森の主と王子と治癒召喚士
これは、自分で1から考えたオリジナル小説です。
過度な期待はしないでください。
あと、プロローグは現実世界の話ですが、これは異世界物です。
魔族と魔物は、似ているようで似ていない。
この世界では、言葉を喋れずただ他の種族を襲う種族のことを魔物といい、なんらかの形で他種族とコミュニケーションを取れる種族のことを魔族という。
そして稀に、魔物の中から魔族として迎えられるものが現れる事があるらしい。
なんでも、クルーク王子が戦ってるのはそれらしい。
しかし、テレパシーで送られてくるものは聞いていて辛いほどの音らしい。
救助の依頼をしてきた兵士を見ると、火傷を負っていた。
火傷と言うより皮膚が溶かされたような傷だ。
「兵士さん!その傷大丈夫?ボクはヒール使えるからすぐに治せるよ!」
「今はそれどころじゃない!他の兵士達も傷を負って、クルーク王子が1人で戦ってる状態だから一刻も早く救援をお願いしたい!」
「・・・分かった。あなたも無理しないでください」
見慣れた森を超え、少し暗い森を超え、そして真っ暗な森の中心部へと進む、幸い、道中に魔物達もいなかった。
走ってて気づかなかったけど、クーが明かりを灯す光魔法を使っていた。
やがて、ボク以外の光が見えてきた。きっと、あれがクルーク王子だ。
「大丈夫ですか!?」
「君か。君は戦えるのか?」
「期待はしないで下さい。貴方のように武術や剣術の訓練は受けてないので、自分の身を守るくらいしかできませんが、回復魔法が使えるのでとりあえずみんなを回復させましょう」
「戦闘は出来なくともそれはありがたいな。僕以外の兵士は、みんなあいつの攻撃を受けて、身動きが取りづらくなっている」
目線の先に目をやると木一本を丸々飲み込めそうなほど、巨大化している黄色いスライムがいた。
「・・・クルーク王子、スライムって青色じゃなかったですか?」
「そのはず・・・なんだが目の前のスライムは黄色いな」
「------ッ!」
「これがあの人が言っていた。言葉っぽいけど、聞き取れないテレパシーってやつですか?」
「そうだ。今はだいぶ攻撃が落ち着いて、何かを伝えたそうにしているのだが、言葉が分からなくてな」
「じゃあ、落ち着いてるうちに回復させちゃいましょう」
クルーク王子を見ると武器防具が壊れていて、というか一部が溶けている。
武器防具の溶解、火傷のような傷痕・・・このことからこのスライムは『アシッドスライム』かも知れない。
この世界では、スライムの情報が少ないから未開の地とかで進化してる可能性もある。
そして、あっさりと全員の回復が済んだ。
相手が様子を見ているようだからこっちから手は出さないようにする。
「おかしいな・・・さっきまであんなに積極的に攻撃してきたのに全然、攻撃されなくなったな」
「まぁもしかすると、人間みたいに突然の事にパニックを起こして、自分の身を守ろうとしたとか?」
「所詮、スライムがそんな事するか?」
「自分の身を守るのは本能的なものだし、畑を襲っているスライムは見つかったら逃げるような素振りをしてたからもしかするとって思っただけ」
「確かにそんな素振りをもあったな。でも、あいつの粘液に触れると武器が溶けて使い物にならなくなる。この鎧だってそんなに悪いものではないのだが・・・スライムごときが酸を使ってくるのか?」
「どうなんですかね?ボクは昔、祖父に聞いていましたが確かなものではないので」
「君は、記憶喪失と聞いていたが、戻ったのか?」
「あーいえ、ほんの一部ですね。弱い者を甘く見るな!と言う事で祖父が口うるさく、スライムを例にしてたので」
「どんな事を聞いていたのだ?」
「『スライムは決して弱くはない、スライムはなんでも吸収してしまうため、純度の高い何かで簡単に染まってしまう。青いスライムは何にも染まってないだけだ。』だそうです。これが弱い子供に対しての危険を冒させないための口実なのか、祖父の体験談であるかは分かりませんけどね」
「スライムも進化すると言う事か・・・なるほど、興味深い
な」
「それで、あれどうします?武器と鎧の様子を見るとあれは酸を使ってくるみたいですが、倒しますか?」
鑑定で見ると武器や鎧に対して溶解、人に対しては火傷の状態異常がついていた。
「ーーーーー」
ボクの倒すと言う言葉に反応するかのようにスライムは黄色いスライムは動き出す。
「うお、なんだ急に!」
「ーーーーィッ」
「王子、静かになにか言ってる」
言葉が小さくよく聞こえないがよく耳を澄ますとボクにとっては聞き覚えのある言葉が出た。
「ココハ・・・ドコ・・・ナンデ、ワタシ、イキテルノ・・・ナンデ、ワタシ・・・ヘイシサンニカコマレテルノ?・・・ワタシ、マタ・・・コロサレルノ・・・ヤダ・・・コワイ・・・コワイヨ、オカアサン・・・」
女神様の大サービスで、この世界で生きるために優遇してもらってたが本来はこんな感じなのだろうか?
「王子、兵士さん達の武器を下させて少し下がっててください。あのスライム、貴方達を怖がっています」
「怖がってるって向こうから攻撃してきたのだが」
「そりゃ、命の危機を感じたら身を守ろうとするでしょ?それに、あの子は生まれたばかりだから、何十人もの大人に囲まれて武器を向けられたらパニックだって起こすでしょ?」
「それはそうだが・・・分かった。でも、僕は近くにいるぞ。何かあったら大変だからな」
「心配性ですねー。まぁ、そうなったらあなた達には逃げて欲しいですけどね」
王子はボクの言った通りに武器を下させて、少し距離をとってくれと指示をしてくれた。
「大丈夫。怖がらないでほら、ボクは何も持ってないよ。君を傷つけないよ」
「ウウッ・・・・」
ボクが戦う意志がない事は伝わったのか、近付いても攻撃してこないけど、身構えている。
「これはただのお守り。このお守りに書いてある事読める?」
「・・・アイライクドユウ?ワタシハアナタガスキデシタ?」
最近の子供は英語も読めるのか。
「ここの世界の人たちはこれが読めないし、聞き取れないんだ、ほら、あの男の人見てごらん。ボクたちの事を不思議そうな顔をして見てるだろう」
「・・・ホントダ・・・デモナンデ・・・アナタハハナセテルシ、ワカルノ?」
「君のいた世界と同じ所に住んでいたからだよ。ここは日本じゃないし、地球でもない別の世界みたい。君は何で、スライムで生まれたの?」
「・・・ワタシハタダナニモカモ・・・ヤラサレテキタ・・・コレガコノイエノニンゲンダッテイワレテヤッテキタ・・・コレガニンゲンナラ・・・ワタシハニンゲンガイヤニナッタ・・・ダカラメガミサマニオネガイシタ」
なるほど、お金持ちのご令嬢だったのかアニメとかゲームとかで憧れを持ってたけど、実際ツラいだろうな
「・・・ボクはその女神様に殺されたみたいなものだけど、こうして今は自由に過ごしてるけどね」
「ジユウ?・・・トモダチトアソベルノ?・・・」
「その前に友達を作らないとね」
「ベンキョウシナクテイイノ・・・?」
「この世界の事は知らないといけないけど、家の中にずっと居ないと行けないほどではないよ」
「・・・モウニドト・・・コワイオモイヲシナクテイイノ?」
「それは、その姿はどうにかしないといけないかも」
(確か、スライムって人間の姿になれる気がするけど、どうなんだろう?)
鑑定を使って見たら予想通りそう言うスキルがあった。
「死ぬ前の自分の姿を思い浮かべて変身って唱えてごらん」
「ウーン・・・コウ?ジョウタイヘンカ!」
するとただまんまるだった体がどんどんひとの形になっていく。
この世界では、スキルや魔法は強く願う事で強力になっていく、この子はこの状況を早く脱したいからだろうが、とても強く思い描いてしまったため、文字通り生まれたままの姿になってしまった。
だってね・・・元スライムだよ。せいぜい人の姿をするだけで、色まで変わるとは思わないでしょ・・・
12歳くらいの普通の女の子が一糸纏わぬ姿が目の前に現れた。
「・・・あのう・・・お嬢さん?何で、裸なの?」
あれ?ウルフさん、狼から人になる時、服も一緒に着てたよな?
「お気に入りの服がたくさんあったから決められなかったからいっそのこと、お姉ちゃんみたいな服着たいなって思ったの」
「まあ、日本の服はこの世界じゃ目立つのは確かだけど、ボク以外にも他の人がいること忘れないでね」
「なんで?所詮、今の私はスライムだよ。これだってただの見た目だけなのに」
「そうだね。とりあえず、ボクの持ってる服あげるから着替えようか」
「うん!」
ルーネを呼び出し、葉っぱで周りを隠してもらう。
スライムちゃんを着替えさせてる中、ルーネはスライムちゃんをまじまじと見ている。
後ろの方で「なるほど、人間の外見はこんな感じなんですね」って独り言を喋っていたがそう言えばこいつ、ボクの裸を見たがってたな。
「さて、こんなもんかな?うん、可愛くなったね」
「ホント!?ありがとう、お姉ちゃん」
「ここからが本題なんだけど、スライムちゃんをどうするかなんだよね」
「確かに、このまま放置ってわけにもいかないですしね」
「かと言って村に連れて行っていろんな物を食い荒らされるのもねー」
「失敬な!私がそんな事するとでも?」
「スライムのボスである君じゃなくて、周りにいるスライム達の方、君はその姿でいればいいけど、他のスライムは姿形変えれないでしょ?」
「どうせなら、この子とも契約しちゃえば?それが1番いいと思うけど?」
いつの間にか、クーが出てきている。
「ボクとこの子が契約したところで、この子に従ってるスライム達は行く宛てないんじゃ」
「貴方は何を言ってるの?他の子も貴方の者になるわよ」
「え?そうなの?ちょっと詳しそうな人に聞いてみよう」
ボクは、貴族であるクルーク王子に聞いてみる。
「クルーク王子、質問いいですか?」
「なんでしょう?」
「貴族の人ってお互いの家柄を守るために結婚したりするじゃないですか?」
「あぁーするね。男は家の後継に女はいい家柄または同等の家柄に嫁に行くね。僕はあまりその風習が気に入らないけどね」
「それで、ご令嬢さんが他の家に行く時に仕えてる者も一緒に行くと思うんですが、その場合、その人はどう言う立ち位置になるんですか?」
「いい家に行けば、そのままご令嬢様に遣えるよ。名目上は、嫁に入った方の家の家臣となる。ただ、悪い家だとご令嬢とその家臣は奴隷のような扱いになったり、ただ子供を産むための道具になったりするよ」
「クルーク王子のところはどうなんですか?」
「うーん、どちらとも言い難いね。奴隷みたい扱いにはなってないけど、やっぱり差別的だね」
「クルーク王子は、いい家のような扱いをしてくださいね」
「僕はむしろ、家を抜けて普通の生活をして普通の人と結婚して、子供も出来て、死ぬまで一緒に暮らしたいよ」
「また、貴族だと厳しそうな夢を語りますね」
ボクは、「ボクが契約すれば解決しそうなのでクルーク王子達は先に帰って休んでも構いませんよ」と伝えたが、「僕も民を守る存在だから事の顛末を見守りたい」らしい。
スライムちゃんの元へ戻るとこの事を伝えた。
「クルーク王子に聞いて見たけど、貴族の人は主人が変わっても仕えてる人は変わらないって、まぁ、名目上は変わって主人の者って扱いらしいけど」
「お姉ちゃん。私このスライムちゃん達と一緒過ごしたい、私をずっと守ってくれてたから」
「まぁボクは被害が出なければそれでいいんだけど」
「じゃあ、契約成立って事でどうぞ、チューしてください」
「チューって・・:おでこでしょ?」
「別におでこじゃなくてもキスをするって行為が契約する行為だからどこでもいいんだよ」
「ええ!そうなの?知らなかっ・・・」
「えへへ・・・これで、お姉ちゃんは私たちを守らないといけなくなっちゃったね」
この子のスキルすごいな・・・スライムなはずなのにちゃんと若い女の子のような唇の柔らかさだったな。
まぁ、そんな子とキスしたことなんてないけどね!
「あらあら、積極的な子だね」
「これ、ボクからしなくても成立するんだね。寝てる時に契約されていたら怖くない?」
「まぁでも、私かセイカが居ないと契約魔法陣を作れないから大丈夫でしょ」
「・・・クーのいたずらでされるのが1番怖いのだけど」
「・・・!?」
「なるほど、その手があったか!みたいな顔しない」
「契約した時のスキルは何だった?」
「あ、そうだ。・・・『共鳴』?『仲間のスキルの一部を共有する。なお、威力は劣る』だって、あー、だから他のスライム達も酸の攻撃が出来ていたんだ」
「スライムちゃんは何、新しいの覚えた?」
「私は、『読解』スキル?『知らない言語や文字が読めるようになり、発する事もできる』」
「これって、ボクが最初から覚えてたやつか、これでみんなとお話しできるね」
そういうと、スライムちゃんはクルーク王子の元へ行き、
「すみませんでした!突然、こんな所に生まれて、大人の人たちに囲まれて、怖くなってしまい、あなたやあなたのお友達を
傷つけてしまいました」
「ん?あ、そうか、そんなこともあったな。僕たち王族は民のために命をかけるのが当たり前だから、命さえあればわざわざ、そんな事を気にしてなかったな。セイカのおかげでみんなケガは治っているが・・・まぁ、そうだな。こちらこそ君を怖がらせてしまったね。すまない」
「そんな、私こそすみません!・・・えっと」
「ハイワッド・クルークだ。ハイワッド国の第3王子だ。よろしく頼む」
「お、王子様!?こ、これはご無礼を働きました。申し訳ございません!」
「スライムちゃん、その人は堅苦しいのは嫌いだからボクと話すくらいでいいよ」
「それは、セイカが言う事ではなかろう?僕が言うべき事だと思うのだが・・・まぁ、いいか。セイカの言う通り僕は堅苦しいのはあまり好きではないから、あんな感じでいいぞ」
クルーク王子は、ボクを指差しながら言う。
「そろそろ帰りませんか。ここにずっといるのは気が滅入るのですが・・・それに、村の人たちを安心させないといけませんから」
親衛隊の1人がそう提案する。
「それもそうだな。思ったより長い時間、森に入り込んでるからな」
「だから、さっきボクはお先におかえりくださってもいいって言ったのだけれども」
「事の顛末をお父様に報告しなければならないからな。それとも、セイカが王都に来て、謁見するか?もちろん、自腹で」
「お断りします。せめて、連れて行ってくださいよ」
「君は転移魔法使えるんだから、行く時くらいは国民達に稼ぎをやってくれよ」
「なんで、転移魔法使えるって知ってるんですか?」
「君の所のギルドマスターが誇らしげに自慢してきたよ」
「ノアさん・・・まぁ、いずれ話すつもりだったから手間が省けました」
「君の力が規格外なのは元からだけど、その魔法使えるのはごく僅かの魔法使いだけだから、無闇に使わないでくれ」
「分かってます。だから、クルーク王子にも隠してたんです。王家の人だから特に」
「安心してくれ。君を拘束したり、無闇やたらと誰かに話すつもりはない。ただ、いざと言うときは協力してくれ」
こんなにも馴れ馴れしく話しているがクルーク王子も王家の1人だ、民たちには好かれているようだけど、それをよく思わない貴族たちだっているはずだ。
いざと言う時というのは家族が危険に晒された時のことだろう。
もしもの時のために早めに王都への転移を出来るようにしておきたい。
「色々あったが怪我人はいたものの、死んだ者は居なくて安心した。ありがとう」
ボクの家に着くと、クルーク王子はゆったりとし始める。
それに釣られてか兵士達もくつろぎ始める。
「まぁ、スライムちゃんが悪意を持って戦ってなかったから怪我だけで済んだのだけれど」
「そういえば、テイマーって契約したら名前を与えるのではないのか?スライムの子は名前をつけてないようだけど」
「あー確かに」
「何々、私のこと呼んだ?」
クーと同じように自由気ままな子だなー。
「君の事をスライムちゃんって呼ぶのは少し違和感があって、君がこの世界に来る前の名前覚えてる?」
「私の名前?私の名前は、童園寺 琥珀だよ。みんなには、琥珀ちゃんって呼ばれてた」
なんとなく気がついていたけど、お金持ちの子か・・・
クルーク王子達への拒絶反応や恐怖からボクが見たのは多分、この子の死に際の記憶なのだろう。
契約した時に相手の記憶を一部共有するがこの子の記憶は、あまりいい記憶がなかった。
簡単に言うと、過保護すぎる人達のせいで、何も知らずに育てられて挙げ句の果てに救助に間に合わなかったようだ。
だから、人間以外の生物に憧れを抱いていて、自由に生きていく・・・それがこの子の望んだ願いだったようだ。
「じゃあ君は琥珀ちゃんだね。以前と同じ名前だけどいいの?」
「みんな私の事を大切にしてくれてたし、何よりも私はこの名前が好き!」
こんなにいい子で可愛い笑顔を見せるのに、壮絶な人生を送ってきたのだから、この世界では自由に楽しい人生?スライム生を送ってほしいものだ。
「ところでクルーク王子は、村に行かないのですか?兵士さんたちは、また、村のギルドでお酒飲んでるみたいですけど、リーダーがここにいていいんですか?」
「リーダーだって1人になりたいからね。それに、今日は君に相談事があってね」
「王都には行かないですよ」
「知っているよ。実はね、少しスライムの生態に興味が湧いてしまってね。色々試して見たいことがあって・・・あぁ、痛い事ではなくて、今回の件で濃度の高い酸を吸収したことによって、アシッドスライムに変異したから、もし、他の物を吸収したらどうなるのかスライム自体はどのくらい頻度でどのくらいの回数、進化するのが気になってね。琥珀くんの部下でいいから少し協力して欲しくてね」
「それ、ボクも気になってたんですよね。ボクは構いませんが琥珀とその部下がいいよって言うかどうかですが。琥珀はどう?」
「怪我しないんだよね?それなら、いいけど」
「約束する。もし、傷付けたりしたら煮るなり焼くなりしていい。と言うか、僕の方が傷付きそうだけどね」
「いや、王子がそんな事軽々しく言っちゃダメでしょ。普通に大問題ですよ」
「そんな事は自分がよく分かっている。君たちや村の人たちはよくしてくれたし、敵に回したくない」
傷付けた=死というのは、正直平等ではないがそれほどの覚悟があるということになる。
その覚悟に勘付いたのか1匹のスライムが体の一部を細くして上に向け、クルーク王子に近づいている。
人間で言う「手を挙げている」ような状態だ。
「おっ!君が協力してくれるのかい?感謝するよ」
「それともう一つ、この地区に研究所を作ってくれないか?あと、いくつかの部屋を作ってほしい」
研究所って怖いイメージが大きいからあまり表向きにしたくない。
「錬金術と研究所があるところって怖いでしょう。やばいものを作ってなくても何か言われそうですけどね」
「確かに、一つにまとめ・・・る方が怖いか」
「だったら、見学できるようにすればいいと思います」
いつの間にか帰ってきてたブライトさんが提案をしてくれる。
「確かにそうすれば表向きはいいですが、絶対裏に何かあるとか言われそう」
「もし仮に、王子が研究所にいるとします。王子は、どうやって眠りにつくのですか?ここから、王都まで帰るんですか?」
「それは、セイカの転移魔法で・・・」
「ちょっと、クルーク王子?当たり前のように言ってますが、さっき緊急時に使わせてもらうって言いましたよね?」
「そうだったか?」
「バレたらまずいって自分で言ったでしょう!?」
たまに、クルーク王子は天然な所がある。
「それで、どうせなら研究所と一緒に寝泊まりできる部屋もいくつか用意して、そこの一つをクルーク王子が利用して他はここに寄った人の宿泊施設とか休憩所にするとか?もちろん、クルーク王子がここに滞在してしてるのは内緒にしてね」
確かに一国の王子がこんな所に滞在していることが知られたら色んな意味で危険だ。
「なるほど。君たちと一緒に過ごすのか・・・城の中よりは退屈しなさそうだ」
「そういえば、失礼かもしれないけど、国民以外にクルーク王子に興味を持つ人っています?ボクの勝手なイメージだけど、王族って上の男兄弟と女兄弟くらいにしか興味なさそう」
「・・・はぁ、お察しの通り。兄上2人は僕よりも全然優秀だし、こういう危険な目に合わせないために家の外に出させないからな」
「それはそれは・・・お兄ちゃん達も大変だ。ちなみに、クルーク王子の兄弟って何人なんですか?」
「比較的、歳の近い兄が2人と少し歳が離れた僕、そして、もう少しで18になる長女と君と同い年くらいの次女と琥珀ちゃんくらいの三女がいる」
「多いですね・・・」
「両親の相性がいいんだろうね。でも、すごいですね。6人って」
「大変なんだぞ。両親と兄上2人は、国の仕事に追われてるし、姉上もそれの手伝いをしてるから、必然的に僕は1人で妹2人を見ている状態だよ」
何というかクルーク王子は色んな意味で苦労人のようだ。
「今は大丈夫なんですか?」
「2人が国の仕事の見て見たいって言うから姉上にくっついているはず」
「休めると思ったら今回の件で、遠出させられたってことですね。大変ですね」
どの場所でもそうだが、『休みだから』ではなく『休みだけど』って考えになってほしい。
休みの日だし、仕事をしてくれるだろうと言う考えはやめてほしい。
「明日には一度、王都へ発つつもりだが用事を済ませたら研究を始めたい。多分、妹2人もついてくることになるのだが、大丈夫だろうか?」
「いいですが、国として大丈夫なんですか?王様の息子1人と娘2人がこんな何が起こるかわからない場所に来て」
「正直、不安だ。僕と冒険者の2人しか戦えないのだからな」
ブライトさんが不思議そうな顔をしている。
「私のお父さんも戦えますよ。かなりの腕の魔法使いだと思います。目立ちたくないから実力を発揮してないだけで、本気を出せばセイカさんより強いのではないでしょうか?」
さっきからなぜボク達も数に入れてるのか、ボク達は戦いぶりは見せてないはずだけど・・・
「あのそもそもクルーク王子?ボク達は、戦いぶりは見せてないはずですが?」
「実力は見なくても、活躍は聞いてるからな。ギルドマスターにもギルドの受付嬢にも村民たちにもな。君たちは回復魔法が使えるのだろう?即死じゃなければ、回復させてくれるだろう」
「王子だけ戦うのはキツくないですか?」
「勘違いしているようだが僕達3人は王家のものだぞ。そこらの一般人とは違うぞ」
かなりフレンドリーだから忘れていたがそういえば、クルーク王子は王家の人間だ。
「とはいっても、警戒はしっかりしないといざという時、大変なことになると思うのですが」
「大丈夫だ。僕が何とかする」
「それならいいですけど・・・」
変な自信は他人を傷付けるって言うけど、実際、体験しないと分からないんだろうなー。
「さて、明日早いんでしょう?これから村に戻るんですか?それとも、ここまだ空き部屋あるし泊まります?」
「そうだな・・・疲れたし、お言葉に甘えてここに泊まらせてもらうよ」
「分かりました。これからボクがご飯を作ります。ブライトさんは、ギルドの手伝いで疲れただろうし、休んでてください」
「いえ、私も作ります。料理を作るのは好きですし、セイカさんだって森に長時間こもって疲れたでしょ」
心優しい人だ。
「っていうか、王子様と一緒なんて居心地悪すぎでしょう!あなたみたいに、打ち解けてないんだから!」
ボクだけに聞こえる声で本心をいってくる。
(確かに普通の人ならビクビクするか・・・)
「じゃあ、お願いしようかな?」
2人で協力して料理を作ったため、あっという間に完成した。
「はいどうぞ。村の料理です。口に合うかは分かりませんが、召し上がりください」
「ありがとう。わざわざ、僕の分まで用意してくれたのかい?」
「ボクもお腹減ってたし、クルーク王子も何も食べてないでしょう。ずっと、ボクと一緒にいたんだから」
「いただくとしよう」
ご飯を食べ終わり、後片付けをする。
「・・・なぁ、それは楽しいのかい?」
「?食器洗いのことですか?1人じゃ寂しいですけど、数人でやると楽しいよね」
「お料理も数人でやると楽しいです」
普段、こう言うことをするどころか見ることもないのだろう、料理をしてる時もちらちらとみて来てたし、興味があるのだろう。
「我が城の厨房でもするべきなのか?」
「いや、それはやめておいた方がいいですよ。厨房の人、気が気じゃないですよ。ボク達だって、クルーク王子が手伝いにきたら怖いですよ。少しでもケガをさせてしまったらって」
「・・・そうか」
クルーク王子は表情こそは変えないが少し寂しそうに見える。
後片付けを終えると疲れがどっと来たのだろう。
ブライトさんが眠そうにしている。
「ブライトさん、眠たそうなので先に寝てしまっていいですよ」
「でも、クルーク王子が・・・」
「僕のことは気にしなくていい、そもそもここは君らの家だ。僕を気にすることはない」
「・・・分かりました。明日の朝ご飯も、楽しみにしててください!」
そう言ってブライトさんは寝室に向かった。
「クルーク王子は寝ないのですか?」
「もちろん寝るさ。ただ、まだ少し用事が・・・っと」
そういうと鳥がこちらへやってくる。
鳩だ。つまり伝書鳩とかいうやつだ。
「コイツは、城で飼っている鳩だ。こんなふうに、手紙のやり取りをしている。森の件の途中経過を送っていたのだがそろそろくるころだと思ってな」
空であれば、直線距離で行けるから早いのだろうけどそれにしても早すぎだろう。
「うん・・・まぁ、そうなるか・・・」
クルーク王子が何か独り言を呟いて、嫌な予感しかしない。
「冒険者セイカよ、君を僕の護衛として、現国王の父上からの命令がきた。喜べ、王都までの無料チケットだぞ」
(ああー、やっぱりか・・・クルーク王子が途中経過を知らせてるって聞いてから嫌な予感してたけど、ここまで、予想通りだとなー)
「ええっと・・・拒否権は?」
「ない!そして、僕と共に父上への結果報告となる。そう、父上からの知らせが届いた」
「ええと、出発は?」
「無論、明日の朝だ。我が兵士達も君がついてくると聞くと喜ぶぞ。優秀なヒーラーがいれば、思う存分戦える」
「みんなにあまり無理させないでくださいね。兵士の数に対してボク1人なんですから・・・」
「・・・意外とあっさり了承したな、もう少し粘るかと思ったぞ」
「粘った所で、はいそうですか。で、終わらないでしょう?そういう、無駄なことはしたくないので」
「諦めがいいのも一つの利点だぞ」
「クルーク王子こそ、油断しないでくださいね。ケガによっては、命の危険が数秒で変わってしまいますからね」
「そうだな、肝に銘じておこう。さぁ、明日はお互いに早いからそろそろ寝ようではないか」
ブライトさんを起こさないように静かに歩き、ボクの部屋と空き部屋にクルーク王子を案内して寝ることにした。
夜が明けて王都へ出発する時間が来た。
朝起きてすぐにブライトさんに伝えたら驚いていた。
クルーク王子の出発を見送ろうと村人さんとノアさん、ラットリーさんが来ていた。
「この村に来て早々に王都へ行くとはつくづく貴女は面白いですね。貴女は、この村の冒険者何ですからいつでも帰って来てくださいね。お土産も楽しみにしています」
ノアさんがいつもの調子で話してくれる。
「また、ブライトさんが1人になっちゃいましたね。セイカさんに頼みたい依頼もまだたくさんあったのに」
「別に王都に引っ越す訳では無いので、すぐに帰って来ますよ」
「そうですね、お待ちしていますね」
ラットリーさんも普段のラットリーさんだ。
「王都か・・・私もいずれ行ってみたいなー」
「親バカのノアさんが最大の敵になりそうですね」
「うーん・・・そこまで、私子供じゃ無いのになー」
「何を言う!親からしたらどんなに成長しても子供は子供です!100%安全じゃない限り許しませんよ」
「そういう親の方が愛されてるって分かるからいいと思うけどな・・・」
親バカノアさんとブライトさんの様子を見て、クルーク王子が少し寂しそうな表情をする。
「さぁ、セイカよ。出発の時間だぞ。準備はいいか?」
「はい、大丈夫です。というか、何を準備するんですか?そうだ、念の為、琥珀とその仲間たちを同行させますね」
「そうだな、直ぐにでも戦えるようにしておこう」
ボクは琥珀をクルーク王子は研究に協力してくれるスライムをそばに置き、馬車を出す。
村の人達みんなが手を振ってくれている。
本当にこの人たちはいい人達なんだなと思いながら精一杯に手を振りかえす。
おはこんばんにちは、作者の清喬(旧セユ)です。
少し時間が空いてしまいましたが、ヒーラーテイマーの最新話が完成しました。
今回も、異世界転生の定番を詰め込んで見ました。
やっぱり、定番はいいですね。
あと、このサイトが結構変わりましたね。
大体は同じですが、まだ慣れていないので慣れていきたいです。