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ベニヤロボ ベニヤン

作者: 千里手

惑星マグネリア 暗暦 0013年9月 スエルの広場

豊富なマナによりかつて魔術の粋を極めた惑星マグネリア、そこは突如現れた『邪王ヘル』の侵攻により暗黒の時代を迎えた。

ヘルの軍勢は草木や大気、あるいは捕らえた人々の命からマナを搾り取ることで恐るべきスピードで力を増していった。

マナを失ったことで大地は枯れ、水は汚れ、人は腐り落ちる。もはやマグネリアでヘルの加護が無き場所ではまともに生きていくことすら難しい状況であった。

マグネリアに元から存在していた強大なマナを持つ存在『聖霊王ホーリー』。彼を中心にヘルに逆らうレジスタンスが発足するも、レジスタンスはヘルとの決戦に敗北。

敗れたホーリーはヘルにマナを奪われる前に自らをカードに封じ、レジスタンス達にそのカードを託した。

「ハァ、ハァ、ハァ」

「逃がすな!囲い込め!」

追手から逃げるレジスタンスの少年『シー・ラッカ』の足に魔法の弾がかすめ、シーはその場に倒れこむ。

「うっ!」

倒れたシーに向かいヘル軍の幹部『ノイカ・ハルク』が近付く。

「よく逃げたよシー・ラッカ君。でも残念だがこれまでのようだね」

「よりによって俺の追手がお前とはな、ノイカ」

「偶然ではないよ。君を追うことを志願したのは私だし、追手に幹部が必要と判断されたのは君の実力があってこそだ」

「……」

ノイカの話を聞きながら、シーはノイカにバレないように魔法陣の用意をする。

「さて、私としても度々戦ったライバルを殺すのは忍びない。おとなしくホーリーのカードを渡せ。私が掛け合えば命だけは助けてもらえるだろうさ」

「……嫌だと言ったら?」

「殺して奪う。ヘル様の下で一般市民としてそれなりの幸せを享受するか、尊厳高く無意味な死を迎えるか、負け犬に選ばせてやると言っているんだよシー・ラッカ君」

「死ぬにしても、ホーリー様は渡せないな」

「オイオイオイオイ、聞いてなかったのか?ホーリーを渡すか、死んで奪われるかの2択だと」

ノイカの言葉を遮るように、シーが用意した魔法陣が光った。

「これは……転移の魔法陣か!」

「鬼が出るか、蛇が出るか!」

「待て……」

数秒にも満たない時間で光は消え、それと同時にシーも姿を消していた。

「……悪あがきにすぎないな。残った魔法陣を解析してマナを流しなおせば近くに転移する。第一、もはやマグネリアにヘル様の手の届かぬ場所はないというのに」

苦虫を噛み潰したような顔をしながらノイカがつぶやく。

「いいだろう。仏心を出せばつけあがるのなら、この手で仕留めてやろうじゃないか。シー・ラッカ君」





惑星地球 西暦 2037年9月 F大学付属高校

F大文化祭からちょうど一週間前。時計が午後8時を回った頃、私は学校から貸し出された巨大なガレージの中で個人で展示する15mほどの巨大ロボ……のハリボテを作っていた。

「よーオタ子ー。文化祭の準備できたー?」

後ろからかけられた間の抜けた声、略してマヌケな声に振り返ると、そこにはいつでも張り付いたような笑顔をした学友、翼がスキー板とストックを持って立っていた。

「完成したわよ。昼休みに先生にチェックしてもらったし、あとは当日を待つだけ。ところでそのスキー板はなんなの翼」

「んー?これ使って飛べば気持ちいいかなーって」

「ああ、またどっかで飛んだのね。バカと煙は高いところが好きって言うものね」

「それで言ったらあたしバカの方かな」

「煙の方に言うことないわよこの言葉」

「んーそっか。ところでさあ」

翼の表情から張り付いたような笑顔が消え、何かを見透かすような目で私を見つめる。

「オタ子、ここで何してんの?」

「……展示するロボ作ってんのよ。知ってるでしょ」

「でも巨大ロボ、完成したんでしょ?」

「完成してもメンテは必要よ」

「授業終わって3時間も?もう部活も終わってる時間だよ。何か問題があった?」

「まあそんなところよ」

「問題があったなら、先生連れてきてもう一回チェックしてもらわなきゃダメだよ。呼んでこようか?」

「……ふぅ、まああんた相手にごまかす理由もないか」

翼の意地の悪いほどの追及に、私は観念して翼には計画を話すことにした。

「あんたの予想通り、こっから中身いじるのよ」

「あ、やっぱりー。動かすの?」

翼の表情に笑顔が戻る。あの顔は正直苦手だ。

「腕だけならもう動くわ、制御系のあれこれ作るために工学部棟で出たシステム更新できない廃品のPCから使えそうな部品根こそぎパチってきたの。コクピットはゆったり4人乗りよ」

「それ犯罪じゃないの?なんとか横領ってやつ」

「まあね」

「まあねって」

「あんたも勝手に学校の屋上入ったりしてるでしょ。あれ建造物侵入って犯罪よ」

「度合いが違うと思うけどなー」

「同じよ。学校だって学生から犯罪者出したいわけじゃないんだから、廃品持ってっても屋上入っても揉み消せるなら揉み消すわ」

「そんなもんかー」

「待ちなさい!」

ガレージの入口の方から叫び声がする。

振り返るとそこにはメガネをかけたクラス1のまじめっ子、由瑠(ゆる)さんがいた。

「歌子さん!翼さん!あなたたち!さっきから聞いていれば!」

「あ、メガネだー」

「何しに来たのよメガネ」

由瑠さんは怒りを隠す様子もなく、私の方に近付き口を開いた。

「無許可でスパイラルカイザー号を動かすなんて私が許しませんよ歌子さん!」

「私のロボに勝手に名前付けんなメガネ」

「そもそも怒るところそこなの?」

「じゃ、じゃあ何て名前なのよこのロボ!」

「いや、特に決めてないけど。外観塗装したベニヤ板だし、ベニヤンでいいんじゃね?」

「うはーテキトー」

「適当に決めるくらいならスパイラルカイザーでもいいでしょ!」

「黙ってろスパイラルメガネ」

「ぐるぐるメガネー」

「普通のメガネよ!というか歌子さんも翼さんもメガネって呼ぶのやめなさい!私には由瑠って名前があるの!」

「じゃああんたも私のことオタ子じゃなくて歌子って呼べよ」

「え、ご、ごめんなさい私、歌子さんのことオタ子って呼んでた?」

「うんにゃ歌子って呼んでたよー」

「歌子さん!」

「うわメガネがキレた」

「やーい由瑠ー」

「だからメガネって呼ばないで……待って!?やーい由瑠はおかしくない翼さん!?」

私と翼で由瑠さんをからかって遊んでいると、ガレージの入口から謎の男が転がり込んできた。

「ハァ、ハァ、これは……巨大な人?いやゴーレムか?」

「あん?あんた誰?悪いんだけど作業中だから出てってくれる?」

「ここがどういう場所かわからないが、これの心臓部にホーリー様を憑依させればチャンスはあるかもしれない」

私の言葉を無視して謎の男は巨大ロボ……ベニヤンの方を見てよくわからないことを言っている。

「いや、ちょっと出て行ってって」

「どけ!」

「うわっ!」

謎の男は私を突き飛ばし、組んでいる足場を上ってベニヤンのコクピットへと向かう。

「ちょっ、大丈夫オタ子!」

翼が珍しく慌てた表情でこちらへ駆け寄ってきた。

「大丈夫、ちょっと転んだだけ。それよりあいつ捕まえて!」

私が立ち上がり、私と翼、そしてなぜか由瑠さんが謎の男を追いかけコクピットへと向かう。

「待ちなさい!スパイラルカイザー号に乗るのは私です!」

足場から突き落とそうかなこいつ。

「ハァ、ハァ、ホーリー様!我らをお救いください!」

謎の男は私たちより少し早くコクピットにたどり着き、取り出したカードゲームのカードらしきものを力いっぱいコンピュータに叩きつけた。

「なにしてんのよ!制御系直すの大変なのよ壊れたらどうしてくれんの!」

「これ……ガーコマのカード?でも見たことないカード」

「メガネなんか知ってんの?」

コクピットに次々乗り込み、私は謎の男に掴みかかり、翼と由瑠さんはカードを見ていた。

「離せヘルの手下ども!巨大ゴーレムは俺がもらう!」

「誰が手下だ!つーかヘルって誰!」

「ヘルを知らない?君はいったい」

謎の男があっけにとられたような顔をしたのと同時に、ガレージの入口からバカみたいな笑い声が聞こえてきた。

「ハハハハハ!逃げきれなかったようだなシー・ラッカ君!」

「うわまた変なの来た」

そこには奇妙な男が5mほどのロボットのようなものを引き連れ立っていた。

「ノイカめ、素性はわからないがこの巨大ゴーレムで蹴散らしてやる!」

シー・ラッカと呼ばれた男がカードに手をかざすと、システムも起動していないのにベニヤンが歩き始めた。

「わわ、オタ子、これどうなってんの」

「知らないわよ!まだ腕動かすプログラムしか入ってないのに」

「行けぇー!」

ノイカと呼ばれた男の横にあるゴーレムを1体蹴飛ばし、吹き飛ばす。

しかしその代償にベニヤンの右足が割れてしまい、バランスを崩して倒れ、シー・ラッカは腕を怪我してしまった。

「ぐっ……なんだ?このゴーレム脆いぞ!」

「ベニヤなんだから当たり前でしょうが!」

「とんだ見かけ倒しだな。だが乗り込むのは面白い趣向ではないか、シー・ラッカ君とレジスタンスの女ども。敬意を持って真似させてもらおう」

ノイカの周りのゴーレムが集まり、組みあがり、15mほど、つまりベニヤンと同じサイズとなった。

「さて、とどめを刺させてもらうか」

ノイカが乗り込んだゴーレムが鈍い動きでこちらに近付いてくる。

「くっ!」

怪我の影響か他に理由があるのか、シー・ラッカはベニヤンをまともに動かせないようだった。

「どいて!どうやって歩いたか知らないけど、とにかく距離をとらないと」

操縦席からシー・ラッカを退かし、開いたままのコクピットの蓋を閉じ、システムを起動してキーボードを取り出す。足の動かし方がわからないので腕で這いずって逃げようとする。

「何をやっているんだ!歩くイメージくらいはできるだろう!なぜ腕で動く!」

「歩行プログラムなんてまだ組んでないのよ!歩けないの!」

「イメージしてホーリー様のマナを借りれば素人でも歩かせるくらいできるだろう!」

「何を言ってんのよあんたは!」

ゴーレムにいよいよ追いつかれる。その瞬間のことだった。

「スパーク・ウィップ!」

光でできた鞭がベニヤンから現れ、ゴーレムに巻き付き、ゴーレムの動きを封じてしまった。

「で、できた!」

声の主を見ると由瑠さんがシー・ラッカの持っていたホーリーと似たデザインのカードを持っていた。

「そのカード、まさか君は魔術師なのか?」

「メガネ?今のメガネがやったの?いったいどうやって」

「あのホーリーってカードがガーコマのカードだったから、ひょっとしたら使えるんじゃないかって」

「ガーコマ?それはいったいなんだ?」

「ガーディアン・コマンダーズ。人気のカードゲームですよ」

「どっかで見たと思ったら、兄貴のアニメ見てたやつかあのカード。メガネもやってんの?」

「なんかメガネ学校にカードゲームのデッキ持ってきてたみたいだよー」

「あんた普段真面目ぶってるくせに何持って来てんのよ」

「い、今はいいでしょそんなこと!それより今スパイラルカイザー、いいえ、ホーリーカイザーは魔術的な何かの恩恵を受けることができるの。強くイメージをすればそれを叶えることができる。そうですよね?えっと、シー・ラッカさん?」

「ああ、限界はあるが細かく正確にイメージできればそれだけ強力に効果が出る」

「そんな非科学的な」

「あのゴーレム含め非科学的なことなんていくらでも起きているわ。納得いかないなら試してみて。ホーリーカイザーの足が直るように念じてみるの」

「……どうでもいいけどこいつの名前はベニヤンよ」

私はベニヤンの傷を見つめながら、ベニヤが割れる前の状態をイメージした。

するとベニヤンの右足はあっという間に直ってしまったのだった。

「……翼、スキーのストックちょうだい」

「はいよ」

私は翼からもらったストックをコクピットの横にぶっ刺した。

「翼、これ、操縦桿だから」

「はいよ」

私は操縦席から離れ、翼と入れ替わる。

「ちょ、ちょっとどういうつもりなの。ホーリーカイザーは歌子さんが作ったんだから歌子さんが動かした方が」

「無駄よ。ちょっとやそっとうまく動けたところであのゴーレムに攻撃は通らない」

ベニヤンの素材では先ほどのように殴った方が割れる。もっともイメージで動かすのなら私よりもスポーツの経験が豊富な翼の方がうまく動かせるだろう。

「ならばここは逃げるべきか」

「それも無駄よシー・ラッカ。あいつ多分、今のうちに装甲を削って素早く動けるように調整してる」

「ほう、気付いていたか」

ゴーレムの中からノイカが会話に割り込んでくる。どうやら集音マイクとスピーカーのようなものがついてるようだ。

「スパークウィップだっけ?あれの効果が切れると同時に襲いかかってくるわ」

「じゃあどうすれば」

私の言葉を聞いた由瑠さんが絶望的な顔をする。

「一つだけ勝算がある。メガネ、ううん由瑠さん。あなたがそのカードで足止めをするの」

「私が?」

「私も翼もそのカードゲーム遊んだことないもの。あなたが足止めして、翼が逃げるの」

「しかし歌子とやら、いくら足止めしてもノイカは振りきれないぞ」

「逃げ切るつもりはないわ、逃げながら……」

「オタ子がイメージしてベニヤンの構築を組み替えるんだよね」

私の言葉を遮るように翼が言った。その表情は私の苦手な何かを見透かす表情だった。

「そうよ、これはベニヤンの構造を細かく把握している私にしかできない。私と翼と由瑠さん。それぞれが自分にしかできないことをやる。勝算はこれしかない」

私は決意を秘めたような表情で由瑠さんにそう説明した。

「さて、装甲のベニヤの分子構造からいじるとして。聞こえてるならその間少し話せるかしらノイカさん」

「良いだろう。どうせお互い今は動けないのだ。話してみろレジスタンスの女よ」

私はベニヤンの装甲から酸素と水素を分離させ、軽くて丈夫なカーボン繊維をイメージし、変質させながらノイカの話す。戦うには気休めだが、動くには十分だ。

「いやぁ、それが勘違いなのよね。私たちヘルもホーリーも知らないしレジスタンスにも入った覚えがない。戦う準備はしてるけどそうせず済むならそれがベストなの。シー・ラッカの身柄を引き渡すから私たちのこと見逃してくれない?」

「ちょっと歌子さん!」

真面目ちゃんな由瑠さんは私の言動を咎めるが、私たちは一向に巻き込まれた被害者だ。

「ヘル様を知らないだと?マグネリアにいてヘル様を知らぬわけがない。嘘が下手だなレジスタンスの女よ」

「また知らない単語出てきた。そうはいっても知らないものは知らないのよ。私たちにとってシー・ラッカは急に来てベニヤンを奪おうとした不届きものでしかないの。引き取ってくれるなら拒否する理由はないわ」

「ふ、残念だがそういうわけにはいかないな。たとえ君たちがレジスタンスと無関係だとしても、これだけの巨大ゴーレム、ベニヤンだったか?それを作り出し、魔術を使うものがヘル様に従っていない。それだけで抹殺するには十分な理由なのだよ」

「……やるしかないってわけね。OK、それなら話はここまでよ」

私は覚悟を決め、ベニヤンのカーボン化を終わらせる。スパークウィップの光はすでに絶え絶えとなり、じきに効果が切れることが目に見えてわかった。

「ふ、ふふふ……」

スパークウィップの効果が切れる直前、ノイカの不気味な笑い声が聞こえてきた。

「残念だったな未熟なレジスタンス達よ!作戦というのは裏をかけるから有効というもの!バレているのならば速攻で決着をつけに行くに決まっているだろう!」

スパークウィップの効果が切れ、時間が経つほど負けの目が増えると踏んだノイカは速攻で決着をつけるために突撃をしてくる。

おそらく装甲を削ってでもスピードを上げたのだろう。長時間逃げることは不可能だが……

「「かかった!」」

「なにっ!?」

私と翼の声が揃う。

翼の操縦によりベニヤンがひらりと宙返りをして突撃するゴーレムの頭を飛び越す。

「いっけえ!」

私は分子運動の活性化をイメージしてベニヤンの手に炎を灯す。

すると装甲をカーボン化するときに生まれた水素と酸素に引火して激しく反応、大爆発を引き起こす。

爆発が最も激しい地点は先ほどまでベニヤンがいた場所……つまりは今ゴーレムのいる場所だ。

スピードを上げるために薄くなったゴーレムの装甲はあっけなく剥がれ落ち、脆いコクピット部分が見えた。

「由瑠さん!武器か攻撃を!」

「メガネ早く!」

「わ、わかった!マジック装備(ギア)地を穿つ光槍(ライトニング・スピア)!」

ベニヤンの前に光の槍が現れ、翼がそれを掴む。

「チェストォォォ!!!」

光の槍がゴーレムのコクピットを貫き、ゴーレムの動きが止まる。

私たちの勝利だ。

「……うへー殺しちゃったよー」

「緊急避難よ、緊急避難。気にすることじゃないわ」

「ちょっと!歌子さん!作戦と違うじゃない!」

「あの爆発、君も魔術師だったのか!?」

由瑠さんとシー・ラッカがそれぞれ問い詰めてくる。

「魔術師とは恐れ多いわね。そこまでプログラム得意じゃないわ」

「よく言うよオタ子理数全般強いくせに」

「はいはい話聞いてないでゴーレムの解体でもしてなさい。作戦のほうは二の矢ってところかな?騙されなかったときは言った通りの作戦で、騙せたときは今回みたいに爆破して倒すって感じ」

「ふあーい」

翼が気の抜けた返事をして光の槍でゴーレムを解体しようとしたとき、不意にゴーレムが再起動した。

「何?自律起動?いや、これは」

ゴーレムの傷がふさがり、死んだはずのノイカの笑い声が響く。

「ふふふ……ははは……アーハッハッハッハ!残念だったなレジスタンス達よ!お前たちはよく戦ったが、私を1度しか殺すことはできなかった!」

「まさか、ホムンクルスか!」

「ホムンクルス?何よそれ」

「マナを分け与えることで動く人形だ!マナが枯渇するまで何度でも復活する!」

「そうとも!そしてヘル様の加護を受けた私はほとんどマナを使わずよみがえることができるのだよ!」

マナとやらが枯渇するまで何度でもよみがえり、よみがえるためのマナは必要ない。それはつまり。

「不死身ってこと!?」

「消費は0ではない!戦い続ければいつか!」

「甘い考えだシー・ラッカ君!そもそももう私を殺すことはできんよ!」

ノイカはゴーレムの装甲の一部を剣に変え、すさまじいスピードで攻撃をしてきた。

ノイカの攻撃を翼はとっさに光の槍で防ぎ、機体ごと後ろに飛ぶ。

「ほう、防ぐとは。先程の宙返りといい、動かしているのは歴戦の戦士か」

「まあねー、体動かすことはたくさんやってきたからねー」

「由瑠さん!さっきの作戦、今度こそやるわよ!」

「わ、わかりました!」

ノイカの猛攻に対して翼が防御に徹して、由瑠さんがカードで援護をして、私が傷を修復する。

今は何とか対応できているがおそらくそう長く持つものではない。

致命傷をもらう前に何か方法を考えなければ。

装甲を厚くして攻撃を防ぐ?ダメだ、動きが鈍くなって攻撃を受けきれなくなる。

なにか銃器を体に付けて戦う?ダメだ、いくら翼でも体に埋め込んだ銃器を使いこなした経験なんてないだろう。

いっそジェット機を作って逃げる?ダメだ、ベニヤン内部の素材では材料が足りない。他に使えるのはせいぜい空気と足元のコンクリートといったところだ。

ガレージの外に出て素材を拾いながら戦う?ダメだ、ここまで装甲を捨てて素早さに振っている相手に、そこまで逃げ切れない。

「クソッ、何か方法はないの!」

「マナが問題なら、ランデスさえできれば」

「ランデス?何か手があるの由瑠さん?」

「ガーコマのカードの中にはマナを破壊するカードがあるの。でも……」

「でも何よ!」

言いよどむ由瑠さんに焦った私は思わず掴みかかる。

「が、ガーコマはマナの属性次第で使えるカードが違って、私の知る限りホーリーのマナで使えるランデスカードは1枚しかないの。そしてそのカードは自分も相手もマナが使えなくなるカードなのよ」

「つまり?」

「そのカードを使うとホーリーのマナも使えないからホーリーカイザーも動かなくなっちゃうのよ!その上時間が経てばマナが回復するカードだから結局ゴーレムも再起動するわ!」

「……それで構わない。それを使って」

私は少しだけ考え、そう言った。

「でも、デッキに入ってないの」

「イメージするのよ。そのカードを使うって強くイメージすればカードすら作り出して使える。そうでしょシー・ラッカ」

私はシー・ラッカの方を向き、確認をする。

「あ、ああ。たしかに使えるだろうが、それで何とかなるのか?」

「オタ子が何とかなるって言ってるんだから何とかなるよー。というかもうそろそろ限界近いから早くしてー」

「わ、わかった、そこまで言うならやってみる」

「翼、今からしばらく私と由瑠さんは援護できない。頼める?」

「オッケー。信じてるよオタ子」

由瑠さんは覚悟を決めた。翼は時間を稼いでくれる。あとは私だ。

「あのカードを引けば勝てる……私ならあのカードを引ける……!」

「フハハハ!マナを破壊すると聞いたときは焦りもしたが、共倒れですらない死までの時間稼ぎに全力を尽くすとは、哀れなものだな!」

「オタ子の話聞いてなかったのかな?メガネがカードを使えば何とかなるんだよ!」

「淡い期待だな!しかしそんなものすら私がへし折ってあげようじゃないか!何せ1度殺されている恨みもあるのでね!」

「うっ、しまった!」

ノイカの攻撃に弾かれ、光の槍が遠くへと飛んで行ってしまう。

「ハハハ!そーら次は腕だ!」

防御の手段を失い、続けざまに左腕が切り飛ばされる。

「これでトドメ!」

ノイカが後ろへとび下がり、コクピットに狙いを付ける。その瞬間だった。

「ホーリー・スタン!自分のマナが相手より多い場合に発動できる!すべてのマナを使用不可にする!」

由瑠さんのカードの発動がギリギリで間に合い、ベニヤンとゴーレムが機能を停止し、遠くで壁に刺さってる光の槍が消える。

そして……私の方も何とか間に合った。

「ほう、やるじゃないか。だがお前たちの言っていた通り、ベニヤンも動くことはできない。動けない以上決着をわずかに先延ばしにしたに過ぎないのだよ」

「翼、席変わって」

「うん、任せた」

私が操縦席に座り、再びキーボードを取り出す。システムをリロードしてプログラムを適用する。

「な、なんだ?マナがないのになぜ動ける!」

「おあいにく様。ベニヤンはマナで動く方がイレギュラーなのよ」

私がイメージの中で書いた簡易的な歩行プログラムはホーリーの力により既にシステムに組み込まれている。バグった様子もなくベニヤンはゴーレムに向かい歩きだす。

「やっぱり私、魔術師かも」

ゴーレムの前に来た私は残っている右腕でゴーレムに掴みかかる。腕は元から組み込んであるプログラムでかなり精密に動く。ゴーレムの装甲はむしり取られ、コクピットが、ノイカの姿が露わになる。

「ひぃっ!」

小さな悲鳴を上げるノイカを、私はベニヤンの右手で掴む。

「待て!わかった!君たちはレジスタンスではない一般市民だ!ヘル様のことは今から知ればいい!私が教えてやるとも!だから」

「いまさらごちゃごちゃと、うるさいんだよ!」

命乞いをするノイカを私は握りつぶす。

プチッ、あるいはぐちゃっ、だろうか。ベニヤンの手の中でノイカが潰れ、ノイカの死体とゴーレムが崩れ去っていく。

「……今度こそ終わった?」

「ああ、ノイカの最期だ」

「はぁ、何の感慨もないわ。見知らぬ人と見知らぬ人も抗争に巻き込まれただけだもの」

「この期に及んでそう言うということは、君たちは本当に無関係なんだな。巻き込んでしまって本当にすまない。あとでヘルとホーリー様について詳しく説明させてもらおう」

「あーそれはそれはどうでもいいんだけどさ」

私はガレージの中を見渡す。

結構な規模の水素爆発の痕、戦いにより付いた無数の傷跡、大量に積まれた土塊、そしていま乗っている材質の変わって左腕のとれたベニヤンの姿。

「どうすっかなー、これ……」

ガレージに残る事件の傷跡、これをどう処理して、先生にどう言い訳するか、文化祭までに直せるのか、私は頭を抱えるのであった。

あとがきのようなもの

こんにちは、作者です。

本日は私の作品を手に取って頂き、あまつさえ私の拙い文章を最後まで読了してくださり、まことにありがとうございます。

ネット媒体で『手に取って頂く』という表現が正しいかは一考の余地があると思われますが、感謝の気持ちは変わりません。重ねて感謝を申し上げます。

さて、物語も終わりここからはあとがきタイム。本当に読む価値のない無意味でうろんな文章が羅列されます。

それでも読みたいという奇特な方はどうぞお進みください。


茶渋ってあるじゃん。

水筒についたあれ落とすためにスーパーにクエン酸買いに行ったのよね。クエン酸効くらしいから。

売ってねえのよクエン酸。スーパーに。

需要がないのか探し方が甘いのかね。近所のスーパー全部重曹は売ってるけどクエン酸売ってないの。ふくらし粉にも使うもんね重曹。炭酸水素ナトリウム。

そんじゃあスーパー以外もみてみようって100均やらホームセンターにも行ったんだけどさ。どれもこれも掃除用で食用クエン酸売ってないの。

まあ実際するのは水筒洗いだから掃除だし、多分成分的には問題ないんだろうけどやっぱ気になるじゃん。口に入るもんだし。俺クエン酸素人だし。差額大した事ないし。

そんなん気にするくらいなら普段のジュース控えた方が多分圧倒的に健康にいいんだけどね。

それで結局薬局に買いに行ってんの。売ってたよ1kgの食用クエン酸。やっぱ頼れるのは科学っすわ。ジュースも買った。

それで買ったクエン酸馬鹿みたいに余ってるんだよね。所詮茶渋落としのためだけに買ったから。他に使い道なくて。

料理にも全然使う機会ないし。水回り洗い終わったらもう重曹と混ぜてぶくぶく楽しむ以外やることない。味は微炭酸。そりゃ需要ないからスーパーに食用置かないわ。ワロス。


それでは皆様、ネットの何処かでまたお会いしましょう。

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