないところから取れる金額など限られている。


……いえ、別に慰謝料目当てに婚約を繰り返している訳ではないですわよ?

だって、先に不義理を働いたのはいつだって男性側で、私は正論を言っているだけだもの。

相手方がちゃんと誠意を見せてくれれば私だってそれなりの対応はするというのに。

全く、世の中の男性というのは不真面目な方が多くて困るわ。







次に私がお見合いを申し込んだ相手はスティール子爵家の跡取り令息であるブレッド・スティール子爵令息だ。


見た目は……まぁ、並よりはマシかしら。

本人は平凡だけどスティール家自体は商売を営んでおり、今脂が乗っている時期。

下位貴族と言えど、金銭は中々のものを持っている。


けれど、やはり下級貴族、マナーが成っていない。


「スティール子爵家では、食器は鳴らしながら置くものだと教わったのかしら?」


「あ、す、すみません、緊張してしまいまして……」


「それでも貴族なのかしら?

貴方は客の前でも緊張を理由に粗相をするおつもり?

たかだか食器一つ鳴らすだけで、相手はあなたを見下しますのよ?

一体これまでどういう教育を受けていらしたのですか?

それとも、あなたがただ不勉強の不教養なだけかしら?」


「も、申し訳ありません……概ね、商売は平民相手に行う事も多く、同年代の貴族よりマナーの修練に費やす時間が少ないもので……」


「言い訳ですわね。

不教養な上に言い訳癖のある殿方なんて、本来であれば願い下げですが。

この婚約は双方の家にとって利益のあるもの。

私は自らの感情だけで利益ある取引を無に帰する愚かな真似は致しませんわ。

と、言う訳でこれからよろしく致しますわ、ブレッド様」


「え、あ、は、はい……」


今一瞬、嫌そうな顔しましたわね、この男。

はぁ、こちらはただ正論を言っただけだというのに、何故そのいかにも「えぇ、婚約するの?嫌だなぁ、苦手だよ、この人」みたいな顔をされなければいけないのか。


むしろ自分の不教養を指摘してくれる存在がどれほど貴重だと思っているのか。

この男もそれを分かっていないのだろう。

この男も駄目ね、歴代の駄目駄目婚約者どもと同類になる臭いしかしないわ。

どうしても治らなかった場合、いずれ処分するしかなさそうね。







「すみません、リリアーナ様、あなたとの婚約を解消させてください」


あ~、まただ。

結局この男も今までの男どもと変わりなかった。

言葉を丁寧にしたところでやっている事は同じ。

私という婚約者がありながら他の女に惚れ、私が邪魔になったという身勝手な理由で婚約を破棄するというもの。

なぜ、世の男はこうも愚か者が蔓延るのか、私には理解出来ない。


しかも、彼の横にいるのはあろうことか私の妹とすら認めたくない愚昧、ルティーナだった。


「僕は、彼女、ルティーナ様を愛してしまった。

だから……貴方との婚約は解消したい」


「身勝手ですわね、貴族の婚約とは家と家との繋がり。

それを蔑ろにし、個人的な理由で婚約を破棄するなどあってはならない事ですわ」


「破棄じゃなくて解消ね。

なんでお姉様って無理に強い言葉に変換しようとするの?

破棄は一方的なものだけど解消は双方合意の前提がある分まだ互いにとってのダメージが少ないの。だから解消しようって言ってるわけ」


「そういう理由であれば私は却下しますわ。

貴族の婚約をつまらない惚れた腫れたで解消しては私の顔に泥が付きますもの」


「うわぁ、これまで何度も婚約破棄食らって来たくせに何か言ってるよ。

ぶっちゃけ、婚約解消より婚約破棄何度も突き付けられる方がよっぽど顔面泥まみれだと思うよ~?」


「下劣な男爵令嬢の娘如きが、口を慎みなさい……!

たとえ姉妹だとしても、私と貴方では立場が違うものと心得ていますの?」


「ごめんなさ~い、あたしぃ、下劣で低俗な男爵令嬢のぉ、しかも庶子の娘だからぁ、お姉様の言うマナーとかぁ、立場とかぁ、よくわかりませ~ん。

というか、家と家との繋がりが大事だっていうならそれこそ婚約解消しても問題ないじゃん。

私が結婚しようが、お姉様が結婚しようが、家の繋がり的には同じでしょ?」


「よろしい訳がないでしょう……!

家同士の繋がり的に問題がないとしても、わざわざ私との婚約が解消され、貴方が選ばれたとなれば、何も知らない愚鈍な人は私自身に問題があって解消されたと勘違いするでしょうが!」


「勘違いも何も、ガッツリそういう理由だと思うんだけど……」


婚約解消など認めない。

それを今ここで認めれば、私は世間に妹よりも下の女として見られる事になってしまう。


「これまで散々婚約破棄されるように誘導しておいて、婚約解消は嫌、なんて変なお姉様~。

ま、そうだよね。

婚約解消は双方の合意。

だから、片方に不義理があったとして裁判に掛けても、100:0で慰謝料を請求する事が出来ないんだもの」


「っ!」


「だから、お姉様もこれまで婚約解消は絶対にしなかった。

婚約破棄であれば相手の有責に出来るけど、婚約解消だと自分自身もダメージを受けるから。

普通は逆だけど、お姉様の場合、相手を貶めたり婚約者として一見して問題のある行動は一切取らないから、婚約破棄に持ち込めば相手の方に問題があるって言い張れちゃうんだよね~」


「何が言いたいの?

あなたは、私が婚約破棄されるように意図的に振る舞っていたというつもり?

私はただ、正しい事を口にしただけ。

それを迷惑がって他の女に靡き、私を蔑ろにして来た男達の方が被害者だとでも言うつもり?」


「……確かに、リリアーナ様の言う事は正しいですよ。

勉強になる事も多かったと思います。

けれど、人間は正しさだけでは生きていけないんです。

どうしたって、不完全で未熟で愚かだから。

怠けたくもなるし、手を抜きたくもなる、ズルもしたくなる。それは本来良くない事ですけど、それを全部否定されてしまえば、人間は窮屈さを覚えてしまう生き物なんですよ」


「そうやって、人間は、と一括りにして自分の怠惰さや不真面目さを正当化する。

本当に、あなたはそういう事が得意ですわね。

商人の息子として教わって唯一身に付いた事が、その言い訳癖という訳ですの?」


「……そうですね、もしかしたら世の中には、貴方のその徹底した正論を必要とする人もいるかもしれません。

でもそれは僕ではないんです。

僕は、至らないところがあったら指摘して叱る完璧な人より、同じぐらい至らないところのある人と二人三脚で歩みたいし、時に指摘したり見逃したり、適度に頑張って適度に怠け会える相手と伴侶になりたいんです」


「ぶっちゃけ、休日までスケジュールとかレッスンで埋められるのって大迷惑だし~。

何が悲しくて家族と飯食う時までめっちゃ細かいテーブルマナー指摘されなきゃいけないんだっつの。

こちとらお硬く止まった社交ダンスじゃなく、偶には羽付き扇子振り回してサンバ踊りたい時もあるんだよ」


あぁ……なんて愚かな馬鹿ども。

貴族の風上にも置けない怠惰な愚者どもが。


「……つまり、貴方達は私の方が間違っていると?

身勝手な理由で婚約を解消して、私を貶めて、それが正しい行為だと思っているのですね?」


「そうじゃない、確かに貴方は正しかったです。

僕の一存で婚約破棄してしまえば、間違いなく有責となるのは僕になる。

僕の一番の間違いは、君との婚約を了承してしまった事です。

あの時君は婚約する気満々だったし、身分の低い僕が断るのは無礼だと思って了承してしまった。

あの時、ちゃんと僕の気持ちを言葉にして、お見合いを流してもらえば、互いに傷を付けてしまう事もなかったと思います」


私との婚約自体が間違いだった……?

たかが子爵令息如きが、この私との婚約を間違いだったと?

あぁ、ここまで愚かなのか。

これまで多くの愚かな男を見てきたけれど、この男は格別だ。

元より、私と言う婚約者がいながら愚妹を選ぶ次点で頭がイカれているとしか思えない。


「婚約解消してください。

この件は、僕の落ち度が大きい。

当然、慰謝料も支払います」


「……嫌ですわ、婚約は解消しません」


「ねぇ、お姉様」


「何ですの?」


「お姉様って、人にばっかり正しさ強要するけど、自分は常に正しいって言いきれるの?」


「何を馬鹿な事を。

私はいつだって完璧よ。

少なくとも、常に完璧であるように努力を心がけているわ」


「あたしはそう思わないよ?

ロジハラで相手を追いつめて、嫌いにさせて、婚約解消じゃ都合が悪いから婚約破棄されるまで粘って、破棄されたらされたで相手だけを悪者にして慰謝料ふんだくって、そのお金で高いドレスや宝石買い漁って……お姉様ってさぁ、普通にクズだよね」


「なっ、私が、クズですって!?」


「てか、一歩間違えたら結婚詐欺だよね。結婚詐欺もどき?そもそも、相手の男の質がどの程度かってお見合いの時点で分からない?

お見合いで分からなくても事前に調査すれば分かるよね?うち、調査費用すら捻出できない貧乏男爵家でもないんだからさぁ。

お姉様、最初から本気でスペックの高い相手は狙わないで、金はあるけど本人の能力はそれほどでも、みたいな男しか狙わないじゃん。

しかも相手は伯爵家以下の家だけ。

そりゃそうだよね、身分上の家相手に裁判沙汰起こすのはリスクあるもん」


「わ、私は……ただ、身の丈にあった家柄を探しているだけで……それに、経済力は大事ですわよ。

愛さえあればお金など、と言っているのは頭の緩い平民だけ。

我々貴族の結婚は利益優先、ともなれば経済力のある家を優先的に選ぶのは当然の事」


「はぁ……お姉様って自己正当化するの上手いよね。

ブレッドの事とやかく言えるの?

それはそうと、婚約解消してくれないならあたし、お父様とお兄様に泣きつくからね?

分かってるでしょ?お姉様よりあたしの方が二人に愛されてるもん。

お姉様がブレッドを普段から家に連れて来るから、ブレッドと二人も仲良いし?

きっと私が泣き落としすれば、婚約解消も了承してくれると思うんだよねぇ」


「そ、そんな愚かな真似……」


弟と父を思い浮かべた。

……やりかねない。そう思った。

弟も父も、貴族としての責任感も何もあったものではないいい加減で見る目のない愚鈍な馬鹿だった。

私より妹を愛し、私の言葉より妹の言葉を信じる。

なんて愚かな男ども。


「そもそも、手癖の悪い妹がいるって分かってるくせに何度も自分の家に婚約者連れて来るとかありえないでしょ。

何度も席を外して私とブレッドの二人きりにするとか、頭膿んでるの?」


「……婚約者を家族に紹介するのは普通の事じゃないの」


「あたしなら、身内が婚約者と懇意になってるって疑った時点で家族と婚約者の距離を離そうとするだろうけどね。

お姉様は何度もブレッドを家に誘っていたけど、ブレッドの方が自分から家を訪ねてきた事はない訳だし?」


ああ言えばこういう。

何故?

私は正しいはずなのに。

これではまるで、妹の方が……。

いや、認めない、この優秀な私が、不真面目で身分の低い女の血を引く愚妹よりも愚かなど、あるわけがない!


「ほんと、馬鹿だよ、お姉様は」


「何ですって?」


「お姉様が婚約して来た男には、確かにロクでもない奴もいたけど、そうじゃない人もいた。

分かってる?

お姉様は婚約破棄する度、相手の男に全ての罪を押しつけて、自分は綺麗なままでいるつもりかもしれないけど……そんなに何度も何度も婚約破棄されるような女、周りだって気付くに決まってるじゃん?

これ、もしかして相手の男じゃなく、女の方に何か問題があるのでは……って」


「そんな事はありえないわ、だって私は完璧だもの、何一つ、瑕疵なんてない」


「婚約破棄される事そのものが瑕疵みたいなもんなんだけどなぁ。

はぁ、お姉様の完璧の基準がよく分かんないわ」


私は、それからも婚約解消は退けた。


しかし、後日、両家の話し合いが持たれ、私の意見は通らず、婚約解消が決まってしまった。

それに伴う、愚妹と元婚約者との新たな婚約も。


私は父の執務室に呼び出され叱られた。

訳が分からない。

なぜ私が叱られなければいけないのか。

私は正しい事を言っただけなのに。なぜ、私が悪者扱いされなければならないのか。


ううん、焦る事はないわ。

だって、正論を述べているだけで人との婚約を解消して、その妹と結婚するような非常識男だもの。

どうせ、妹とも上手く行く訳がない。

いずれ破綻する関係よ。

その時私に縋りついたとして、もう遅いのだから。






五年後


「何故?どうして、私にお見合い話が一つもないの……!?」


「いや、当たり前でしょ、あんなに片っぱしから婚約破棄ぶちかます不良債権女と誰が付き合いたいんだよ」


「あれは私が悪いんじゃない!全部、正論を受け止められない男の方が悪いのよ!」


「はいはい、聞き飽きたわ、その台詞」


私は22歳となった。


妹は21歳。

既にスティール子爵家に嫁ぎ、ブレッドと結婚。

二児の子を授かっている。


「あのね、お姉様は間違えた事は言っていなかったかもしれない。

でも、人間は正しさだけの生き物じゃないの。

そればっかり強要されても、苦しいだけなのよ。

前にも言われたでしょ?」


「黙りなさい!下民の血を引いた娘風情が!この私に上から目線で物を語るな!」


「……あと、そういう人を見下すような根性の悪さって、隠せてるようで全然隠せてないから」


クソッ、どうして私がこんな行かず後家みたいなザマになって、ルティーナが子爵夫人なんて立場になってるのよ……!

おかしいわよ!絶対!世の中間違えているわ!


「お兄様もとっくに結婚して近い内に子供生まれるっていうしさぁ、そうなったらお姉様、完全に邪魔者扱いされるね。

でも、今のお姉様を娶ってくれそうな相手なんて商人や男爵家の身分の低い相手で、しかもバツが付いてる人種ばかり。

バツ持ちでもまともな神経してたらお姉様なんて選ばないから、最後に残るのは好色家のキモデブ親父辺りかなぁ」


「そ、そんなの、ありえないわ!

この私に相応しいのは、もっと身分の高い、聡明で完璧で気遣いの出来る……」


「はいはい、そんなハイスペック男子はとっくの昔に売り切れました~。

あのね、最近流行りの婚約破棄小説にでも感化された?

婚約破棄されたら都合良く、もっとハイスペックでイケメンな王子様が見初めてくれると思った?

周りの男どもが気付かなくても、真のイケメンであれば自分の真の魅力を理解して手を差し伸べてくれるって夢見てたの?」


「っ」


「うぇ?まさか図星?

お姉様、意外と乙女~」


「う、煩いわよ!

現実は空想の世界よりも非合理的ですわ。

女を見る目のない男ばかり。

私のような優秀な女を無価値と判断する無能ばかり」


「まぁ、普通、優秀な女なら誰かが拾うだろうし?

所詮、お姉様の優秀さはダンスやマナー、お勉強が出来ますって程度のもので、その優秀さも結局、男を捕まえられないようじゃ生かしようのない取り柄だし。

22歳、独身、伯爵令嬢です、の身分じゃなんの意味もないスキルなの」


「くっ……!」


「お姉様の未来は二つ、めちゃくちゃ条件の悪い男と金で買われて結婚するか、いっそ修道院に入っちゃうか。

個人的には修道院に一票」


「認めないわ、こんなの……こんな結末、認められる訳ない……!」


「まぁ、そうなるように振る舞っちゃったのはお姉様だから。

修道院も犯罪者向けの場所でもなけりゃそんな悪いとこじゃないよ」


くそっ、くそっ!一体、どこで間違えたというの……?

私は、何も間違えた事は言っていないのに。

常に正しい事だけを言って生きて来た私がこんな目に遭うなんて、世の中は理不尽だ。







その後、私は三年間、結婚相手を探したが良い相手がおらず、いたとしても私のお眼鏡に叶うような物件でもなく、取捨選択している内に父に修道院へ入れられた。


私は生涯を、愚かな男や愚かな家族への恨みを神へ祈り届けながら暮らす事となった。




一体、どこで間違えたというのか。



Q、完璧と言われる令嬢が何故か婚約者の王子から婚約破棄されてしまいました。その理由は?


A、令嬢が普段からロジハラを繰り出して王子の好感度を下げていたから


なんて事を考えてロジハラ令嬢書いてみました。

ロジハラというのは、ロジックハラスメント……正論や理論で相手を追いつめるハラスメントです。

モラハラと似た感じもありますが、モラハラは言動そのものが完全アウトなのに対し、ロジハラは言っている事自体、間違っているわけではない、というタチの悪い部分があります。


別に間違った事は言ってないけどここまで強くあれこれ言われたらそりゃあ嫌いにもなるよね……なんて書こうと思ったんですが、書けば書くほど段々とリリアーナがロジハラ関係なくただのクズ化した気がします。


一応、本音はどうあれ婚約者に対して間違えた指摘はしてないんですよね。

間違ったマナーを片っぱしから指摘して、知識の足りない部分はチクチクと指摘して、他の女の知り合いを自分から作らせておいてその女と良い雰囲気になるとチクチク小言を入れているだけです。

……ラストは普通にクズ要素でした。


地味にリリアーナの一人称を書くのキツかったです、妹視点で書いた方が良かったかも、と最後まで書いた後に思いました。

周りに指摘されても意地でも自分の非を認めず、自分が正しいと思いこむ精神ってどうやって表現すれば良いんだろう、と悩みながら勢いのままに書きました。


妹ちゃんにはもっと強めにツッコミと追及をして欲しかった気もしますが、それをすると会話がめちゃくちゃくどい事になり、リリアーナの意地でも自分は悪くないスタンスを難産しながら書き連ねる事になり、妹ちゃんの性格がより悪くなってしまう気がしたので適当に切りあげました。


駄目な部分の指摘自体は有難いんですけどね……。

作者は言われないと何が悪いのか気付けない駄目人間なので、指摘してくれる人間は有難いです。

ただ、豆腐メンタルなのでキツく言われるとめっちゃ落ち込みます。


指摘と説教とロジハラ……ん~、深く考えると難しい。細かい区切りが出来ない。

とりあえず、相手を婚約破棄に追い込む事前提でガミガミするのはロジハラでしょう。

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