表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/217

河上 実香

「お疲れ様、陸ちゃん。」


月曜日のお昼。

瞳に声をかけられ、陸はいつも通りに、「おつかれ。」と言いながら席に座る。


ただ1点、昨年度と違うのは…


「お疲れ様です!先輩!!」


元気良く挨拶してくる人物が、陸の隣の席にいることだった。


彼女の名前は、河上(かわかみ) 実香(みか)

陸のS大時代の後輩だ。


『私も徳川製薬に入ってみせます!』


約1年前、私にそう言った彼女は、見事に有言実行したわけだ。


陸は少し昔のことを思い出しながら、「うん。お疲れ様。」と微笑んでお弁当を広げはじめる。


『私!諦めませんから!!』


陸は卵焼きを食べる。


うん…今日も少し甘くて美味しい。


『だから覚悟しててくださいね!』


陸はウインナーを食べる。


あ…私の好きなメーカーのやつだ。


今日も、昨日葵が作ってくれていた物をレンチンして詰めたお弁当だ。


「…んぱい!先輩!」


あの時の彼女の、無理に作った笑顔を思い出し、陸は目を細めた。


「陸ちゃん?」


瞳の声にハッとした陸は、「ん?」と瞳を見る。

瞳は眉を下げて、「私じゃなくて…」と視線を陸の隣に移す。


陸が隣を向くと、実香が、「私が呼んだんですけど。」と頬を膨らませた。


陸は、「ごめんごめん。」と言いながらも、少し眉を寄せた。


「と言うか、先輩って呼ぶの、もうやめな?

河上さんは私と部署も違うしさ。みんな苗字で呼んでるでしょ?」


実香はニッコリして聞いた。


「名前で呼んで良いで…」


「ダメ。」


食い気味に断られた実香は、ムッとして、「越智さんは呼んでるじゃないですか。」と言った。


陸が、「越智さんにもやめなって言ってる。」と言うと、瞳は、「あははは…。」と苦笑いした。


実香はそんな2人を見て、1度タメ息を吐いたが、気を取り直して言った。


「じゃなくて試験ですよ、先輩。

今年なんですよね?」


ああ…河上さんは知ってたな。

午前は大学で勉強、午後は仕事、2年間で資格を取ること。

その話があった時、まるで自分のことのように、目に涙を溜めて教授に抗議してくれたっけ。


陸はふっと笑って答える。


「うん。12月のはじめに試験があって、今年中に結果が出るはずだよ。」


そこまで言って腕時計を見た陸は、「ごめん、午後1に会議があるから、もう行くね。」と言ってお弁当を片付け、早足に歩いて行った。


その後ろ姿を見ながら実香が呟く。


「なんか先輩…雰囲気変わった?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ