1. 死んだ私
誤字・脱字があればご報告ください。
『昔々、あるところにどんな天使よりも優秀な天使がいました。その天使はどの天使からも好かれ憧れの的になっていました。あるとき、彼が地上でのお仕事を終えて天界に戻ろうとしているとき、怪我をして弱っている魔物の子供を見つけました。本来、魔物は地上の平穏を乱す危険な存在であるため天使である彼はその魔物の子供を狩らなければなりません。しかし、彼はその魔物の子供を哀れに感じ傷を治し見逃してあげました。その後、天界に帰った彼は神様に呼び出されてしまいました。どうやらさっきの魔物の子供を助けたことがばれてしまったようです。神様はその彼の行動に怒りその魔物の子供を殺して来いと命じました。彼はその命令のとおりに助けた魔物の子供を死の淵まで追い込みましたが殺すことが出来ませんでした。与えた傷を全て治してから彼はまたその魔物を見逃してあげました。そのことを天界から見ていた神様はさらにお怒りになり、戻ってきた彼に対して天界から出ていくように命じました。天界を追い出されてしまった彼は、他の天使たちから惜しまれながら地上に降りました。その後の彼がどんな結末を迎えたのかは誰も知ることはありませんでした。』
これでどうやらこの本は終わりのようで、それ以降のページには何も書かれていない。まだ数百ページもあるのに全て白紙だ。タイトルを確認するとそこには『空白の天使』と書かれている。
「なにこの本。こんなに分厚いのにこれだけしか書かれてないの?あとのページは白紙だし誰が買うのよこんな本。」
私は棚にその本を戻し壁に掛けてある時計を見る。暇つぶしのために古本屋に来てからどうやら1時間ほどたってしまったようだ。この後に待ち合わせの約束があるからもうそろそろここから出なきゃいけないな。
古本屋を出た私は待ち合わせ場所であるファミレスに向かって歩みを進める。思ったよりも早く生徒会の仕事が終わったから本でも読みながら待ってようと思ったけど、これなら図書室行ったほうがよかったな。昇降口と図書室が反対にあるからってめんどくさっがったの仇になってしまった。
信号が変わるのをを待っているとスマホから着信音が鳴る。画面を見ると「お母さん」と表示されていた。
「もしもし、お母さん。なんかあったの?」
「いまニュースを見てるんだけどね、茜の通学路に通り魔が出たってやってるの。それでまだ帰ってきてないから心配になって・・・。」
「それってどこらへんなの?別の道で帰るから教えてほしいな。」
「えっとね。丸山薬局の先にあるファミリーレストランの前だと思うわ。通り魔はそこから宮村書店の方に逃げたみたい。」
「わかった。じゃあそこは通らないように帰るから安心して。」
「気を付けてね、茜。」
「うん。教えてくれてありがと。ばいばい。」
電話を切って今度は待ち合わせをしている友達に通り魔が出たみたいで危ないからまた今度にしようという旨をチャットを送る。あの子、事件現場の近くにいたりしないよね?もしも近くにいたら心配だな。一応、電話もしておこうかな。
私は近くの公園のベンチに座って電話をかけた。電話はすぐにつながり、私はほっとして胸をなでおろした。
「急に電話かけてごめんね。通り魔が出たって聞いて心配になってかけちゃった。」
「大丈夫だよー。私もさっき親から連絡来てさ、早く帰って来いって言われたんだよね。」
「じゃあまた別の日にしようか。」
「そうだな。また今度だね。」
「わかった。通り魔に気を付けてね。」
「茜もな。」
電話を終えて、ふと公園の出口を見ると分厚そうなコートを着た男が私の方をじっと見つめていた。
辺りが暗いことも相まってすごく不気味に感じた。あまり見ないようにして反対側の出口から出よう。
私は立ち上がって男のいない方の出口に進むと、後ろから足音が聞こえてくる。足を速めてもそれに合わせて背後の足音も速まる。明らかに私のことを追ってきている。
なんで私のことを狙ってるの?お母さんが言ってた通り魔?でもここって逃げてった方向と逆だよね。じゃあ・・・・、あれは何・・・?
気が付いたら私は走っていた。足音は段々と近づいてきていることがわかる。相手は成人の男だ。本気で走っても逃げ切れるはずがないことは私にもわかる。確かこの先の交差点を抜けるとコンビニがあるはず。一旦そこに隠れよう。待ち伏せされるかもしれないけど、このまま襲われるよりマシだ。でも、私は運がなかったようだ。
「痛った・・・!」
外灯が少ないせいだったのだろうか。それとも余裕がなかったせいだろうか。恐らく両方なのだろう。私は段差に気が付くことができなかった。すぐに立ち上がろうとしたがすでに遅かったようだ。男は私に馬乗りになるように私を拘束してくる。怖くて声が出ない。
「お前も俺を・・・おれを見下してるんだろ・・・・。」
ぶつぶつと独り言を漏らす男。完全に正気じゃない。背中に乗られているため顔は見ないのが余計に恐怖を感じる。死にたくない。怖い。必死にもがくが力で押さえつけられ逃げられない。焦った男は懐から血濡れた包丁を取り出した。
男の呼吸が荒くなったのを感じ、嫌な予感が私を襲う。さらに激しく暴れる私に向けて男はその包丁を勢いよく振り下ろしてしてきた。私は激しい痛みに襲われる。誰よ・・・・、刃物は骨で止まるからドラマみたいに刺さることはないって言ったの・・・。
薄れゆく意識の中、今までの暮らしが走馬灯として蘇る。お母さん、お父さん親孝行できなくてごめんなさい・・・・・・。




