新しいクラス。
葵は体育の着替え中、葉月が首から何か外しているのを見た。
2年生に進級して、阿佐美とはクラスが離れたけれど、葉月とは再び同じクラスになった。
この高校では、2年生からは成績でクラスが別れる。とは言っても、10クラス中8クラスは普通に割り振られ、2クラスのみ成績上位者が集められる程度だが。
葵と葉月は、所謂特進クラスに入れられたわけだ。
葉月のその行動を見ていたのは、葵だけではなかったようだ。
体育中、同じクラスの女子から頻繁に質問されている。
「鵜飼さん、あのネックレス、どうしたの?」
「彼氏から貰ったの?」
「まじ?付き合ってどのくらい?」
「え…えっと…。」
後退る葉月を追い詰めるように、「ねぇねぇ。」と好奇心旺盛に聞いている。
「葉月ちゃん、試合の準備、ちょっと手伝って?」
今日の体育はバスケットボール。
授業の最後に簡単なゲームをするため、先生に準備を頼まれた葵が、体育倉庫を指差して言う。
普通は体育委員がするのだが、バスケが苦手な人たちにつきっきりなため、葵に声がかかった。
葉月は明らかにホッとした顔で、「うん。」と言ってこちらに走ってくる。
取り囲んでいた子たちは、「ちょっと…」と引き留めようとしたが、葵と目が合うとパッと目を逸らして、「れ、練習しよっか!」と言って走って行ってしまった。
「やばー。」
「やっぱ迫力あるわ。」
「だねー。」
そんな声を後ろに聞きながら、葵と葉月は体育倉庫に入って行った。
「あ、葵ちゃん。ごめんね?」
何も言わずにガサゴソと必要な物を探す葵に、葉月が話し掛けた。
その言葉に、葵は動きを止める。
そして、「はあ。」とタメ息を吐いて葉月の方を向くと、
「葉月ちゃんが謝ること無いよ。
ただ、話題を変えようと思って…その…あの子たちにも手伝ってもらおうと…思ったんだけど…。」
と眉を下げて言った。
「怖がらせちゃったみたい。
…1年のクラスとは…違うもんね。」