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偽の財閥令嬢ダブル・ライフ 非科学的な推理ヒドゥン・トゥルース  作者: 桜語文化
第一章 人間四月芳菲盡《人世の四月の香りがなくなれば》
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第四十話 地獄と天国

 【2006年(万通7年)5月3日(水) 09:03】

 5月3日は憲法記念日。

 5月4日はみどりの日。

 5月5日はこどもの日。

 今日から3日間連続で法定休日が始まる。幼稚園が休みなので、明日奈は久しぶりに自由な時間を手に入れた。

 今日のバイオリンレッスンを明日に移して、滝崎家と涼宮家を訪れる予定だ。表面的には誕生日会の招待状を届けるためだが、実際には詩葉と茜と秘密情報を交換するためだ。

 電話やインターネットがあっても、秘密事項はできるだけ直接会った方がいい。

 霊体とは違い、人と直接会う必要がある。それは非常に不便だ。

 すぐに港区のプレステージタワーに到着し、ロビーで警備員に登録をしてから、エレベーターで29階まで上がった。


「こんにちは。」

「あら、明日奈ちゃんじゃないの?お久しぶりですね。」

「お邪魔します。」


 こい金色の長い髪、碧い瞳、白い肌を持つ外国人の女性が、高級ルームウェアブランドを着て、ドアを開けて明日奈を出迎えた。彼女は滝崎家の主人・滝崎洋治の妻で、フランスから嫁いできたアリーナ(Alina)だ。

 夫が早朝に出勤した後、家に一人でいる、5人の元気いっぱいの娘たちの世話をしている。


「そういえば、来週の土曜日が私の誕生日会なの。皆が参加できるといいわね。」

「あら、必ず行きますわ。」


 幼稚園のクラスメートたちは、すでに昨日招待状を受け取っている。涼宮家と滝崎家には、この機会に直接訪れて配ることにした。

 招待状と手土産を受け取った後、アリーナは娘たちが上の階にいると言った。明日奈は初めて来るわけではないので、行き方はよくわかっている。

 30階に上がると、軽やかでモード感のあるドレスを着た金髪幼女が階段を下ってきた。

 滝崎家の一卵性五つ子は、五人の子どもたちの外見は全く同じだ。明日奈は彼女たちの性格や行動の特徴から、なんとかそれぞれを識別することができる。


「……詩美?」

「おっ、明日奈か?」


 当たった。

 傲慢な視線、わずかに上がった口角、大股で下り坂を駆け下りる様子から、五つ子の中で最も強気で勝ち気な詩美と見て取れた。

 詩美の言葉遣いはあまり丁寧なものではなかったが、明日奈を邪魔しなかったことから、何か嬉しいことがあったと思われる。もし彼女の名前を間違えて他の四人の姉妹の一人と混同したら、そう簡単には許さないだろう。


「Shibi ?」


 アリーナが娘である詩美と明日奈が出会ったのを見て、近づいてきて尋ねた。


「Pourquoi ne pas saluer ?(なんで他の人に挨拶しないのかな?)」

「Comment ça va ?(お元気ですか?)」


 滝崎母娘はフランス語で会話していた。ショーンが明日奈のそばにいないため、万能翻訳機を使うことができず、そのため、全く理解できなかった。しかし、二人の口調から、大体何を言っているのかは推測できた。

 明日奈が日本語で目的を伝えると、詩美は全く気にしないで、母のところへ走っていき、フランス語で話しかけた。アリーナが頷き、「お気軽にどうぞ」と言うと、詩美を連れてリビングへと移動した。

 詩美と詩葉は元々仲が悪く、その親友の明日奈にもその影響を受けている。明日奈は子どもと論争をするわけにはいかないので、そのまま30階へ上がった。

 30階に着くと、窓際に静かに座ってカラフルな絵本を読む金髪碧眼の幼女がいた。


「詩織、おはよう。」


 詩織は滝崎家の五女。彼女は小さく頷き、唇をわずかに動かした。声は蚊の羽音のように小さく、明日奈には全く聞こえなかった。

 この子はいつも内向的な性格で、明日奈も邪魔しないで、そのまま詩葉の部屋へ向かった。


「詩葉!詩葉!明日奈だよ!」

「どうぞ。」

「失礼します。」


 軽くドアをノックすると、詩葉がすぐに返事をして、明日奈を部屋に招き入れた。

 詩葉の部屋は、約12畳の広さで、一般的な1DKのアパートと同じくらいだ。元々はこのビルの30階を再分割して改装したものだからだ。五人の姉妹はそれぞれ部屋を持ち、さらに書斎や音楽室、運動室や工房などもあり、何でも揃っているので非常に便利だ。

 他の人が生きるために奮闘しているとき、お金持ちの子供たちはすでに毎日楽しく暮らしている。これが地獄と天国の違いだ。

 明日奈自身も財閥のお嬢様であり、初めて綺麗で贅沢な生活に触れたわけではないから、さほど驚いた顔はしなかった。彼女は自然にローテーブルに座った、まるで自宅にいるかのように過ごした。


「何か進展はありましたか?」

「そういうこともあるぞ。」


 昨日詩葉が電話でさらっと話したことがあったので、明日奈はわざわざ時間を作って訪ねてきたのだ。

 詩葉は隠し引き出しを開け、腕を中に伸ばし、ファイルを取り出した。


「これは何日もかけて整理したものだ。」

「ああー、本当にできたんだなあーおまえ。」

「くくく……」


 二人とも前世が男だったので、遠慮や立場的配慮が少なくて、すぐに本題に入った。

 ファイルを開いて、何枚かのA4サイズの紙を取り出した。その中には電子メールや白黒印刷された監視カメラの画像があった。その画像で観察されているのは、あるオフィスの一角だった。


「これは……」

「涼宮物流のオフィスビル、CEOの涼宮俊作さんのオフィスの外です。オフィス内にはカメラがないので、このカメラで誰が訪ねたかが分かるの。」


 どうやってこれらの情報を得たのか、詩葉は詳しく説明した。

 最初は涼宮グループのサーバーにハッキングしてみたが、デジタル化への移行が遅れており、あまり役に立つ情報は見つからなかった。俊作が物流事業を担当していることを思い出し、検索の対象を涼宮物流に変更した。

 日常の業務処理は紙文書中心であり、しかし電子メールだけは絶対にデジタル化されている。そこで詩葉は方向転換して、俊作の電子メールの受信箱を確認することにした。

 この一手で正解だった。電子メールから有望な手がかりが見つかったのだ。

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