こんとん
作者名を、混沌に住まうものにするつもりでしたが、
ホラーっぽいのでやめました(笑)
『混沌 (ケイオス)』 -うつくしさ みにくさ-
世界は美しい
そしてその中で
人だけが汚い
何かでみた記憶
そうした言の葉が響いてきたのは
いつだろうか……
最近感じること
世界は混沌に塗れている
けれども
それは当たり前のこと
人の思う世界は
人が作り上げた世界
人は混沌とした存在なのだから
だからこそ世界は
混沌としたものになるのだから
ひとはうつくしさとみにくさ
それぞれを合わせ持っている
こんとんとしたもの
人という存在
美しさと醜さをもつもの
右手で悪行を成し
左手で善行を重ねる
うつくしきものが善か
みにくきものが悪か
それはわからない
うつくしさの先にあるもの
みにくさの奥に潜むもの
果たしてそれは何なのか……
混沌を嫌うもの
その作り出すせかい
人工の世界
人の創造する人工の知性
二つの指で織り成す肯定と否定
それは表層のみの知性にも思う
人がそう成り行くようにも想う
人の目指す一瞬の幸福と官能
望みを肯定し素早く体現するものだと
整然としたきれいな映像世界
デジタルの整った製造物
ゼロと一とで組み上げ表現されて
ゼロと一とで取捨選択した結果の
ゼロと一とで出来上がった平均的な甘露
きれいという共通認識で組み合わされ
枠からはみ出すものを排除した
機械的に造られた遊びのない世界
ひとつの隙も無く整えられた世界
映像や出来事の事象
瞬間だけ切りとられて造られた美しさ
それらはきれいで矛盾なく整っている
一瞬を切り取られた映像の世界
止められた時はとても美しく
静寂と精緻とがきれいに整え纏められている
時という全体から切り離された精緻な美しさ
美しいと感じつつも
どこかしら平面のようにも見える
何故だろうか?
始まりから終わりまでの存在
世界はそうしたもので出来ている
人もそう
人は時間という流れの中で生きている
在るときに生まれ
時とともに育ち
時とともに学び成長し
時とともに心を変えて
時には苦しさとともに変節し
時には悲しみとともに後悔し
そうして時とともに
よきものにも悪しきものにも変わる
時とともに姿を変え
やがて老いて去りゆく
時の中にたくさんの想いを残して
時間という厚みの中から切りとられ
存在への想いすら肯定されず
一瞬の整った姿だけを肯定し
残りの全てを否定され
組み上げられた枠の中の最上の存在
手心なく
感情なく
想いすらなく
二つの肯定と否定
ゼロと一で造られるもの
ゼロと一との間に
人の想いを挟めたら
そんなふうに想うことがある
時を切り取るもの
そこに挟まれた
人の持つ美しさの選択が
整えられた世界を作る
凄惨な出来事にも
醜さを映し出す映像にも
人の切り取る一瞬には
美しさが垣間見える時がある
あるいは美しさの中へと
そっと佇むみにくさも
みにくいものが汚いわけではなく
きれいなものが美しいわけではなく
醜さの中に美しさが隠れていることもある
整えられた中に汚さが秘められていることも
うつくしさのみにくさ
きれいというおもてがわにかくれたものは
なんだろう……
秘められた美しさだろうか……
それとも……
混沌というものの見にくさのなかに
秘められた美しさと醜さが混じり合う
きれいさや美しさのなかの見にくさ
みにくいものは
じつは本当にみにくいものであったり
かくされた美しさであったりするのかもしれない
人の心のように
人の世界のように
瞬間を心なく切り取られた美しさ
厚みのない整然と変わらぬきれいなもの
それは死のようだともおもう
混沌というみにくさのなかで
秘められたうつくしさをさがす
手にするものは
うつくしさのなかのみにくさか
みにくさのなかのうつくしさか
二本の指では探せまい
少なくとも今は未だ
二本の指で至るとき
出来るなら想いを捨てないでほしい
混沌というなかにあっても
美しさを失わないもの
みにくくとも
みえにくくとも
それは必ず在るはずだから