相手が、誰であろうと…。
陸が自分の部署の方に歩いていると、自販機の前で話す数人の男性社員が目に入った。
「今年の新入社員、どうよ?」
まあ、ありがちな話題だ。
陸は気にせず通り過ぎようとした。
「河上 実香、でしょ。」
陸はピクッと眉を上げる。
「だな。」
「俺もそう思う。」
これは…あっちの方のありがちな話だな…。
実香は優秀だ。
それは、大学時代に一緒に実験をしていた陸は知っている。
たが、実香と他部署の男性社員から名前が出るということは…。
実香は目もパッチリ2重で可愛く、大学でも男性に大人気だった。
そしてなにより顔だけでなく…
「顔も可愛いし…それに…」
陸はその次に出る言葉を聞かないよう、更に早足になって彼らから離れる。
幸い、もう会話は聞こえない。
彼らが言うことなど分かっている。
大学の時も何度も聞いた。
いや、今はその頃以上に…。
そう。実香は可愛いだけでなく…胸が大きい。そしてクビレも有り、その下にはプリッとしたお尻…ナイスバディなのだ。
しかもなんだか色気も増したような…。
変な奴に近付かれないかなぁ…。
彼氏は…出来たんだろうか…。
陸は少し立ち止まり、廊下の窓から空を見る。
どうか彼女に、良い人がいますように…。
どうか彼女が、私のことを、もう、想っていませんように…。
陸は右耳を掴む。
私は…誰からの想いにも…答えられないのだから…。
陸は心の中でタメ息を吐きながら、MR部の扉を開ける。
そう…相手が、誰であろうと。