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治癒召喚士の冒険者での初めてのお仕事〜平和な村と同業者との出会い

これは、自分で1から考えたオリジナル小説です。

過度な期待はしないでください。

あと、プロローグは現実世界の話ですが、これは異世界物です。


ボクは昔、ペットを飼っていたことがある。

昔というのは、異世界転生する前のことになるがボク達の家族は、血筋なのかは分からないけどずっとペットを飼っていた。

先祖代々家を守ってきた大黒柱を壁に並べて飾ってあり、その下に命を全うしたペットたちの写真を飾ってあるほど、動物が大好きみたいだった。

ペットたちは、人間よりも寿命が短いため、何度も死を見てきたが、ボクたち人間のように、誰かに愛し、子を成して来た。

生まれて来た子供にも愛情を注いで、まるで、家族の一員のように過ごして来た。

ボクが産まれたの同じ日に、誕生したペットがいて、共に成長して来た。

中型犬は13歳が平均寿命らしいがボクが、お世話をしていたペットは少し長生きで15歳まで生きて、ボクの高校入学まで見届けてくれた。

その時は悲しかったものの残してくれた子供にも同じくらいの愛情注いで行こうと心に決めた。

しかし、高校3年生の夏休みの日にボクは散歩中に友達との話に夢中になっていて、リードが手から離れていまい、車に轢かれて死んでしまった。

『家族の1人が死んでしまった。いや、家族の1人を殺してしまった』

そのから、ボクは家族の関係が崩れていき、大好きだったペットの世話も怖くなってしなくなった。

高校3年生の残りの日々は辛かった。

誰とも話すこともなく、大好きだったペットの世話もできなくなって、ボクは今まで以上にゲームに没頭するようになった。

唯一、幼馴染の友達とオンラインで協力したり対戦したりすることが楽しかった。

高校を卒業して就職すると同時に、家を出て1人暮らしをすることであの重い空気から逃れることを選択した。

ボクの就職した会社は、会社自体はブラックではないが、上司たちが基本的クズである。

平社員の先輩と同期、後輩はいい人が多かったからここまで続けれた。

崩れて行った言っても家族は家族だ。

ペット関連の便利グッズや現金、日用品とかは定期的に送っている。

5年前、ボクと共に命を全うしたペットの子供がみんな息を引き取ったという連絡が来たが、ボクはこれ以上、家族の死に顔を見たくなかった。

ボクは、仕事に行っては帰って家でゲームをしてまた、仕事行くそんな日々を送っていた。

その3年後、つまりボクが事故死する2年前に母親が病に倒れそのまま亡くなった。

父親はまだ健全ではあるものの少し心配だ。

「俺はまだ元気だから心配するな。けど、多数のペットを世話するのは無理だから、誰かに譲ることにする」

夜空そら、お前にもできれば世話をお願いしたいのだが・・・」と言われたけど、マンションだからペット禁止だから受け取ることができなかった。

そしてボクは、2度と父親に会うことが出来なくなった。


昨日、もふもふを久しぶりに触ることが出来たからなのかとても懐かしい夢を見ていた気がする。

寝ぼけながらもふもふに手を伸ばしたはずだったが、自分の手に伝わる感触はスベスベながらもちゃんと筋肉とわかる手触りだった。

「おはよう。貴女殿・・・あのくすぐったいので、撫でるのをやめてもらうとありがたいのだが・・・」

昨日、抱き枕にしたもふもふが居なくなり、目の前にはケモ耳と尻尾を生やした女性がいる。

「ええと・・・あなたは誰ですか?不法侵入者の方ですか?」

「ちょっと、セイカ。失礼でしょう、その人は昨日のウルフの人だよ。というか、ウェアウルフって気づいてなかったの?」

いつの間にかクーが来ていて、事件の真相を突き出してくる。

「すみませんでした!無実な人を疑いました!」

「セイカ殿でいいのかな?まず、我が主と我が身を救ってくれたことに感謝する。獣族は言葉を発することは出来ず他の種族と会話する時はテレパシーで話す。獣人族は、人間族の言葉を発することができる。・・・セイカ殿よ、何か事情があるのか?」

なぜか心配された。

「そりゃ、そうでしょ。だって一般常識だよ。知らないとなると学校に通えない子くらいよ。まぁ、セイカは今より以前の記憶が無いからしょうがないけどね」

「なるほど。そういう事情が・・・」

「だから、元ブックフェアリーの私がサポートしているの!」

「イタズラ好きのせいで重要的なことは、こういうハプニングが起きてからじゃないと教えてくれないけどね」

「・・・一ついいだろうか?」

「何でしょう?」

「そろそろ、動いていいだろうか?」

「あっごめん。あまりにもいい筋肉だったからつい手が・・・」

ずっと、ボクはウルフさんのお腹に触れていた。

「そういえば、今更だけどウルフさんの名前は?」

「?私の名前は、ウルフだが?」

「え?そうなの?」

「私の主もちょっと抜けてるところがあって、私のことをウルフだと思っていたからな。そのまま、呼びやすい名前になったのだろう」

「従者の言っていいセリフじゃないなー」

「セイカ殿もテイマーならわかるであろう。私は、『対等契約者』だ。同じ立ち位置だから問題ないであろう」

「そういうことではないのだけれど」

「主殿が家族のように接してほしいとの希望だからな。それに貶しているつもりはない。それは個性だ。そういうとこが可愛くて守りたくなってしまうのさ」

「じゃあ、『主』という目から伝えておくよ。自分の身を犠牲にするようなことはやめろ。誰かを守ると言うことは、主として嬉しいことだけど、せめて・・・被害は最小に抑えてくれ」

「・・・ごもっともな意見だな。我が主とのために善処しよう。そういえば、我が主とあの子供は無事なのか?」

「大丈夫。ボクの『ルー』が守ってくれたよ」

ボクは、ルーネを呼び出す。

「セ、セイカさん、恥ずかしいので言わないでください」

「君は、アルラウネか。改めて、我が主とか弱き少女を守ってくれてありがとう」

「い、いえ。私はただセイカさんに命令されて」

「・・・命令する前から動いてた気がするけどなー」

ルーネは、ボクの後ろに隠れながらツルの鞭でぺちぺちしてくる。

「ちょ、ルー痛いよ。ダメージが低いからって攻撃してこないでよ」

「セイカさんが悪いんですからねー」

「そういえば、セイカ殿。モンスターの素材やら薬草を集めていたようだが、それはどうするのだ?この家は、見た感じ工房やら調合室なんてものはなさそうだがただの荷物ではないのか?」

「この家、立派ではあるんだけど服とか日用品が足りなくてね・・・買いに行くための資金が欲しくて、ウルフさんのことが解決したらネッショ村に行くつもり」

「ならちょうどいい。我が主は、その村を拠点にしているから私の事も一緒に解決できるぞ」

「おお、それはありがたいけど、そこまで行くのに時間かかるからフリーな状態で行きたい」

「なら、余計に今がいいぞ。私がいるからな。ここまで、世話になったお礼だ、我が背中に乗せてやるぞ」

「いや、それはどうなんだろう?」

「何か不満か?人間族だって人を背中に乗せる事だってあるだろう?」

「そうだけど、ウルフさんはボクの契約者じゃないから悪いなーと・・・」

「我が主は気にしないと思うがな?まぁいいや、だったら村の入口が見えるところまで乗せていってやる。それならもんだいなかろう?」

「いや、だって背中に乗るって子供みたいじゃん」

「?あー、そう言うことか何か勘違いしているようだが、私が獣化している状態で乗るのだからな。二本足で人1人を背負うのは流石に大変だし、それだと、私がいても変わらないではないか」

「あー、確かに。それなら、お願いしようかな?」

「承知した。準備が出来たら話しかけてくれ」

画面の下の方に字幕が出そうなセリフを言うウルフさん。

(ゲームだといくら待たせても準備が出来た?と聞いてくる心の広いNPCだが、これは現実だ。気が変わらないうちにお願いすることにしよう)

「なあ、セイカ殿・・・」

「どうしたんですか?」

「こ、これを着ていただけないだろうか!?セイカ殿には、絶対に似合うとも思うのだ!」

「え?やだよ。そんなピンクでフリフリな服着るの」

「・・・そうか、申し訳ない」

「・・・」

「あ・・・すまない勝手なことをして、セイカ殿がどんな物を好んで着るのか少し気になってしまって、ちなみにこんなにたくさんあるのに着ないのか?」

「ボクは、あまり目立ちたくないからね。暖色の服より寒色の服の方が好きだし。・・・ねぇ、そんなに可愛い服好きなの?」

今もまだ、服を漁っているウルフさん。まるで、他人の家に入り込んで、壺やら樽やらクローゼットを漁る勇者のようだ。

「いやどれも可愛らしい服なのにもったいないなーと思ってしまってな」

「ねー、本当だよねー。着ればいいのにね」

クーも一緒になって話している。

「そうだ、ルーよ。あなたのその格好はちょっとオスには刺激が強すぎる。動き回るうえで衣服の着用をしてくれ」

「うん・・・まあ確かにな」

「それは、私も思ってた」

ルーの格好は大事な所に葉っぱが付いていて、草のカーテンのようなスカートをしているだけ。

「初めて会った時は、一草も纏わぬ姿だったからね。植物だから哺乳類特有の物はないけど、シルエットは完全に人間だからね」

「「なるほど」」

「そこの2人、気になるからって覗くなよ」

「・・・承知した」

「・・・分かってるよ」

「・・・セイカ殿、他人の心配じゃなく自分の心配した方がいいぞ」

ツルに四肢を固定されて身動きの取れなくなった。

「・・・あのー、ルーネさん?離してくれませんかね?」

「私とセイカさんは何が違うのかなって気になって」

いつの間に目の前に来ていたルーが不思議そうな目で身体中を見てくる。

2人に助けを求めるように目を向けると2人してこの状況から顔を赤らめながら目を背けている。

(おい!助けてくれよ!)

「あのルーネさん・・・今はやめてもらえませんか?・・・そんな急がなくても見えちゃう場面あるからね。お風呂とか着替えする時とか」

「うーん・・・なんで、そんなに隠したがるのかな?見たところで減るものじゃなのに」

「・・・まぁ、世間体というか道徳的にね?植物のルーネには分からないことだね。それに、離してくれないと体の一部のツルを切り落とすしかなくなるよ。今までの感じ、人間の感情はあるから血は出なくとも痛いぞー」

「痛いのは嫌かも・・・?」

「だろう?自分の身を守るため、仲間を傷つけなくちゃいけないのも嫌だしね」

「分かった」

「じゃあ、私みたいにお風呂中とか着替え中に突撃だ〜」

「変なことを教えない!・・・ウルフさんも乗らなくていいですよ」

「え?えっと・・・そうだな」

(「お〜」って言いそうな雰囲気だったけど、その前に制止しておこう)


「よし、こんなものでいいだろ。そもそも、大切なものなんてないしね」

いつの間にか、めちゃくちゃくつろいでるウルフさんに声をかける。

「ウルフさん、そろそろ行きましょうか」

「ん?もういいのか?なら、準備していこう。にしても、ここの家は広くて過ごしやすいな」

「まぁ確かに。でも、ボク1人で過ごすには広すぎるかな?」

「・・・なあ、セイカ殿、我が主とルームシェアをしないか?ここであれば、周りは何もないし鍛錬にも使えるしな」

「いや、いい年頃の女の子なんだから知らない人と一つ屋根の下っていやでしょ」

「?同じ年頃で同じ職業ならいいのではないのか?ほら、人間には学校と言うものがあるではないか」

(あ、そっか中身は28歳のおっさんだけど、見た目は年齢にそぐわない14歳の女の子だったな)

「まぁ、部屋は空いてるし、契約者以外の人と過ごすのもいいかもしれないな。ただ、あなたの主の意見を尊重してね。ウルフさんが住みたいからって強制するのはなしね」

「もちろんだ。まぁ、多分即決すると思うが、なんなら、どうせ会うんだし、直接聞いてくれたほうがありがたいな」

「時間に余裕があって会えたら聞いてみるよ」

「承知した。さて、出発するぞ」


村までの道中は特に何もなかった。

魔物に破壊された馬車もないし、ごろつきに絡まれてる女の子もいなければ、山賊に絡まれることもなかった。

唯一あったといえば、スライムに襲われたくらいだ。

スライムといえば前世の記憶では、ものすごい量のスライムを駆使してチートしてる転生者とか物理も魔法も効かない最強な魔物だったりするが、この世界では、『なんでも食べる。ただの弱い魔物』ってだけだった。

それだけだった。

弱すぎて情報がほぼないらしい。

スライムの研究して、結果を出せば大金持ちになれるかもしれないな。

まぁ、ボクは研究者になるほど頭も回らないし、そんなことよりゲームしたい。この世界自体ゲームみたいなものだけど。

「ここがネッショ村だ。小さい村だけど、物は売れるし、日用品や食材は普通に買えるな。穏やかな村だからゆっくりしていくといい」

「これが田舎かこういう雰囲気の方が好きだけどね」

「いなかとは何かわからないが少なからず街とか王都とは程遠いな。そうだ、セイカ殿ギルドに入ることをおすすめする。ギルドカードは冒険者の身分証明にも使えるし、素材があればなんでも買い取ってくれるし、クエストを受けてクリアすれば報酬も貰えるし、冒険者を生業としてる人は多い。まぁ、魔族と対峙していた時代はもう終わっていて平和な世界になったから、便利屋として依頼される事ばかりだけどな」

「それは、冒険者なのか?」

「もちろん、冒険者としての依頼もある。セイカ殿が倒したウルフの大群の討伐。あれは一応、クエスト依頼が出てたんだ」

「そんな、大事だったの?あれ、1体1体は弱かったのに?」

「セイカ殿よ。あの森は、一般の人も訪れる事が可能な森。つまり、戦闘能力の持たない者たちも気軽に遊びに行ける森だ。そして、この村の人達はその森を結構利用している人が多い。そんな中の大群だぞ。大事だろう」

「確かに、でも他の村とか街からの冒険者だっているでしょ」

「あくまで、戦闘能力を持たない人基準だからそんな物に遠方からくる冒険者なんていると思うか?」

「うわ・・・そう考えると大事だ」

「我が主は、平和だけど手薄な村を少しでも守るためにここを拠点にしている」

「あれ?でも、あの子以外にも冒険者いたような・・・」

「彼らは、たまたまここに来ていた、冒険者だ。最優先事項が村人の護衛だったからな。それを済ましたらそそくさと帰ったよ」

「えっ?じゃあ、この村の冒険者って」

「我が主1人だ」

「うわぁ・・・大変そう」

「とは言っても、平和な村だからな。村人たちだって自分たちが出来ることは自分でやれるからそこまでの依頼はないよ」

「それは冒険者としていいことなのか・・・悪いことなのか・・・」

「鍛錬ついでに倒した魔物の素材を売って生活してるのがうちの主だしな。と、村の前で長々と話してしまったな?お互いにやること済ませに行こうか」


ウルフさんの言われた通りの道を行くと、他の建物よりも新しくて大きめの家があった。

中に入るといくつかの丸テーブルに椅子が並べられて、ご飯処みたいな匂いがする。

(あれ?ここって、ギルドだよな?)

確かによく見るギルドにも丸テーブルは置いてあるが、こんな匂いはしないはずなんだけど。

カウンターにいる人に声を掛けてみる。

「あのー、すみません」

「こんにちは。ご注文は何にしますか?」

「えっ?ここってギルドじゃないんですか?」

「ああー、冒険者の方でしたか。そうです。ここはギルド兼食事処の『冒険者の食堂』です。私はここの受付をしているラットリーです。ご用件はなんでしょう?」

「冒険者登録をしにやってきました」

「承りました。少々、お待ちを」

ラットリーさんは、店の奥の方に入って行き、しばらくしたら戻ってきた。

「お待たせしました。それでは、手続きを開始しますので中にお入りください」

案内された通りに中へ入ると男の人がいた。

「こんにちは。こんな辺境の村に冒険者登録をしに来るなんて、珍しいですね」

「はい、自分が住んでるところで1番近いところなので」

「こんな村の近くに人が住んでる家なんてありましたか?」

「あぁーええと近いと言ってもあのものすごく広い大草原わかりますか?」

「ああーありますね。あんなに広いのに生き物も何もいないまるで別世界にいるように感じる大草原が」

「そこの大草原と平地の境目みたいなところに住んでいるので」

「それはそれは、遠方よりお越しいただきありがとうございます。何もないところですが、ゆっくりして行ってください」

「ありがとうございます」

「さて、この水晶に手を触れて魔力を注ぎ込んでいただき、ギルドカードが出たら私が名前を刻印した終了です」

「分かりました」

「あぁそれと、これは魔力の詳しい情報を調べるためなので、少しの魔力で大丈夫ですよ。魔力を込めすぎると割れてしまう、ガラクタ水晶ですのでお気をつけて」

「ギルドマスターがそんなこと言ってもいいんですか?」

「だって、新しいやつって注入するんじゃなくて、吸収するんですよ・・・こんな毎回注意事項言わなくてもいいし、冒険者自身で出来るからわざわざ私が立ち会わなくてもいいんですよ」

「なるほど。人って不思議なことに最新型の方に行きがちですからね」

「ここのギルドの水晶も新しくしてくれれば、少しでも冒険者来るんじゃないかと昔から思っていますよ。さあ、終わりましたよ」

「ありがとうございます」

「まぁ、唯一の利点はこんな風にお喋りをしながら出来ることですけどね。お名前はなんでしょう?」

「セイカです。よろしくお願いします」

「はい、完成です。ふむ、あなたもテイマーなんですね、あと、サブで魔法使い・・・なるほど、私の娘と同じですね」

「へえー、娘さんも冒険者をやっているんですね。そういえば、ずっと気になっていたんですけど、ギルドと食事処って珍しいですよね」

「まあ、平和な村ですし、冒険者も少ないので、他に併用していかないと維持できませんから」

「あ・・・ありがとうございました。それでは、失礼します」

(ええー・・・やっぱりギルド経営大変そうじゃん。仕方ない、他の店で素材売るかー)

「・・・うーん、何か匂いますねー。セイカさん、あなた何か他にご用件があるのでは?私、嘘は嫌いですので正直にお話いただけませんか?」

こういう時にニコニコ笑顔の人の圧って怖いものだ。

「あ、ええと・・・実は素材とか服とかを売りたかったのですが、経営が大変そうなので遠慮しようかなと」

「なるほど、それは気遣いありがとうございます。でも、冒険者がそんなこと気にするものではないですよ。ふふ、つくづく私の娘に似ていますね」

「ではこれを、ウルフの素材と薬草と服を・・・」

「こんなに大量にウルフの素材をどうして」

ギルドマスターは、驚いたような顔をしている。

「いや、薬草集めで森に行ったらなんかウルフの大群が森を占領していたので、危害を加える者たちを排除しました」

「なるほど、貴女でしたか。この村唯一の冒険者である私の娘と村人の子供を救ってくれてありがとうございました」

「村の子供を守ったのは、ウルフさんですよ。自分の身を犠牲にしてまで村の子供を守ったそうですよ」

「そうだ。ウルフは大丈夫でしたか?あのウェアウルフは、娘の初めて契約者で本当の姉のように慕っていたもので、村に帰って来るなり、ウルフを助けないとって森に戻ろうとしたのです。村のみんなで止めることがで精一杯でした」

「大丈夫ですよ。怪我の治癒と一晩休んだら全快になってましたよ。ウルフさんがお礼をしたいということでここまで連れて来てくれました。ウルフさんも我が主は無事か?ってずっと心配してました」

「なるほど、これはこれは・・・貴女を帰すわけには行かなくなりましたね。このギルドは、冒険者用の宿もあるのですよ。お礼として宿屋の一室を無期限無制限にダダで使ってもらって構いません。私の娘と共にここ冒険者拠点として使ってください」

「いや、部屋一つ独占したら泊まらせることができなくなりますよ」

「ここは平和な村ですし、部屋が余ってるくらいですよ。命の恩人に名前を教えないのも失礼ですね。私の名前は、ノアと言います。今後ともよろしくお願いします」

「セイカです。よろしくお願いします」

「あっ、そうそう素材はギルドの方がいいですね。ちゃんとした品物、セイカさんの持ち物で言う服は、服屋に売った方がいいですよ。見た感じキレイにされているのようなので相応の価格はなるかと。ただ、服とかアクセサリーとかは街に行かないとちゃんとした値段で買い取ってくれませんが」

「服は、売れたらいい程度と思っていましたが、相応の価値で売れないのならもったいないですね」

「ふーむ・・・それなら、一つお願いがあります。私の娘にいくつか売っていただけませんか?あの子は1人っ子で育ての親は父親の私1人なので、どんなのが好きなのか分からなくて・・・見繕ってもらえませんか?」

「あーええと・・・ボクもそういうのはわからなくて・・・ウルフさんも譲っては貰えないだろうか、って言ってましたけど、それなら本人が選んだ方がいいのではと思って保留状態にしています」

「そうですか。なら本人に選んで貰いましょう。これ、素材の買取金額になります。どうぞ」

「あ、ありがとうございます。娘さんは、ウルフさんに会えましたかね?」

「多分、会えてはいると思いますが、忙しいんだと思います」

「平和な村なのにですか?ウルフ退治もボクがうっかり解決しちゃいましたし、元の日常に戻ったのではないんですか?」

「元凶のウルフは、解決しましたが発生した時がいきなりでしたので、大きな怪我はなくとも小さな怪我をした人もいますし、自分に責任を感じて治療しています。回復剤や治癒魔法を使える人は居ますが、今、村から出払っていますのでそれまで応急処置をしているようです」

「それ、1人じゃ大変じゃ・・・ちょっと手伝いに行きましょう」

「ホントですか?ご助力感謝します。ブライトにも休んでもらいたいものです。場所にご案内いたします」


しばらく歩いていくと教会のような建物が見えてきた。

「こちらですね。昔はここで宗教団体がいて、怪我の治癒とかをしてくれてたんですがね。信仰が足りないと言われ出て行きました。ここの薬剤師さんと治癒師は、その団体から何かの事情で追い出されたものがここに居座ってくれてるので感謝しないとですね」

大きな扉を開けるとケガしている大人と健全な子供たちがいた。人数比1:2で子供が倍以上いる。

「・・・ノアさん、このケガ人の数ならすぐ終わるのでは?」

「セイカくんよ。子供という者は寂しがりやなものでね。いつもいるはずの親がいないと不安にかられ、泣いてしまう。ほら、ここって、平和な所だから子供が多いし、1人になることはほぼないからね。要する夜泣きが酷くて村の人々が困り果ててるから壁の厚いところに一ヶ所に集めてしまえということでここに集めています」

「それは、応急処置というよりただお守りを任せてるだけじゃないですか!ああほら、応急処置しようにも子供に邪魔されてろくに出来てないじゃないですか!」

「子供は元気が1番ですね」

「で、薬剤師とか治癒師はいつ帰ってくるんですか?」

「さぁ?色んなものを買って帰ってくるので、正確な時間は分かりません」

「はぁーもう、とりあえず傷を治しましょう。ルー、ごめんだけど手伝って」

「は、はい・・・わかりました」

ちゃんと服を着てくれているルーは自分の身体についてる薬草を使って傷を治している。

ボクは、治癒魔法をかけていく。

「あなたは!」

「こんにちは。ブライトさんだっけ?ボクが治癒魔法かけていくから子供を引き付けておいてくれないかな?」

「セイカ殿!ご助力感謝する」

「ウルフさんも子供たちをお願い」

「分かった」

子供はまだ余っている。

「クー、仕事だぞー。子供が好きそうな本になって読んでくるないか?」

「わかった。私とセイカとの成り立ちとか?」

「そのまま、表すんなら子供に見せちゃいけません!」

「じゃあ、魔族と人族の対立とか?」

「そんな、物騒なことは子供は知らなくていいよ!」

「注文が多いなー。じゃあ、何がいいの?」

「犬のさんぽとかペット目線のほのぼのなやつでいいよ」

適当に言ってみる。

「犬のさんぽね。分かった。子供たちに読み聞かせてあげましょう!」

(あるのかよ!適当に言ったのに・・・どの世界にもあるんだなぁーこういうの)

ペットの偉大さを改めて感じた。

治療にあたっていると男の人に、「こんな可愛い子2人に見てもらって俺は幸せもんだー」って言ってたので、

「お子さんの前でそんなデレデレしない方がいいですよ。子供は親を見て育つって言いますので見られてることを心に置いておいてください。子どもって何でも話したがるから余計にですよ」と一応忠告しておく。

大丈夫見てないからって言う人ほど、見られていたりする。

「心のケガはどうしようもできませんが、ケンカで負った体のケガは直してあげますよ」


どの人も軽いケガだったので、今日で全て終わった。

「お疲れ様ブライト。子供は中々の強敵でしたね」

「お父さん!全部、私に押し付けて何のつもりよ!」

「あなたはこれくらいしないと大きなケガなけれども、村民をケガさせた責任をずっと感じてしまうでしょう?どうです?すっきりしましたか?」

「・・・本音は?」

「うるさい子供のお守りご苦労様です。おかげで、平穏な生活ができましたよ」

「ほらぁ!」

「おっと、口が滑ってしまいました。だから、ご褒美を用意しました。あなたと一緒にこの村を拠点とする、冒険者のセイカさんです」

「どうも、これからよろしくお願いします。ブライトさん」

「よ、よろしくお願いします!」

「早速ですがブライトさん、あなたにお土産があります。この中から好きな服をお選び下さい」

「いいの!?えっこれ、可愛い!」

面白いことにウルフさんがボクに着せようとしていた服をどんどん当てていく、これならボクが着なくても満足しそうだ。

「試しに着てみていい?」

「いいですよ」

「やった」

そう言うと着替え始める。

「ちょっと、ちょっと!ボクもノアさんもいるところで服を脱ぎ始めないでください!ボクとノアさんは外に出て待ってるから、決まったら呼んで!」

「お父さんはまだしもセイカさんも女の子なんだから別に気にしないよ」

「ボクが気にするの!」

「私としては、父として娘の成長を確認したいのですがね」

「いいから、ノアさんも行くの!あなたには少し恥ずかしがってたんだから、空気を読みなさい!」

「うーん、仕方ありませんね・・・」

ボクとノアさんは一時的に建物から出る。

「・・・ところで貴女はどうして1人で行動しているのですか?貴女くらいの年齢は親ありきの生活ではないのですか?」

「うーん、そう言われましても、名前以外思い出せないんですよ。夢で見た自分じゃない誰かの記憶を薄らと覚えているくらいですし、今いる家に気付いたらいたので」

「なるほど・・・寂しいとか怖いとか思わないのですか?」

「その原因となる人の事すら思い出せないので」

前世の記憶は、はっきりと覚えているけど、この世界の記憶はないだけだから面倒くさいことにならないようにそう言うことにしている。

「何なら私の養子になりますか?」

「いや、大丈夫です。記憶が戻ったとき、本当の家族に対してどう接すればいいか分からなくなるので」

「そうですか、残念ですね」

タイミングを見計らったように扉が開く。

「お待たせ。どれもよかったけど、この3着がいい。ウルフさんは、いいよいいよ貰っちゃえ。って言ってたけどいいんですか?」

「どうですか?ノアさん」

「いいですよ、可愛らしい服も着て欲しかったので、万々歳です」

ブライトさんは純粋に喜んでいて、ウルフさんは満足げだった。

「さて、それではお疲れでした。セイカさんの歓迎会をやりたかったですが、今日は個人の家でのお祝いをすると思いますので、お二人ともゆっくり休んでください」

ギルドに戻るとラットリーさんがエプロン姿に着替えていて受付に座っている。

店内の様子はと言うと混雑してあるわけではないけど、昼に比べて活気はある。

「こんばんは、ラットリーさん。人が多いですね」

「あら、こんばんは。この時間だと出稼ぎで遅くなった人や1人暮らしの人が食事をしにくるからね」

「ギルドの受付の後にも違う仕事をしてるんですね」

「ギルドの仕事がほぼありませんからね。こっちの方が稼ぎがあるのは事実ですし、だったら私もお手伝いしないと」

お客さんに呼ばれたラットリーさんはそそくさと仕事に戻ってしまった。

心の中でお疲れ様ですと言いながらボクは部屋にいく。

「あ、そうそう。セイカさんが部屋を使うって聞いていたので部屋は掃除しておきましたよ」

「ありがとうございます」

ギルドの受付なのに、家事スキルが高くてなんかすごく違和感を感じる。

部屋に入ると埃っぽかったのがピカピカになっていて、住み心地の良いひと部屋となっている。

寝る時はラフな格好が好きだから着替えるが、いまだになれない上にクーフェとルーネにじっと見られて余計に恥ずかしかったのはまた別の話。

おはこんばんにちは。作者の清喬です。やっぱり定番の異世界転生生活は見てても書いてても楽しいですね。

僕は、ドンパチやるよりスローライフの方が好きですから戦うシーンは少ないし、すぐに終わると思います。

つい先日、フリーダム親父の方も投稿しましたが、続きはまだ描き始めていません。

相変わらず不定期ですが、楽しんでくれたら幸いです。

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