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空白の天使(仮)  作者: mimimi
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3. 光の洞窟

誤字・脱字があればご報告ください。

 私が光の洞窟の中に入って最初に感じたことは、思っていたよりも中が明るいなということだ。これなら松明やランプのような照明を持っていなくても難なく進むことができるだろう。日が当たらないせいで少し肌寒いから長居はしたくないし早くメルフィと合流して天使の光を取ってきちゃおう。

 こんな風に町以外でメルフィを探していると私が師匠に初めてお遣いを頼まれた時のことを思い出す。あの時はまだ天使になってものの数時間だったから大変だったな。生まれて間もない私に早口で天界での規則とか天使の習わしとかいろんなことを説明されて、それが終わったと思ったら急にお前の名前を決めるから何がいいと聞いてくるし。あの時の私はまだ自分の状況が呑み込めていなくてきょとんとしていたはずだ。そして名前を決めたら手を引かれて長老の家に連れていかれてこいつがお前さんの師匠になる上位天使だからいうことを聞くようにと勝手に決められて、今度は天使会館っていう凄く大きな建物に連れていかれたと思ったらお前の姉弟子を連れて来いなんてことを命令されたのだ。私が承諾する前にメルフィがどんな天使か説明をし始めて断る隙すら与えてくれなかったのにはさすがに腹が立ったものだ。

 メルフィの身体的特徴をある程度覚えた私はメルフィがいるかもしれない場所に目印を付けられた地図を渡されて渋々探し始めたのを覚えている。もちろん当時の私は空の飛び方なんて知らないから走り回って探した。あの時は帰ったら絶対に師匠を1回ぶん殴ってやると思っていたな。まあ、実際に殴ることはできないんだけどね。

 天使は自分よりも位の高い天使を傷つけることは絶対にできない。傷つけようとすると体が金縛りにでもあったかのように動かなくなってしまうのだ。私も本当に殴れないのか実際に試してみたが、構えた拳を前に突き出そうとすると体が硬直して指一本たりとも動かなくなった。これを誰にいつ試したかは言わなくてもわかるだろう。

 この他にも天使には神様に逆らうことはたとえどんな理由があっても許されないだとか、困っている人間、亜人、魔族またはそれらの霊がいたら助けてあげなさいだとか、悪しき魔物は殲滅しろだとか、いろんな規則がある。無数にある規則を暗記させられた時は頭がパンクするかと思ったものだ。

 天使には規則以外にも変わった習わしがある。それが師弟制度だ。生まれて間もない天使は、その時に最も位の高い天使から師匠となる上位天使を決められる。そして、その上位天使から天使としての心構えや天使とは何かなどの天使に関する知識から、天界のことや下界である地上のこと、空の飛び方や魔法の使い方、魔物との戦い方などまでのあらゆることを叩きこまれるのだ。

 その時にできた師弟関係は何百年たっても切れることはなく、片方が死んでしまったりしても続くとされている。たとえ一人前の天使になっても弟子は弟子のままだ。これは弟子同士の関係にも言えることで、たとえ何百年たったり片方が死んだりしても兄弟関係が切れることはない。しかし、弟子歴が長いから偉いなどのようなことはなく弟子同士は対等な関係になっている。


「結構歩いたけど全然メルフィと合流できない。もうすぐで天使の光がある場所に着いちゃうんだけど。」


 独り言を言っていると奥からメルフィの声が聞こえてくる。声が小さいから聞き取ることはできないけれど何か歌っているようだ。その声色から歌っている曲は決して愉快なものではなく悲痛めいた曲のようだ。

 すぐ後ろまで私が近づいてもメルフィは私に気が付くことなく天使の光を探しながら歌を歌っている。そんなメルフィの無防備な背中に私は抱き着いた。


「メ―ルフィ!」

「んー?アカネが何でここにいるの?」

「長老からメルフィの様子見てきてって頼まれたの。それとまだ天使の光を見つけてないなら手伝ってあげようと思って。」

「そうなんだ。じゃあ手伝ってもらうことにするよ。」

「わかった!ところでさっきは何を歌っていたの?なんだか悲しい歌のように感じたのだけれど。」

「何百年も前に天界から追放されちゃった悲しい天使の歌よ。その天使はすごく優秀だったんだけど、魔物を助けて神様の怒りを買っちゃって天界を去ることになっちゃったの。心優しくてみんなから好かれていた天使だったらしくて、みんながその天使が追放されることを悲しく思ってこの歌を残したんだってさ。」

「ふーん。かわいそうな天使だね。」


 魔物を助けて天界から追い出された天使の話。どこかで見たことがある気がする。天使になる前にどこかで・・・・。


「あっ。あの本か。」


 分厚いのに短い昔話が書かれているだけの異様な本だったから印象に残っている。本のタイトルは確か『空白の天使』だったかな?その本の内容がこの世界では歌として語り継がれているのか。偶然かもしれないけど、もしそうじゃなかったとしたら私はその本の中に転生したことになるのか。仮に本の中に転生したとしてもあの本には昔話以外に書かれている内容はなかったはず。じゃあ、私の今体験している本に書かれていないことは一体何なのだろう?


「メルフィ。その歌の題名ってなんていうの?」

「薄命の天使だよ。そんなにこの歌のことを聞いてくるなんてよっぽど気に入ったんだね。」


 くすくすと笑うメルフィをよそに私は考えを巡らせる。薄命の天使。短命な天使とも不運な天使とも意味を取ることができる。恐らく不運の方で意味を取るのが正解なのだろう。どちらにせよ本のタイトルになっている空白の天使とは全く違うものだった。やっぱり気のせいなのだろうか。でもまだ根拠となるものがあまりにも少なすぎて断定するには早すぎる。地上に降りてからゆっくり考えることにしよう。

 

「あったー。やっとみつけたよー。」


 メルフィの方へ視線を移すと彼女は壁から生える水色の水晶のようなものを見つめていた。彼女はその水晶のようなものからこぶしほどの大きさの塊を採取して鞄にしまう。満足そうな顔をした彼女は私の近くに来る。仕事が終わってゆっくりできるのが余程うれしいのだろう。


「じゃあ帰ろうか。私の手を握って。魔法でこの洞窟から出るから。

「わかった。」


 メルフィの手を握ると私たちの周りに魔法人が浮かび上がる。そして辺りが光に包まれ、その光が消えると私たちは洞窟の入り口の前に立っていた。どうやら魔法は成功したようだ。

 メルフィの使う魔法は日常を便利にするタイプのものが多い。彼女の面倒ごとを嫌い少しでも楽をしたいという考えからそのようになっているのだろう。地上に降りる前に2つくらい教えてほしいな。後でお願いしてみよう。

 メルフィと私は並んで空を飛びながら長老の家を目指すことにした。空を飛べばここから長老の家までならすぐだ。メルフィも早くお遣いを済ませてしまいたい様子だから少し急いで向かうことにしよう。空を飛びながら私はそんなことを思っていた。

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