新しい仲間と同業者との出会い
これは、自分で1から考えたオリジナル小説です。
過度な期待はしないでください。
あと、プロローグは現実世界の話ですが、これは異世界物です。
現実の世界で生きる人たちはファンタジーな世界に憧れる人も多いと思う。少なからずボクはその1人だった。
ボク、セイカはカーテンからのぞく日の光によって目を覚ました。
「ねむ・・・」
いくら転生したとはいえ、眠気は強敵なのだ。
その眠気を追い払うために朝のシャワーを浴びることにしよう。
「・・・ふと思ったけど、着替えなくね?・・・」
身一つで放り出されたボクは着替えや日用品など、何も持っていない。
昨日から思ってたけど何も持ってないのに、家具は立派なのが多い。
こんなに立派なクローゼットなのに何も入ってな・・・入っていた。
女の子らしい服がずらーっと並んでいた。
「ボクのクーデレって青とか藍色とか寒色系のイメージ・・・この見た目はそれをイメージしたのだけど・・・」
クローゼットの中にあるのは、ピンクとか黄色とかのいかにも『女の子』っていう感じの服が並んでいる。
今の服がボクのイメージに1番合っている。
何枚か中性的な服を探し出し、これらを着回すことにしよう。
幸い、魔具製品は転生する前の世界の家具・家電と同じ使い方で自分の魔力を注いで作動させたり、中の魔力を切って停止させる。
感覚的には、手をかざすだけでスイッチのオンオフができるやつだ。
「・・・うん、日本のボクの家より近代的だった。まぁ、日本の近代なんてものはここにはないけど」
脱衣所に入ると、洗濯機のような魔具製品があった。
「これ、絶対過去に日本からの転生人いただろ・・・まんま洗濯機なんだけど、電気じゃなくて魔力で動くけど」
女の子の裸体に見慣れてないボクは自分の裸を見て一瞬ドキッとしてしまうがこれからはこの身体で過ごしていかないと行けないと自分に暗示をかけて心を落ち着かせている。
「シャワーだー!」
ボクがシャワーを浴び始めるとポンッとボクの初の召喚契約者、ブックフェアリーことクーフェが現れた。
「・・・召喚契約者って自分で出入りできる物なの?」
「契約者にも2種類合ってお互い認め合って契約を結んだ者と負けて配下に入る契約者がいるの」
「ふーん」
「お互い認め合った契約者は『対等契約者』。負けて配下に入る契約者は『主従契約者』の二つになる」
「結構、複雑になりそう」
「『対等契約者』はその名の通り『対等』だから契約する前みたいに自由に行動できるから出入りも自由なの。まぁ、さすがにプライバシーは尊重するけど・・・」
「・・・素っ裸でシャワー浴びてる時に出てくるのは立派なプライバシーの侵害では?」
「むー!私だって女の子なんだからシャワー浴びたいの!」
「自律して動けるなら自分でできるんじゃないの?」
「・・・私とあなた、どのくらいの身体の大きさの違いがあると思ってるの?」
薄暗い灰色のモヤがかかりそうな表情をしている。
「あ・・・うん、確かにそうだ。なんかごめん。という、ボクが氷でイタズラした時大変なことになってたけど、水大丈夫なの?」
「あの時は、本状態だったからね。紙は水に弱いでしょ」
「本の性質を完全再現してるなら、もう本状態にならないで心配だから」
「でも、今は大丈夫!柔肌スベスベ状態だからね、ほら!」
クーは、ボクの腕に全身でしがみ付いてきた。
シャワーということで出来るだけ見ないようにしていたけど、視覚は避けても感覚は避けられないものである。
「あの・・・恥ずかしいから離れてもらってもよろしいですか?」
「親睦を深めるには裸の付き合いが1番って人間さんが言ってたけど、違うの?」
少し寂しそうな顔してボクから離れていった。
「うーん、お互いに気にしない人達ならいいと思うけど、ボクがあまりそういうのを慣れてないから・・・」
「分かった・・・」
シャンプーとかボディソープとかなかったからシャワーというか湯浴みを終えて髪と体の水気をとる。
(そうだ、クーの水気を取ってあげよう。必要な物を思い浮かべて魔力を使って無属性魔法を使う)
自分の身体に持ってきたバスタオルを巻いてから手のひらサイズのタオルを出した。
ポポンッと出てきたのは柔らかくて素肌に優しいという決まり文句がついてそうなハンカチが2つだった。
(なんか違うけどこれはこれで気持ちいいから良しとしよう)
「クー、ちょいちょい」
「ん?なに?」
「失礼・・・っ!」
ボクは一瞬で手元のタオルをクーの身体に巻いた。
「ッ!?」
「クー、ここに座って」
一瞬のことで理解が追いつかず言われるがままになってしまったクーを風呂桶の淵に座らせ髪を拭いてあげた。
「ずっと、気になってたけどクーって髪、長くてキレイだよね、乾かすの大変でしょ?」
「う、うん・・・結構大変」
「・・・」
「・・・」
嫌がる素振りを一切見せずに身を委ねてるクー。
「ごめんね・・・クーなりにボクと親睦を深めようとしてくれたんだよね・・・」
「うん」
「でも、ボクはまだ恥ずかしいんだ・・・嫌ってるとか避けてるわけではないよ。むしろ、クーのことは好きだよ。色々教えてくれるし、1人じゃやっぱり寂しかったから」
「・・・うん」
「クーのことを無下に出来ないから、せめて自分ができる範囲で答えてあげないと思った。いきなりのことで驚いたでしょ」
「うん、驚いた。けど、ちゃんと見てくれたんだね。セイカは、召喚士の素質かなり高いよ」
「そう?いくら契約者とはいえ命ある者だし、大切にしないといけないでしょ?」
「・・・あなたの契約者になれて私は幸せなのかもしれないね・・・」
「そんな、大袈裟な・・・」
「他の召喚士に会っていけばその内分かるよ」
どうやら何か触れては行けない事情がありそうだ。
そう感じ取ったボクはクーの頭を優しく拭いてあげる。
「よし!こんな感じかな?そういえば、この世界に髪を解くブラシってあるの?ここには、無いようだけど」
「あるよ、ほら」
クーは、ポンッと自分用のブラシを出した。
「ならよかった。長い髪にはヘアブラシ必須だからどうしようかと思った」
「セイカはいいの?短くてもヘアブラシはやったほういいよ」
「無いものはどうしようも無いし、今回は手ぐしでやるよ」
「手ぐしって何?」
「あ〜・・・手を空気を軽く握るような形にして、それで櫛のようにして髪を解くやり方って言えばいいのかな?こんな風に」
「・・・それって意味あるの?」
「まぁ・・・やらないよりはいいって感じかな?・・・じゃあ、ボクは着替えるからクーも着替えてね。さすがに、そのブラシで解いてあげるのは難しいからね」
「分かってるよ。私の力とセイカの力は種族で違いすぎるからね」
ボク達は、それぞれで着替えをした。
着替えを終え、ボクはこの家の問題点を発見してしまった。
「・・・この家には食料が足りない!サバイバルゲームだって拠点があるにしても食料が無ければ生きていけないんだからね!」
誰に向ける言葉でもないけど、そんなセリフが出てしまった。
「ん?何?〜」
まだお風呂場にいるであろう、クーが聞き返してくる。
「いやね・・・食料どうしようかな?って」
「あー・・・確かに何とかしないとこんな立派な家を残して餓死とか笑い者になるよね」
「ちょっと待っててね。今からそっち行く」とクーが言う、何かいい案があるのだろうか?
着替えを終えてこっちへ戻ってきたクーに聞いてみるとクーは待ってましたと言わんばかりに話し始める。
「ここは、この大草原の端っこに位置するから・・・」
クーはどこからともなく出した地図を指差しながら家の場所や周辺を見せてくれた。
「少し歩けば、こっちの方に森があるでしょ。ここで、魔物を狩って肉や素材を手に入れるのもいいし、この森は比較的安全だから果物や木の実、キノコや野草の採取をするのもいいよ」
「えー、町とか村とかで調達するんじゃダメなの?」
「・・・あのねセイカ、あなたお金持ってるの?ただで、物が貰えるなんて甘く考えないでね」
「・・・ごもっともです・・・」
「はぁ・・・だから最初は森で食料調達しながら素材集めをするのがいいの。比較的に何でも買い取ってくれるからね」
「というか、魔物とか悪魔族と共存してるんじゃないの?それなのに、狩って大丈夫なの?」
「あー・・・この世界の『魔物』っていうのは『悪いものと魔力が合わさって生まれた者』だからそれらはむしろ狩るべきものだよ」
「いくら平和になっても戦いは続くんだね・・・」
「多種族で共存してるんだから争い事は仕方がないよ。そんな事よりあなたって本当に何も知らないんだね。それなのに魔具製品の使い方は完璧って不思議な人・・・」
「箱入り娘なもので」
「触れてはいけない感じ?」
「出来れば深掘りはしないでほしい」
「・・・さてと、話の続きだけど、少し遠いけど村というよりかは集落ではあるけど、人が住んでいるところがあるの。色々と豊富ではある集落だから何かを買うのであれば、ここでもいいかな?」
「他にも町や村はあるの?」
「あるよ。なんなら城や王国だってあるよ。ただ、遠いから移動手段が必要かな?」
「大きい都市っていうの?そう言うとこにも行ってみたいな」
「そのためにはまずお金を貯めないと何にも出来ないよ」
「お金はどこにでも必要なんだね・・・」
「そりゃーね。何事にもまずはお金だからね」
「世知辛い世の中にゃ・・・」
「そろそろ、お家出る?私が説明したいことはしたし、なるべくお腹が減ってない時に行った方がいいと思うけど?」
「そうだね。そろそろ出ようか」
ボクは、なぜか自分のベットの横になって置いてあった、使い古されたカバンを取ってきて家を出る。
「あっ、セイカちょっと待って」
「ん?何?」
「家が不用心すぎるから日常魔法を教えてあげる」
「まぁ確かに何もないけど入られるのは嫌だよね」
「とは言っても1つだけだけど」
「家に入れないようにする魔法かな?」
「ん?違う違う家の鍵は他の魔具製品と同じで扉の横のスイッチで出来るよ」
言われた通りに扉の横を見ると他の魔具製品と同じようなものがあった。
「それに自分の魔力を注げばかけれるよ」
ボクが魔力を注ぐと、
『この扉には魔力登録がさらていません。この魔力を登録しますか?』
モニターっぽい所にその案内が流れ、『はい』か『いいえ』の選択肢が表示される。
『こちらの魔力が登録されてました。なお、他の魔力では反応致しませんのでご了承ください』
『次に、緊急時の設定をお願いします』
と流れ選択肢が3つ表示される。
『自分の魔力のみに開く』と『自分と認められた魔力のみに開く』と『緊急時であれば魔力に関係なく開く』の選択肢が表れる。
ボクは、『緊急時であれば魔力に関係なく開く』を選択する。
『設定が完了しました。なお、この条件が適用されるのは敵意や悪意のない魔力に限りますのでご安心ください。』
ボクは鍵の設定を終え、クーの近くに戻る。
「家の鍵はオーケー。日常魔法っていうのは何?」
「無属性魔法の『リターン』。思い描いた建物や場所に転移できる魔法だけど、視界が歪むから目を閉じての使用をおすすめするよ」
「おおー、それはまた便利な魔法だこと」
「だから、家の入口は覚えておいてね。1番は、その建物の目印になるのがあればいいのだけれど・・・」
「目印になるもの?」
「例えば、表札とか町の名前の看板とか・・・めちゃくちゃデカい門とか。その場所を特定できるような何かがあれば分かりやすいのだけど」
「ボクの家の周りは何もないから思い描くしかないってことか・・・」
「そういうこと。今は、家の目の前だから使っても意味ないから使い方は帰る時に教えるね」
「分かった」
ボクは、家の入口付近を覚え、クーの案内により近くの森へ向かったら。
「とうちゃ〜く♪」
クーのハイテンションな声により、森に到着した。
「思ったより近かったね」
「そもそも、セイカの家から見えてたよ」
「うん、それも踏まえて近かったねって」
体感距離、5分未満くらいだった。
中を覗くと森とは思えないくらい明るく、木製の武器を携えた小集団やカゴを片手に黙々と草を取ってる人や子供連れでカゴを持ってる人もいる。
「結構、人多いね。ここって言っちゃ悪いけど、辺境の森だよね?人の住んでる所からじゃ少し遠くないか?」
「初めてきた時は大変だろうけど、『リターン』を使えばいつでも来れるから遠い森でも人はいるよ」
「うわー・・・人を運ぶ仕事の人食べていけるのか?」
「ここみたいにかなり安全な所は『リターン』で来れるけど、中には安全だけど『リターン』が使えない場所とか建物とか規制はあるから結構、馬車引きさんとか荷台運びさんは忙しいよ」
「あ、やっぱりそういう場所もあるんだね」
「ここも日が差す場所はいいけど、奥に進めば魔物もいたりするよ」
「え?村人さんとか大丈夫なの?」
「前も言ったけど、自分の身を守る程度の魔法は成長過程で学んでいくから、力の弱い魔物から逃げることは簡単だよ」
どうやらこの世界の住人達は日本より強いらしい。
まぁ、魔法が使える時点でこっちの世界の方が1人1人の戦闘力は高いはずだけど。
「さーて、セイカ。あなた探知は使えたわよね。必ず生物には魔力があってそれぞれに形があるの。探知を使えば、シルエットが浮かび上がってくるから草とかきのことか果物とか集めてみて」
(魔力の形を感じ取るように?こうかな?)
すると森全体の情景が浮かび上がり、まるで絵の枠取りをしているかのように見えた。
「・・・やっぱり、ここら辺はもう取られてるね」
「やっぱりかー・・・少し奥に進んでみる?」
「そうするかー」
ボク達は明るい森の奥に取り残されている物を採集しながら進む。
「ここは、人が少ないけど村人も子供もちょくちょくいるね」
「ここも安全ではあるけど、安全思考の村人は用心のために入口付近で終わる人が多いし、ここ以外にも森はあるからね」
「よし、探知を使ってみよう」
さっきほど採取されてはいないけど、やけに草だけが回収されている。
「草以外は結構あるね?この草って需要あるの?」
「薬草だからね。葉っぱを擦り潰して患部に塗れば治るし、液体に溶かして摂取すれば疲労回復するし結構需要あるよ」
「じゃあ、キノコは?」
「食べられるキノコは回収されてて他は毒キノコだけど、売るんだったら回収するといいよ。じゃあ、私は高い所にある木の実や果物を取ってくるよ」
「お願いするよ」
ボク達は引き続き採取を開始していると、ボクは人の大きさより小さいけど、他の草より大きい葉っぱの固まりを見つけた。
「これも売れるのかな?回収しとこ」
ぷちっと草を取ると
「・・・っ!」
(ん?何か聞こえたような気がするけど気のせい?)
「・・・った!」
(何だろう?)
「痛いってば!」
パチンと草のつるのようなものはたかれた。
「痛っ!何今の!」
声のした方を見上げると目の前には大事な部分を葉っぱで隠しているだけで、ほぼ裸の緑色の女の子がいた。
「はっ!ご、ごめんなさい・・・つい、はたいちゃって」
(これは、いわゆる定番のアルラウネでは?)
「・・・あのぉ、もしもし?」
「あっ、ごめん!気づかず葉っぱ、むしり取っちゃって」
「えっ?いえいえ、こちらこそいきなりはたいちゃってごめんなさい」
お互いにぺこぺこしていると慌てた感じでクーがきた。
「ちょっと!大丈夫?すごい音したけど!?」
「あっ、クー。心配かけてごめんね。アルラウネさんの葉っぱを間違ってむしり取っちゃって、それで防衛本能ではたかれただけだから」
「ごめんなさい、ごめんなさい・・・」
「セイカが悪いのになんであなたが謝るの?」
「えっと・・・」
「まぁまぁ、ボクはそこまで痛くなかったから大丈夫」
「それなら、よかったけど・・・」
「ごめんなさい・・・」
「っていうか、なんでアルラウネがこんなところにいるの?普通はもっと奥まった森にいるんじゃないの?私と同じで攻撃手段があまり無いから身を守る為に」
「う〜ん・・・何ででしょうね。目が覚めたらここにいたからよく分からない・・・」
「それにあなたこんな暗い所にいたら、植物のあなたは成育不良起こすし・・・下手すれば死ぬよ」
「とは言われても、どうしようもないです・・・」
「あなたは今まで、死に待つという選択肢しかありませんでしたが、ボクが来たことにより、1つ選択肢が増えました」
「いきなりどうしたのよ」
「いやあねー、ボク達がここで出会ったのは何かの縁なんじゃないかなと思って。せっかく巡り会えたのにこのまま死じゃうのもあれだなーと思ってね」
「それは最悪の結末だし、現にここまで生きてるんだけど・・・」
「孤独というのはとても怖いことだよ、ましてや、こんな森の中で・・・」
「もう、焦ったいなー!つまり、セイカはどうしたいの!」
「ボクと対等契約者になって下さい!」
「だってよ・・・最後に選ぶのはアルラウネ、あなただよ」
「な、なんか愛の告白されたみたいで恥ずかしいです・・・」
「・・・た、たしかに改めて思い返してみると告白みたいに聞こえなくもない・・・いやでも、もし対等契約者になったら一緒に住むことになるから一生を添い遂げるとしては合ってるのか?」
「・・・こ、孤独に生きるよりはあなたとなら楽しく過ごせそうな気がする・・・」
「楽しく過ごせる!私が保証するっ!」
「じゃ、じゃあよろしくお願いします・・・」
「『契約魔法陣生成』確か、肌と肌が触れてればいいんだよね。よし、手を繋ごう」
ボクはアルラウネと対等契約者となった。
「名前どうしようか?」
「自分で決めなさい。あなた、主人でしょ!」
「クーの命名力を知りたかったけど、残念。名前はルーネでボクはルーって呼ぶことにするよ」
「相変わらず、分かりやすい名前」
テイマーギフトにより、探知が魔力探知になり、新しく魔力解析を手に入れた。
「ねえ、クー。またなんかもらったよ。なにこれ?」
「魔力探知は簡単にいうと探知の上位互換だね。魔力を感じ取れるだけでなく、相手の魔力状況をみることができる。魔力解析・・・って特殊なものを手に入れたね・・・触れた相手の魔力を解析して、弱点や魔力に接触した1番近くの魔力干渉を見ることが出来る」
「口で言われても分からないなー・・・」
「使ってみた方が分かりやすいかも」
「試してみてみるかー、『魔力探知』。・・・ほほう、なんか探知の範囲が広がった気がする。あと、なんか色がついた?」
「『青く』なっているのが『味方』で『赤く』なっているのが『敵もしくは敵意・悪意のある魔力』。『緑』は『中立』、『黄色』は『中立者の警戒』。『点滅』は『命の灯火』、『点滅速度』によって『死ぬ危険性』を表している」
「ほうほう」
「『魔力解析』は、『干渉された部分と干渉した魔力が光る』と『解析された魔力を自分で自由に使える』っていうどう使えばいいか分からない効果もある」
「そう言うのって、何かしら良いところを見つけて説明するんじゃないの?・・・ちなみにこの白い糸みたいなやつは?」
「・・・セイカが実用方法を見つけたらその方法で説明してあげるよ。『白い糸』は、『召喚士と契約者の繋がり』ってと覚えておけばいいよ」
「何その丸投げ・・・誰も気にならなかったの?」
「特殊なものって言ったでしょ?ただでさえ使い道分からないのに持ってる人もほとんどいないから魔法研究者にとっては稀少な研究対象よ。使い道を見つけるか封印するかはあなた次第よ」
「あっそうだ!ルー。ボクがむしり取った周りとか怪我してない?直してあげないと」
「・・・えっ?いや、大丈夫です。植物の再生能力は高くてすぐに回復するし、自分でも治そうすれば治せるから・・・」
「確かに魔力状況は正常だった、良かった」
「・・・し、心配してくれてありがとうございます。ですから、あの・・・ずーと見られるのは恥ずかしいです・・・」
ボクは、ルーの魔力状況を見るために、魔力探知を使ったが1つ気になることを見つけてしまった。
「・・・ねぇ、クー。点滅しているのは命に危険が迫ってる時って言ったよね」
「うん、そういったね」
「ルーの魔力状況見るために使ったら、この森のすぐ入り口の所に点滅してる魔力がある。しかも、結構な速度」
「えっ?それは、マズイ状況だよ。急いで向かおう」
急いで森の入口付近に戻るとさっきまでの喧騒が嘘のように周りは静まりかえっていた。
そこにあるのは、急いで逃げたのか何個もの投げ出された村人のものと思われる持ち物と血を流しながらぐったりとしている獣がいた。
「ねぇ!大丈夫!?一体何があったの!」
ボクは、混乱しているのか傷だらけの体を揺すってしまった。
(まだ身体は暖かいけど、徐々に体温が下がってきている!このままでは死んでしまう!)
「待ってて今助けてあげる・・・」
「ちょっと!正体が分からないのに何してるの!」
「・・・大丈夫。赤い魔力ではない・・・それに、こいつは僕たち同じ『契約者』だ」
魔力の端から白い糸が出ており、その糸はボク達がいた所と異なる方向の森に向かっている。つまり・・・
「この奥にこいつの主人がいる・・・」
「待って?それなら何で助けに来ないの?召喚士の精神よ中に契約者が入れる空間というか住居地があって」
ボクは、傷を癒やしながら心の中で、何それ?聞いてないぞ?と思いながら耳を傾け、回復魔法をかけている。
「その空間に戻れば傷も癒えるのに」
「向こうがそれどころじゃないんだと思います!セイカさん、その糸の先は見えますか?」
「見てみる」
そこには、黄色い魔力が2つと赤い魔力が複数体、明らかにやばい状況だ。
「・・・いくら弱くても多勢に無勢。向こうは、大勢の敵に囲まれてる状況。時間の問題かな。そして、この子に傷を負わせたのも敵の中にいる」
傷を負ったウルフさんの弱々しい声がボクに届く。
「通りすがりの人よ・・・迷惑をかけて・・・申し訳ない。迷惑ついでに・・・頼まれてくれないだろうか?」
「なんでもいいなさい」
「私の主人と・・・小さき者を・・・助けてくれ」
「大丈夫。言われなくても助けてあげるよ。だから、ゆっくり休んでなさい」
「感謝する」
ボクはウルフさんの傷を癒やし、継続回復魔法をかけてあげた。
「急いで行かないと間に合わなくなる。いくよ!」
「ちょっと!ウルフはいいの?そのままで」
「傷も癒やしたし、継続回復もかけた。周りの敵は向こうの2人に集中してるからこっちは安全だよ」
ボクは白い糸の先に急いで向かった。
セイカが走り出した。
「ちょ、ちょっと待って!ウルフの契約者の二の舞になるって!」
私は、戦う術も知らないセイカを止めようとしたがそのまま行ってしまった。
ルーネも無言でセイカを追っていく。
「あぁもう、せっかちなんだから!2人とも!」
「ふっ・・・何も知らない者を・・・何も疑わずに助けるとは・・・不思議なやつだな・・・」
「ねえ?本当に大丈夫?」
「私は大丈夫だ。・・・彼女の回復魔法のおかげで・・・命の危機は・・・免れたし・・・おせっかいなことに・・・継続回復魔法も・・・かけてくれたからな」
「セイカらしいけどね」
「お主らも・・・いい主を見つけたな・・・」
「召喚士みんながそうであるといいのにね」
「わが主とお主らは気が合いそうだ・・・さて・・・足を止めてしまったな・・・私は大丈夫だから・・・自分の主の元へ急げ」
「動けるのならどっかに隠れておいて。あなた、ウルフじゃなくてウェアウルフでしょ。世界は物騒なんだから」
「違いないな・・・こんな弱った体じゃ・・・対抗できないからな」
私は、セイカの元へ急ぐ。
「ルー!あの時みたいに葉っぱで身を守るのは自分以外にもできるの?」
「う、うん。できるよ」
「じゃあ、あの2人を守って!必要ならボクの薬草、使っていいから!まず、あの2人を安全な所に移動させて!」
「セイカさんはどうするの?」
「ボクは大丈夫!何とかなる!」
現場に着くとウルフさんの白い糸と繋がってる子と小さい子供がいた。
召喚士の女の子は足に怪我をしながらも小さい子供の前から動こうとしない。
(集団で襲う・・・足を狙う・・・この魔物達、頭が良くないか?)
「大丈夫!?ルー!2人を守って!」
「はい!」
「もう大丈夫だよ。怪我している所を見せて、治すから」
「あなた達は一体・・・」
「ただの通りすがりの召喚士と契約者だよ」
「ありがとうございます」
「君は大丈夫?」
「だいじょーぶ」
「よかった」
「・・・ねぇ、おいぬさんはどうしたの?・・・」
「・・・おいぬさんは・・・」
「あ・・・安心して。セイカさんが助けてくれたけど、疲れて眠ってます・・・。・・・これで大丈夫だよ。あなた達は、安全なところに移動してください」
「わ、私だってまだ戦えます!」
「どうやって戦うんですか?あなたは、見た感じ契約者は1体・・・その一体も疲れて動けない状態なんですよ」
「こんな弱い魔物なんて私の魔法で・・・っ!」
「確かに、今あなたが1人で動けるんなら戦えるかもですね。でも、今あなたはか弱い子供を守ってるんですよ。その子を庇いながらこの多数の魔物と戦うんですか?」
「それは、そうですが・・・」
「あなたは冒険者でしょ、弱き者を助けるのが仕事じゃないの?冒険者って、それが義務じゃないの?」
「確かにそれは義務です。でも、あなた達だって・・・」
「ああもう!いい加減にして下さい!単刀直入言います!セイカさんがあなた達を心配してて思うように動けないんです!私の『リーフガード』だってそんな強固なものじゃないから、あなた達が安全な所にいれば私もセイカさんも一安心何です!分かってくれましたか?」
「あっ、はい・・・分かりました」
今まで、温厚だったルーが口調と共に大きな声を出したことに気圧され、2人は驚き、言う通りにした。
(よくやった、ルー!その2人を早く安全な場所に!)
ボクもルーの口調と大きな声に驚いていたが、違うルーを見れて嬉しかった。
(でもね・・・ルー、ボクが心配してるのは2人じゃなくて、よく考えてみたら、ボク、戦う術を知らないという事なんだよね。ボクが子供を安全な所に行かせた方が良かったかもしれない・・・)
2人が『リターン』で、移動したのを目の端で捉えながら、ボクは魔物たちと対峙する。
(どうしよ、これ?アノツ2人は無事だし、逃げるのもありか・・・?いや、今は大丈夫だけど、近い未来、もっと大きな被害が出てしまう可能性がある。だから、今のうちに処理しておきたい)
ついに、様子見を終えたのか臨戦態勢に魔物たちが入った。そして、ボクの方に飛び掛かって・・・・こなかった。
「だから、言ったでしょ!少し待ってって!あなた、意味もなく命を枯らすつもりなの!」
「・・・それで、クーよ。どうすればいい?」
「知らないわよ!一回、敵の攻撃受けてみたら?そしたら目が覚めるかもよ?」
「・・・い、痛いのはやなので、対処法を教えて下さい・・・」
「はぁ・・・今は、魔物達は私の麻痺で動けなくなってるけど、それも時間の問題だからすぐにできる方法を教えてあげる」
「お願いします・・・」
「セイカはまだ、碌に魔法が使えないけど、あなたの魔力コントロールはとてもいいからそれを生かせるものを教えてあげる」
「うん」
「自分の魔力を自分の思うような形にして武器を生成して戦うそんな無属性の魔法があるの。やり方は、本で教えた通りにやればいいのだけれど複雑な魔力形成だから、使える人はあまりいないの」
「分かった」
(この状況で、重要なのは相手のスピードに対応できて、一撃で倒せて、連射できるもの・・・あ、これだ!リアルじゃ使えないけど、自由なファンタジー世界なら使ってもいいよね!)
「早くしないと麻痺が解けちゃう!」
「わかってるって!」
「・・・セイカ、くるよ!」
「了解!」
ボクは、何となく浮かんだ言葉を並べてみる。
『魔力武器、形成・・・魔力双銃。魔力弾、形成。装填完了。これより戦闘を開始します』
「・・・何それ、ものすごく痛いんだけど・・・」
「う、うるさい!魔法使う時だって、呪文唱えるでしょ!それと同じことだよ!」
「確かに、呪文は唱えた方がより明確に魔力が形作れるけど、なんかそのセリフは痛いって思った」
思った通り敵が次々と襲ってきたけど、難なく対処できた。
魔物たちの群れによって素材と食料は潤った。
「それは何?トリガーがあるしボウガン?あまり見ない形の武ボウガンだね?」
この世界にはどうやら銃は存在しないらしい。
まぁ、魔力が存在するなら当たり前か。
「ボウガンを思い浮かべてたけど、この状況に対応できるような性能を考えたらこうなった」
「そういう、あまり見ない物は研究者たちは大好きだから表に出さない方がいいよ。剣とか弓とか杖とかならあるから目立ちたくないならよくありそうな武器を作ることね」
「深掘りはしないんだね」
「セイカがイレギュラーなのはいつものことだし、聞いたところで答えてくれないでしょ」
「よくお分かりですね」
「それより、早く帰りましょう。ウルフのことも心配だし、少し暗くなってきたから」
「一旦、戻ってウルフさんの様子を見に行こうか」
戻るとウルフさんはそこにいなかった。
「あぁ、ウルフはあそこの木陰で寝てるよ」
「傷も治ってる。魔力状況も・・・うん、安定してるね。でも、ここに放置して帰るわけにも行かないし、一応連れて行くか」
「そうだね。『リターン』は自分と触れてる者に適応されるから、しっかり掴んでおいてね。ああでも、今回の場合は家の中にリターンした方がいいから、自分の寝室を思い浮かべてね」
「確かに。ウルフさん大きいもんね。普通に人1人乗せれるくらいだし」
「そりゃそうよ、何なら移動手段として契約する人だっているんだから。セイカもウルフというか移動手段と戦闘が出来る者と契約した方がいいよ」
「そういうのってどう巡り会うの?」
「ルーネみたいにはぐれた者を拾うのもいいし、ケガをした者を救って契約するのもいいんじゃないかな?セイカの場合は」
「なるほど。とりあえず疲れたし、帰ろう。『リターン』」
その瞬間、視界が歪みぼやけたと思ったら家の中にいた。
「うえっ・・・気持ち悪い・・・これが酔うってこと?」
「セイカ、目を開いてたのね・・・私はどうしても慣れないから目を閉じてたよ」
ルーネは、戦闘の邪魔になると言って2人を安全な所にやったらすぐにボクの中に戻ったが、何となくだがルーも苦手そうな気がする。
「今日は色々あって疲れたよ・・・」
「初めての戦闘、初めての経験、初めての戦闘魔法の行使・・・これだけ1日で経験すれば疲れるよね」
「うん、でもさ。この子どうしようか?地面に寝かせるわけにも行かないし・・・仕方ないボクが床で寝るか」
「何で?別に一緒に寝ればいいじゃん。相手は動物なんだし、遠慮する必要ないんじゃない?」
「だって、この子は別の召喚士の契約者だよ。なんか、申し訳ない気がする・・・」
「契約者が主人以外の人と行動するっていうこともあるから遠慮するのは失礼だと思う」
「そんなものなのか?」
「それにウルフは動物よ、もふもふの毛皮よ。私とかルーネは人間に近い感覚だからもふもふの毛皮は気持ち良くて、癒されるのよ」
「もふもふ・・・」
ボクは、猫のサラサラな手触りも良いけど、犬のもふもふの手触りの方が好きだ。
「た、確かにそうだね。ボクは命の恩人だ。・・・少しくらいならいいよね・・・」
「命の恩人だし、きっと許してくれるって」
ボクは、懐かしいもふもふ感を味わっていたら、その気持ちよさでそのまま寝てしまった。
おはこんばんにちは。どうも、清喬(旧セユ)です。
少し前に、フリーダム親父の方を投稿しましたが、そろそろこっちの方も更新しないといけないと思ったので、今回はこっちの方を更新します。
ストーリーとしては何番煎じだよ!って言う感じが出てますが、これが好きな展開だから仕方ないです。
今回は、少し長めになってしまいましたが見てくれるとありがたいです。
不定期ですが随時、更新して行きます。
それでは、また次回会いましょう。