王様(ちち)と王子(かぞく)たちと治癒召喚士(ヒーラーテイマー)
これは、自分で1から考えたオリジナル小説です。
過度な期待はしないでください。
あと、プロローグは現実世界の話ですが、これは異世界物です。
村を出発してからしばらく経ったが、特に何事もなく、進めている。
ボク、セイカはクルーク王子と共に王都へ向かっている。
こういう時って大抵は、賊に襲われたり、強い魔物に襲われたり、賊や魔物に襲われたりしている人を助けたりが定番なのだが何も起きてない。まぁ、いいことではあるから構わないのだけれど・・・
馬車に乗り、流れる風景と共に通り過ぎる人々を眺めながら呟く。
「・・・平和だなぁ〜」
外は平和でも馬車の中は落ち着かない。
クルーク王子がボクを信頼してくれてることはわかるのだけれど、王都の王子と二人だけなのは不用心すぎないか?
「あのクルーク王子?」
「なんだ?」
「いつも1人で行動しているのですか?親衛隊の人がいるにしてもこういう空間にはもう一人いたほうがいいのでは?」
「いつもこんな感じだが、何か問題でも?」
「せめて、お客人がいたら用心のために王子を守る人がいたほうがいいのでは?」
クルーク王子は少し考えながら言う。
「確かに、普通の貴族であればそういうこともあろう。だがな、セイカよ。お前は僕の性格をなんとなく理解してるであろう?僕は、貴族とか平民とか身分に関係なく仲良くしたい。まぁ、だから兄上たちにはお前は王には向いてないって言われるのだがね」
「ボクは、クルーク王子の考えはいいと思います。正直言うと、クルーク王子が人の上に立っていることが想像できないんですよね」
「・・・本人を目の前に堂々言うな・・・僕は王になるつもりはないのだが、もし我が身内が国民全員を粛清するとか言い出したら、僕は全力で国民を護るつもりだ」
「・・・ボクを巻き込まないでくださいね」
「自分たちの事情に無関係の人は、巻き込むつもりはないよ」
「以外ですね。そういうふうに言ってくるのは」
「誰だって我が身が1番だし、仕方ないさ。まぁ、本音を言えば協力してほしいが・・・我が街は繁栄しているからそんなことはないと思いたい」
今は均衡を保っているがたった1人の言動で崩れていくのが街だ。多種多様な人々がいればいるほど、その可能性が高くなる。
まぁ、今までやってこれていたのだから何かが起きない限りは大丈夫だと思うけど。
「ほら、あそこが王都だ」
大きな壁を超えてでも見えるお城と厳重に警備されている入り口、門の前ではお城警備の人だろう、重そうな鎧を身にまとい、1人1人の身分を確認している。
馬を操っている兵士に敬礼をすると、門の兵士も敬礼し返す。
人々はみな、道を空ける。
「ご足労ありがとうございます。アンドルク様にご報告いたします」
「ああ、よろしく頼む」
「かしこまりました。えと・・・そちらの方は?」
門の兵士は、怪訝そうな顔でこちらを見てくる。
「こいつは、セイカだ。村の危機と私の命を救ってくれた冒険者だ」
「・・・はじめまして」
ボク、クルーク王子の命なんて救ったっけ?と、思いながらもとりあえず挨拶をしてみる。
「我が国の誇りであるクルーク王子の命を救っていただき、感謝いたします!どうぞ、中へお進みください!」
最初と比べ物にならないほどのいい笑顔で見送ってくれ、手まで振ってる。
「ねぇ、クルーク王子。いいのこんな簡単に街に入れて、ボク、身分の証明してないけど?」
「ああ見えて結構、いい目してるんだ。ほら、さっきも言ったろ?護衛もつけずに2人だけでいたから、僕がセイカを絶対的に信頼してるっていうのを感づいたんだ。」
「うーん・・・ボクがここに来るのを躊躇っていたのってクルーク王子と一緒にいると色々面倒臭そうだったので、少し拍子抜けです」
「セイカは、そっちのほうがいいだろう?」
「そのほうが変に緊張しないので、ありがたいです」
国民たちが道を開けてくれている中、明らかに他とは違う者たちがいる。
繁栄している街である程、貧富の差は顕著に表れる。
あの者たちが奴隷なのか孤児なのかはわからないがいないものとして扱われているのは見ていて、いいものではない。
クルーク王子が馬車を止めると目の前には宿屋があった。
「長旅で疲れたろ?この街も見てみたいだろうし、父上との話もあるから、明日の朝に使いの者をここに待機させとくから今日は、休んでくれ」
賑わいを見せる街に少し興味を持っていたから嬉しい提案である。
宿屋のおばちゃんは、クルーク王子と一緒に来たから服装に触れることはなかったけど、女神様からの服はこの世界では珍しいらしいので見られないのようにしよう。
そういえば、ブライトさんから上着をもらったっけ?
ネッショ村の人たちは気にしてなかっただけで、どこかのお金持ちとか貴族たちに目をつけらそうなくらいの服を着てるからクルーク王子と別行動してるときは隠して置いたほうがいいらしい。
それに、クルーク王子とここに来たのを何人かに見られているだろうから来たときの格好はしないほうがいいかも。
「・・・こういう時って大抵、何かに巻き込まれたり、遭遇したりするんだよな〜・・・」
「何でそう思うの?何か気になる事でもあった?」
クーフェが花開いたかようにポンッと現われる。
「いや、何となくそんな気がするだけで特に理由はないんだけど」
「じゃあ、せっかくの王都なんだから出かけようよ。私も田舎者だから見てみたい」
「何もない事を祈りつつ外出しよう」
着替えをどうしようか悩んでいたらクーフェが勧めて来たけど、なぜか女の子女の子してる服ばかりを勧めてきたから全力でお断りした。
賑わっている街に繰り出すと色んな野菜や果物、肉がある。
雑貨屋や武器防具屋、鍛冶屋や魔法屋、薬屋なんてものもある。
「あ、そういえば、王都にも冒険者ギルドがあるんだよね?少し覗いてみたいな」
「王都のギルドって、いろんな人いるらしいから少し怖いのだけど」
クーフェの言うことはよく分かる。
異世界転生した時って、冒険者関連でのトラブルって大抵、大きな都市で起こる。
街の人に場所を聞きながらギルドへ向かうと思ったより大きい建物についた。
少しためらいながら入るとぎゅうぎゅうってほどではないものの大勢の人々がいた。
扉を開ける音に反応してこちらの方に視線を送ってくるが、まぁあまりいい視線ではない。
しばらく見られていたが飽きたのか元の雰囲気に戻る。
クエストの掲示板に貼ってあるものを見てみるとちゃんと低ランクのクエストもあるようだ。
薬草取りのクエストがある。
採取クエストはラットリーさんのところでよくやってたし、まぁ、すぐ終わるだろう。
「すみません、これを受けたいのですが」
「かしこまりました。ギルドカードの提示をお願いします」
「わかりました。はいどうぞ」
手早く手続きを進めた受付の人から軽い説明を受けた。
要するに、提示されている数以上のものを採取すればいいだけのクエストだ。
「では、お気をつけて」
何事もなく平和であった。
「なにもないということはいいことだね」
「セイカさん、ここにも薬草ありますよ」
植物に詳しいルーネにも手伝ってもらい、ボクと琥珀で採取する。
本来はボク1人でやるつもりだったが、琥珀が手伝いたいと言い出したので甘えることにした。
集めている内に王都から少し離れたところに長い間、人の手が入っていない廃屋があった。
中に入ると埃っぽく、色んなものが劣化して壊れている。
「うわ、何だここ今にも崩れそう」
「ここに転送したら瓦礫の下敷きとかやーだよ」
「琥珀は、スライムなんだから隙間があれば大丈夫じゃないの?」
「・・・あ、そうだった。私、スライムだった」
この天然さは、天性のものなのかそれとも転生によるものなのか・・・
「セイカさん、なんかここにありますよ」
ルーネの視線の先にはボロボロになったカーペットと破れたところに取っ手らしきものがある。
「懐かしい・・・私の家にもあったけど、お父様から絶対に入ってはいけないって言われてて結局、何か分からなかったんだ」
お金持ちの家に地下室・・・なんか、触れてはいけないような気がする。
その床扉を開けるとただの大きな空間があるだけだった。
(防空壕ってこんな感じじゃなかった?この世界って機械文明って無いよね?電化製品みたいな魔具製品はあるけど、魔法のある世界だから空爆より容赦ないやつがあったりするのかな?)
「でも、転送魔法にはちょうどいいからここを記憶しておくかな?」
ラットリーさんからもらったメモ用紙さんにボクの記憶を模写してもらう。
これで、曖昧で転送して、『石の中にいる』とか『壁の中にいる』とかにはならないから大丈夫だろう。
自分が済ませておきたかったことはできたし、帰ろう。
目標数より多めに持って帰ったけど、思った以上に感謝された。
何でも、こういう低ランクでしかも採取クエストは人気が無くて、魔物討伐の方がランクを上げやすいためか、誰もやりたがらないらしい。
現状を知っている心優しい冒険者が何かのクエストのついでにやってくれるからまだ大丈夫ではあるが、何か大事になったら多分、ポーションが枯渇してしまう可能性があると受付の人は言っていた。
回復役を必要としないパーティーもいたり、住民は安価で使いやすいポーションをよく使うため、原材料である薬草は必要不可欠であるらしい。
「さて、目的は達成したし、少し街を見てみる?」
飛び疲れたのかボクの肩に座っているクーフェと薬草採取を手伝ってくれた瑠璃に声を掛ける。
「それよりお腹空いた〜何か食べたい」
今日は朝早くに行動開始してここまで来たから少し間が空いてお腹が減ってしまったのだろう。
「宿屋の食事までにはまだ時間あるし、軽く食べようか」
街を歩いてるといくつかよ野外販売がある、
いつも思うのだが何でこういう転生物って祭りでも何でもないのにこういう大きな都市には市場みたいになっているのだろうか。
まぁ、売れた分丸々自分のものになるから下手に計算しなくていいけど。
この世界のものは元いた世界の食材と同じものが多いけれどほぼ全ての食材は名前が違っている。
お肉の串焼きがあったからボクと瑠璃の分を買い、クーフェに分ける。
この世界ならではの味ではなく、ただ豚肉を串に刺して焼いて塩をかけたシンプルな味付けだが、小腹を満たすにはちょうど良かった。
特に何かあるわけでもなく、ただ街を散策して夕方になって、明日の用意をして夜が来て寝る。
硬い馬車だったり、地面だったりでしばらく寝てたからなのかよく眠れた気がする。
昨日の喧騒が懐かしく感じるこの朝の静けさは何でかとても気に入っている。
コンコンコンっと扉がノックされる。
「おはようございます。朝食の用意ができましたので、お持ちいたしました」
「ありがとうございます」
扉を開けるとボクと同じくらいの子が食事を持っている。
ボクの疑問を浮かべた表情に気付いたのか慌てて自己紹介をしてくれる。
「あっ・・・ご、ごめんなさい。時々、ここでお母さんの手伝いをしている。娘のソニアです。皆さんの朝食を作っているお母さんの代わりにお部屋にお持ちをご希望のお客様に届けに参りました」
「ありがとうございます。それにしても、何でそんなに手に怪我をしているのですか?見た感じただの切り傷ではなさそうですが」
「これはですね・・・何というが魔法がうまく使えなくて火傷をしてしまいまして」
「火傷してすぐ何かで冷やしましたか?」
「い、いいえ、そのままです」
「・・・ちょっと見せてください。火傷は、すぐに冷やさないと痕が残る可能性があるので治します」
「で、でも・・・」
「それに、こういう仕事は傷跡や絆創膏1つで、気にする客は不衛生っていうからね。世の中には、こんな小さなことでお店がなくなったするから」
「そ、それは困ります!お願いです、どうか許してください!」
「?・・・あ、もしかしてボクが気にするお客さんだと思ってる?そんなことはないよ、むしろこういう傷は頑張ってる証拠だからいいと思うけど」
「そうなんですか?でも・・・」
「ボクが気にしてるのは君の手に火傷痕が残ったら、他人から変な目で見られる可能性があって、これから大変な思いをするかもって思っただけだよ」
ボクは、傷痕が消えるくらいの回復魔法を使う。
「これは、回復魔法ですか?すごい」
「内緒にしといてね。変に騒がれるの嫌いだから」
「わかりました。そういえば、先ほどお客様にご用があるって言ってお待ちのお客様がいますよ。若いお姉さんでした」
「えっ?ホントですか!急がないと!」
ボクは急いで着替え始めると
「あ、あの・・・」
顔を真っ赤に染めているソニアさんがいた。
「どうしたんですか?他に何か伝えることがあるのですか?」
「い、いえ、なんでもありませんっ!」
逃げるように仕事へ戻ったソニアさんに首をかしげる。
「あんた、今の自分の恰好見て見なさいよ」
「恰好って、ただ白いシンプルな下着でしょ?気にするようなことなの?それに同性だよ」
「あなたさっき自分で、絆創膏一つで気にする人いるって言ったよね!同じ女性でも下着姿を見て気にする人だっているんだからね!」
いつの間にかいるクーフェに色々と言われながら、持ってきてくれた食事を摂る。
手早く準備を済ませ急いで宿屋から出る。
「すみません!お待たせ致しました」
「いえ、お気になさらずしっかりと時間を伝えていなかったこちらの責任ですから」
メイドさんの一人だろうか?しっかりとしている。
「目立ちたくないということで、徒歩の移動になりますがよろしいですか?」
「ありがとうございます。ありがたいです」
「かしこまりました。人が多いのではぐれないようにお願いします。それとも、手をつなぎますか?」
「い、いえ、そこまでは大丈夫です」
しばらく歩いているとお城の門の前に着く。
あまりの大きさに唖然のしているボクに私服メイドさんが「では、門を開けてもらいますのでもう少しお待ちください」
と、どこかに消えていく。
少し経つと門が開いたが、何やらお城が騒がしそうに見える?
「あ、あれ?ボクが来ること知らなかった?」
少し焦りを感じながら待ってみるとクルーク王子がコチラへ向かってくる。
「す、すまない。第一王女である姉が行方不明になっていて、城内が混乱しているのだ」
「いや、それって大問題じゃないですか!ボクをお城に招いてる場合じゃないでしょ!城内の人は誰も見てないんですか?特徴を教えてくれたら街の方探してきますよ!」
「すまない、姉は昔から自由奔放でしょっちゅうお城から居なくなっていて、最近は落ち着いていたから油断してたのだ」
「最近、何か特別なことがあったのでは?」
「だーれが、手のかかる姉ですって?」
声と同時に後ろから抱きつかれる。
綺麗な金髪の長い髪がボクの頬を撫でる。
「姉上!今までどこに」
「どこにってセイカちゃんの迎えに行ってたのよ」
「他の者にお願いしてたはずですが!」
「だって、気になってたんだもん」
二人で言い合っているがボクは頭が混乱している。
「あら?セイカちゃん、大丈夫?」
「あ、あの・・・ホントは、お城の使用人さんが来る予定でしたけど、なぜか第一王女・・・」
「私の名前はフェリスよ。ハイワッド・フェリスよ」
「・・・第一王女のフェリス様が変装して護衛も付いてない状態で数十分待たせていたのですか?・・・す、すすすすみませんでした!」
「お気になさらず、そのことでクルーク。迎えに行くとだけ伝えておいて、正確な時間は伝えていなかったのですか?セイカちゃんがいい人で良かったですね。下手をするとハイワッド家の悪い噂が流れるだけじゃなく、最悪の場合、迎えに行った使用人が殺されたり、奴隷にされることだってあることを忘れないように」
ほんわかしてる雰囲気から一変して真逆の雰囲気になる。
普段、おっとりしている人が怒った時の怖さを物語っている。
「それは、申し訳ないと思っている。でも、姉上だって・・・」
「あー、ボクが詳しく聞けばよかっただけですし、ワタシ、オキャクサンダヨ。オキャクサンノマエデ、ケンカヨクナイ」
二人の口論がヒートアップしそうだったので、間に割って入る。
「・・・何それ、笑ってしまいます」
「そっそうだな。ふふっ、セイカはオキャクサンだったな」
「あのー・・・ところで、フェリス様・・・ボクはいつまでこうしてればいいのでしょうか?」
見た目は女の子だけど、中身は男なんだから色々と気になる。
「うーん、私がいるときはずっと?」
「会って間もない人に、ずっと抱きついてるのは色んな意味で話題になりそうですが・・・そういえば、本来、ボクを迎えに来てくれる予定だった人はどうしたんですか?お城の騒ぎようからしてその人戻ってないのでは?」
「あっ・・・お花のお世話をお願いしたままだわ。私が来るまで待ってもらってるから戻らないと」
フェリス様は少し慌てたようにまた姿を消す。
「フェリス様っていつもあんな感じなんですか?」
「あんなでも、第一王女だからな。王女だから警戒もするし警戒もされるのだがセイカに警戒心がなさすぎて距離が異常に近くなってる」
「それ大丈夫なんですか?」
「普通は大丈夫ではない。あれだけ距離が近いのはセイカが始めてだ、正直言って驚いている。今までも、お前と同じ年頃かそれより下の娘とかにも会ってきたが大抵は、暗殺目的か私たちに取り入ろうとするものばかりだった」
「え?そんな子たちがいるんですか?」
「皆が皆、裕福ではないし、幸福なわけでもない。生き抜くために悪い道へ進むものもいる。昨日、街を回っていたようだが何も無かったのか?それなら、幸運かもしれん」
「いやまあ・・・王子と一緒に来ましたからね。ボク自身のことを知らなくても王族の関係者とは思われてますね・・・何か起きたわけではないので大丈夫だと思いますが」
「・・・と、お客人を外で待たせているのは失礼だな。部屋に案内するからそこで少し待っていてくれ」
クルーク王子に導かれ、お客人用の部屋に通される。
部屋が大きすぎて誰もいないのに緊張する。
「失礼します。こちら紅茶とクッキーです。どうぞお召し上がりください」
「あ、ありがとうございます」
いつの間にか、メイドさんが現れていてお茶とお菓子を用意してくれていた。
「先ほどは申し訳ありませんでした。私がお迎えに上がる予定だったのですが、フェリス様に閉じ込められてしまい、お申し付けを守ることが出来ませんでした」
「そうだったのですね。別にボクは気にしてませんし、むしろ短い時間とはいえ、閉じ込められていたんですから、体調は大丈夫なのですか?」
「あ、大丈夫です。いつものことですから、それにフェリス様の管理してるお花畑はとても綺麗なので見てて飽きませんから、それでは時間が来ましたら、お呼びいたしますのでここでもう少しお待ちください」
そう言ってメイドさんは部屋から出ていく。
一人でいるのは緊張するからメイドさんでもいいから話し相手が欲しかったな・・・と用意してくれた紅茶とクッキーをちょびちょびと口にしながら思った。
何も考えずにボーっとしていたら突然、扉の閉じる音に体を跳ね上げて驚いた。
「えっ?なんで?」
お城には風なんて吹いてないし、扉が重すぎる。
外を見回しても黙々と仕事をこなしている使用人たちしかいない。
ボクは少し戸惑いながらも席に戻ると残っていたはずのクッキーがなくなっている。
無意識のうちに食べていたのかな?と思いながら残っている紅茶を飲む。
「うひゃっ!」
突然、両脚を誰かに撫でられる。
机の下を覗き込むとボクと同じもしくは少し年下くらいの女の子が2人いた。
「あっ、見つかった」
「見つかっちゃったね」
2人は、机から出ようとして頭をぶつける。
「いったー」
「いたいよー」
「知らない人にイタズラをするからバチが当たったんだよ」
2人で「うー」って言いながら頭を押さえている。
ぶつけた場所を撫でて上げるとしっかりとコブができている。
「痛いの痛いの〜、飛んでけ〜」
コブを回復魔法で治しながら言い慣れた言葉を言う。
「痛いのなくなった!」
「すごいすごい!」
この世界には、こういうおまじないがないようだ。
「それで、君達は誰かな?」
このお城にいるという事は、王族の関係者だと思うけど、一応聞いてみる。
「あたしは、リリィ!」
「わたしは、ルル・・・」
「よくできました。ボクは、セイカだよ。君達はもしかして双子と言うやつかな?」
「そう!」
「わたしたち、双子」
「なるほど、じゃあ、どうしてここに来たのかな?」
「フェリス姉様が遊んでおいでってここに連れてきた!」
「そしたら、セイカさんがいたのでイタズラしました・・」
「初めて会った人にイタズラしちゃうとびっくりしちゃうからあまりやっちゃだめだよ」
「え?だって、セイカなら笑顔で許してくれるって言ってたよ!」
また、あの人の仕業か・・・
「そうだね。ボクだから大丈夫だけど、他の人はダメだよ。パーで叩かれて痛いことされるよ」
「痛いのやだー!」
「はい、気をつけます」
性格が正反対の二人と会話をしてるとなんか楽しい。
「でも、遊ぶって何するの?」
「このままでいい!」
フェリス様の距離感も異常だけど、この2人も中々だ。
ボクは2人に左右から密着され、いわゆる、サンドウィッチ状態でずっと頭を撫でている。
「あったかいね〜」
「気持ちいいね〜」
しばらくの間、そうしていると執事の人が来た。
「セイカ様、大変お待たせいたしました。アンドルク様がお呼びになられております。リリ様もルル様もご一緒にこちらへ」
「ありがとうございます。どうも、ご丁寧に」
「ありがとー」
「ありがとうございます」
「これはこれは、仲の宜しいことで」
執事の人の目線は自然と2人の手を繋いでるボクとしっかりとその手をにぎる双子の手に向いている。
ハッとしたが双子がとても嬉しそうにしているから、このままでいようと思った。
大きな扉の前まで来ると執事さんがノックをする。
「失礼します。アンドルク様。セイカ様、リリお嬢様、ルルお嬢様をお連れいたしました」
「うむ、入れ」
大きな扉向こうから厳かな声・・・と思いきや、男性アイドルのような綺麗な声が聞こえてきた。
扉をくぐると同時にリリ様とルル様が走り出す。
「「お父様!おはよう(ございます)!」」
「おはよう・・・ちょ、ちょっと待ちなさい!今、お客人の前でしょ!」
2人がボクのことを話しているようだ。
直ぐに隣に立っている奥様が2人をなだめに行く。
「頭を上げい。すまんな・・・恥ずかしいところを見せてしまったな」
前世でアニメでよく見た体制から頭を上げる。
「?どこが恥ずかしいところなのですか?我が子を優先するのは当たり前の事だと思いますが?・・・あ、申し訳ありません!」
少しの間、静かな空気が流れる。
(やってしまったー!ボクにとっては自然なことでもこの世界では違う可能性があるんだった)
「あらあら、クルークとフェリスの言う通りですね。アン、彼女の前なら我慢しなくていいんじゃないかしら?」
「アンジェ、アンというのは止めろ・・・」
「そう言うあなただってアンジェって呼んでるじゃない」
「それはそうだが」
会話についていけずにいると後ろからまた抱きつかれる。
「私が言ってた事を理解した?」
フェリス様に抱きつかれながらなぜかクルーク王子に撫でられる。
「僕たちは、王族に産まれただけのただの家族なのだ」
パンパンと手を叩く音とともに案内してくれた執事さんが言う。
「はい、そのくらいにしてください。セイカ様がお時間を割いてきてくれたのですから」
「確かにそうだな。セイカよ、改めてお礼を言う。クルークを助けてくれたことと、辺境の地とはいえ我が国民を救ってくれたこと、感謝する」
「「感謝するー!」」
「こら、駄目でしょ」
リリ様とルル様がこの空気に耐えきれず声をだし、それを奥様が注意する。
「・・・ええー・・・、あっ、確か自己紹介がまだだったな。俺はハイワッド・アンドルク。この国の王だ、さっきまでの事は内緒にしておいて欲しい」
恥ずかしいとはいえ、王様がお願いしちゃだめだと思うのだけど。
「アン、あなたの性格が王様に合わないとは言え、そんな軽々しく、王様がお願いしちゃだめよ、変な見返りを求められるわよ」
「すまんがセイカ、お金は払うからそれで手をうってくれないか?」
「あっいえそんなことで、見返りは求めませんよ。そもそも、ボクは普通の暮らしをしたいので、王様御一家と関わりを持ってることを公にしたくないです」
「それはもうこの街では無理だろうな。第3王子と一緒に街に来て、第1王女とお城に来てるし今ごろ街では話題になっているようだ」
「え?でも、フェリス様は姿を変えてましたよね」
「変えてる姿を逐一変えていたらバレなかっただろうが、毎回、女性使用人になってて探させてたらなんとなくわかるのだろう。本人は、バレてないと思っているようだか、街の者たちが空気を読んで、声をかけてないだけだ」
フェリス様が一番、驚いているようだった。
「さて、話を戻すぞ。彼女は・・・アンジェは我が妻だ」
「はい、アンジェリカと申します。以後、お見知り置きを。アン、リリとルルを別の部屋に連れて行くわね」
「うん?あぁ、お願いする」
アンジェリカ様がリリ様とルル様に「さあ、こっちへ来ておやつの時間にしましょう」といってリリ様とルル様を部屋から連れ出していく、少し寂しそうな表情をしていたアンドルク様が国王様の顔になり続ける。
「フェリスとクルークのことは、もう知っているんだったな。これからもよろしく頼む」
「わかりました。ですが、ボクはただの平民なので今回が特別なだけで滅多に会うことがないと思いますが」
「そうなのか?クルークからあの村で共に守るときいていたのだが?」
「ええとお父様。何か勘違いされているようですが僕は、あの村でただ弱いだけで何の情報もないスライムに関しての研究をさせてほしいだけです。もちろん、何かあればセイカと共に村を守りますが」
どうやら、とても恐ろしい勘違いをされていたらしい。
「ふむ、まあ良い。俺としてはあの村を守ってくれれば何でも良い。さて次は、我が長男であり第1継承者のアルスだ」
と言うとメガネをかけた、いかにもインテリですみたいな人が前に出る。
「アルスです。ふむ・・・スライムの研究か私も興味がありますね。クルーク、何か分かったら私にも教えてくれないか?今回の森の件で、スライムが本当に警戒レベル0でいいのか少し疑問に思いまして」
「もちろんだ、アルス兄、国民に大きな被害が出てからじゃ遅いからな」
「セイカと言いましたっけ?君には、少しお話を聞きたいことがあります。クルークが、研究を始めるというのなら私の魔物に関する本を譲り渡します。一度、村にご同行させていただいて、その時に突然変異したスライムのこと。我が国の武器防具と兵士たちに甚大な被害を与えた事。そして、君の従者であるスライムがクルークに懐いているのかを」
どうやら、スライムという言葉に自分が呼ばれたと思い、クルーク王子の肩に乗ってきたらしい。
「すみません・・・最後のは、本当によくわからないんです。人間で言う一目惚れっていうやつではないでしょうか?」
表情は分からないが照れてるように見える、クルーク王子の肩乗りスライムに納得のいかないような表情をするアルス様であった。
「さて次は、我が次男であり第2継承者のアンドレーだ」
筋肉モリモリマッチョメンの大男が前に出る。
「俺は、アンドレーってんだ!よろしくな!」
「よ、よろしくお願いします」
この大きな部屋に響き渡る声に気圧されながら返事をする。
「クルークを助けたって聞いたが、お前は強いのか?それなら、俺と手合わせしようぜ!」
「あ、いえ。助けたと言うか、クルーク王子達が襲われたスライム達の長を従者にしただけですので、戦ってはいませんので強くはないはずです」
「なんだ、そうなのか?でも、我が弟を助けてくれたのは変わりないんだろう?感謝する。なあ、強いやつを知ってたら紹介してくれねぇか?」
「ボク達がいたのは辺境の地です。アンドレー様が満足するような人は居ないですよ」
まあ、ノアさんならちゃんと戦えそうではあるが、あの人自身戦いを好まないから断るだろう。
「さて、セイカ。謝礼の件だが」
「あぁー・・・いらないです。今回の件は、たまたまボススライムが話の分かる者だっただけで、何もしていないですから」
「いや、しかし・・・なんでもいいのだぞ」
こういうパターンだと、何かを要求しないと終わらない感じだ。
「う〜ん・・・では、クルーク王子の住める家と研究所これから作るので、その料金を支払ってくれませんか?」
「それくらいならお安い御用だが、セイカにメリットはあるのか?」
「クルーク王子が衣食住する際、今の状況だと冒険者用の部屋を継続的に借りる形になりますし、王子と村民たちも気を使わなくて済みます。それに、クルーク王子が研究を進めてくれれば、冒険者や民たちのためになりますし、今まで、廃棄していた魔物素材の使い道が見つかるかもしれないので、ボクだけじゃなくいろんな人にメリットがあります」
「確かにその通りですね。私、個人でも研究を少しばかりしておりますが、クルークと情報共有できれば、捗りそうですね」
アルス様がボクに同意する。
「よし分かった!そうしよう」
「ありがとうございます」
アンドルク様がしつこい王様でなくてよかった。
「セイカよ、せっかくできた縁だ。子供大好きな王様からの頼みを一つ聞いてはくれまいか?」
うーん、正直言ってこれ以上は関わりを持ちたくないからお断りをしたいところだけれど、ここまでハイワッド家の内側を見てしまったから断りづらいな。
「ボクにできることなら・・・」
「そうか・・・仕方ない事とはいえ、三男であるクルークに辺境の地まで行って来いとか面倒な雑務ばかりを押し付けてしまってあまり気分はよくなかったとは思う。だが、セイカと会って何かに興味を持ってくれて、活き活きしている。だから、王としてではなく父親としてクルークには楽しく過ごしてほしい。面倒事の押し付けの延長みたいな感じに見えるが、ネッショ村で共に過ごしてほしい」
「それくらいなら大丈夫です。そもそも、元からのそのつもりです」
「そうかそうか!リリとルルもどうやらセイカに懐いているみたいだし色んな事を学んで貰いたいから、クルークとリリとルルのために安心安全な家を建てよう」
「はい?えっ?リリ様とルル様も連れて行くのですか?家を作るのであれば構いませんが、離れ離れになりますよ」
「そうだか・・・リリとルルにはこのお城が窮屈みたいなんだ、客人の中ではせわしない二人に対して不信感を持つものもいる。フェリスもそうだがセイカ相手なら自分らしく振る舞えるからここにいるよりはいいかなと思っている」
「本人達の意思を尊重してくださいね。大切に思っているとはいえ、言葉にしないと捨てられたーだとか、いらない子なんだーとかで二度と会わなくなる可能性だってあるんですからね」
アンドルク様は、「それはもちろんだ」と言っていたから大丈夫だろう。
タイミングを見計らって執事さんが謁見を終わらせる。
途中、ボクが待っていた部屋にアンジェリカさんと太ももで眠っているリリとルルがいた。
ボクに気付いたアンジェリカさんが笑顔で手を振る。
ボクは、それにお辞儀をして答える。
外へ出ると既に夕暮れ時だった。
「今日はご足労おかけいたしました。久しぶりに、我が主たちの本来の姿をみることができました。ハイワッド家はセイカ様を好意的に思っております。もちろん私も。クルーク様、リリ様、ルル様をこれからよろしくお願い致します」
今日の朝、迎えに来る予定だったメイドさんが宿屋まで送ってくれるようだ。
緊張の糸が切れたのかボクはずっと上の空だった。
気が緩んでいたのとはいえ、ハイワッド家に出入りをしている少女。
確かな情報がないため、スパイだとか暗殺者だとか実は隠し子だったとか色々な情報が交錯していたが、クルーク王子と街へ、フェリス様とお城へ行ったため、実は隠し子だったっという説が瞬く間に広まったらしい。
つまり、ハイワッド家の関係者と勘違いされているということを知っておき、警戒するべきだったと思っている。
お久しぶりです。作者の清喬です。
仕事の忙しさと水色スタート印さんたちの動画を最近、ずっと見ていて時間があっという間です。7大豆とマイ◯ラ新サバ面白い。
先にお伝えしたいのですが、「尻拭い」の方がネタが思い付かず、投稿期間が空いてしまうことをお伝えします。
自分自身、ラブコメよりも異世界物にハマってしまっていて、異世界物の方が描く手が進んでいます。
「尻拭い」の方が今、中途半端なところで終わってしまっているので、なるべく早めに書きたいと思います。