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空白の天使(仮)  作者: mimimi
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2. 消えた天使

誤字・脱字があればご報告ください。

 私は死んだ、はずだった。でも今、私は生きてここにいる。まあ、それは人としてではなく背中に白い翼、頭の上に光輪を持つ天使としてだが。

 なぜ私が天使に生まれ変わったのかはわからない。人間だったころに悪行をせず善行だけをして過ごしていたとは思えないからたまたま運がよかったからなのだろう。あぁ、その運を通り魔に出会わないこととかあそこで転ばないとかに使いたかったな・・・。

 天使になってから1週間ほどたったが、この天使の体のことや今いる場所のことが少しわかってきた。どうやらここは天界というらしく、雲の下には地上が広がっているそうだ。そして、この天界には天使しか暮らしていない。昔は神様も天界に暮らしていたらしいが、今から300年ほど前に天界よりさらに上空に都を作りそこに家族で暮らしているようだ。地上には人間や亜人、魔族に加えて魔物が暮らしており、天使の仕事はその人間たちの均衡を保つこととされている。

 天使の体に関することでわかったことは主に4つある。まず一つ目は、当たり前かもしれないが背中の翼で空を飛ぶことができる。最初は感覚がわからなくて飛ぶのに苦労したが、毎日練習することで今ではある程度飛ぶことができるようになった。次に二つ目、この体は非常に丈夫で治癒力も秀でているということだ。これは着地に失敗したときに気が付いた。人間なら絶対に死ぬ勢いで地面に衝突してもかすり傷くらいで済んだのだ。その時にできた傷もすぐに消え綺麗になったのにも驚いた。三つ目は、長寿であるということ。いろんな天使に年齢を聞いてみたら若い天使でも200歳を超える天使がほとんどだった。天使の中で一番偉い長老と言われているおじいちゃん天使の年齢なんて想像もできない。最後に四つ目、それは天使に子供は存在しないということだ。天使は誕生の間という光に満ちた部屋から生まれる。そこで生まれてくる天使はみんな成人した姿をしている。だから天使に子供の姿がないのだ。

 私が毎日の日課になりつつある散歩をしていると私の友達兼姉弟子のメルフィが声をかけてきた。めんどくさがりでおっとりした彼女がこんな早い時間に私に話しかけてくるなんて珍しい。


「アカネ、お師匠様が呼んでたよ。真剣な顔だったから急いだほうがいいと思う。」

「わかった。場所は天使会館?」

「ん-ん。長老の家って言ってた。」

「おっけー。教えてくれてありがとうね。」


 師匠からの呼び出し自体は珍しいことではない。けれど真剣な話で呼び出されるのは今回が初めてだ。今日まで呼び出された内容が買い出しとメルフィを起こして来いっていうちょっとしたものだから新鮮だ。長老の家に行くのも天使になった初日に初めて来た時に来ただけだから少し緊張するな。

 長老の家に着いて扉をノックすると私の師匠のエイギルが中から出てきた。メルフィが言っていた通りいつもへらへらしている師匠が真剣な顔をしている。

 中に入ると一番奥の部屋に通され座るように指示される。空気が重い。私はそう感じた


「あの、何の用で私は呼ばれたのでしょうか?」

「儂から話そう。アカネは最近地上に降りた天使の一部が天界に帰ってきていないことは知っているか?」

「はい。私が生まれる4か月前から段々その数が増えてきていると耳にしました。」

「そうなんじゃ。普通は降りた当日、長くても3日くらいで帰るのじゃが、消えた天使たちは全く帰ってくる気配がないのじゃ。この全ての天使の名前が載った名簿からその消えた天使たちは消されていないから、その者たちは死んではいないはずなんじゃが・・・。」

「そうなんですね。それは心配ですね・・・。」


 天使が地上に長い間滞在するには『天使の光』という石を持っていないと天使の力が弱まり人間と大差なくなってしまう。そのため定期的に天界に戻らなければならない。

 そんな天使が天界に帰って来ない原因はいくつかある。その天使が死んでしまったり、何者かに囚われてしまったり、一番最悪な例で堕天してしまった結果帰って来ないことがある。今回は死んでいる線はない。天使が地上で囚われることも考えづらい。なぜなら魔物も人間も私たち天使の姿は見ることができないからだ。そして、堕天するにもその天使が他の天使と比べて極めて大きな力を持っていないと不可能なのだ。それこそ神にも届きうる力を持っていないと。加えて、激しい憎しみをうちに秘めていないと堕天は失敗してしまう。今回失踪した天使たちはそこまでの力は持っていない。だから堕天使になったというのもありそうにない。


「それでじゃな。アカネに行方不明になった天使を捜索してほしいのじゃ。加えて天使たちの行方がわからなくなる原因も調べてほしい。」

「私に、ですか?」

「そうじゃ。捜索を頼んだ他の天使も失踪してしまってな。本当はもっと熟練の天使に頼みたいのじゃが、行方がわからなくなった天使の代わりに仕事をしてもらっていて頼めそうにないのじゃ。今完全に手が空いているのは1週間前に生まれたお前さんだけなのじゃ。」

「まだ新米天使のアカネにこの任務を任せるのは酷だと私は反対したのだがな。」

「師匠・・・。」


 師匠の言う通りだ。まだ私は生まれて間もない新米天使だ。そんな私にはあまりにも荷が重い。けどやってみたい、そう思う心もある。地上で何が起きているのか気になるし、メルフィが被害にあうのを防ぐことができるかもしれない。それに、せっかく長老からこんなに大きな任務を任されたのだ。


「アカネはどうしたい?俺はアカネの意思を尊重するよ。まだまだ弱いけど遅くまで頑張っていたの見てたからね。」

「はい、不安じゃないと言ったら噓になります。でも、やってみたいです・・・!」

「わかった。じゃあ地上に降りる日まで今よりもっと厳しくしてやるから覚悟しとけよ。」

「はい!」

「そうか、やってくれか。しかし地上で過ごすのに必要不可欠な天使の光が今手元にないのだ。今メルフィに光の洞窟まで採取しに行ってもらっておるんじゃが、アカネも様子を見に行ってもらえるか?」

「わかりました。では失礼します。」


 席を立って礼をしてから私は部屋を後にする。師匠はまだ話すことがあるようで部屋に残った。私が地上に捜索にでること以外にも問題が起きているのだろう。最近、凶悪な魔物が多く出没していて不自然だとか人間たちが必要以上に侵略戦争を繰り返しているだとか色々な話を耳にしたことがある。

 私は地上に降りる不安を7割、期待を3割ほど感じながら光の洞窟に向かうのだった。





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